2016年
11月号
まん中の一回り大きいのが女王蜂。ミツバチはファミリー全体がひとつの生命体といえる

連載 ミツバチの話 ④

カテゴリ:, 医療関係

採蜜について

藤井内科クリニック 藤井 芳夫

 ハチミツは入居者さんの朝食やおやつに利用しているのだが、人生の終わりに近づいて食事を受け付けなくなってもハチミツ水やハチミツジェリーは飲んでくれることが多い。養蜂を始めたのは2010年のことである。当時はミツバチの巣箱は2つであったが、職員、俵養蜂場の春井さんのサポートを受け、今年も養蜂を続けている。現在の巣箱は8つで、年間の収穫量は5月から7月までの3か月で150㎏前後。それ以外の月はミツバチの食料である。今年は蜂も元気で良く働き、養蜂を始めて6年になるが初めて4月に収穫することができ、桜の香り漂うハチミツをゲットした。今年は豊作で300㎏も採れ、販売するほどの収穫があった。今まで採蜜採蜜と簡単に書いてきたが採蜜とはどのようにするのか紹介したい。

 まず、ミツバチの巣箱を開ける前に、前述したように燻煙器で入り口にたっぷりと煙をかける。それからおもむろに巣箱の蓋を開け、そこにもたっぷりと煙をかける。ミツバチが大人しくなったところで写真のように、巣板を持ち上げて女王蜂がいないか確かめてからミツバチをさっと振り落とし、まだしがみ付いているハチも刷毛で払い落とし、巣板を遠心器まで持って行く。しつこく付いてくるハチもいるが、巣箱から10mも離れると諦めてくれる。一部の蜂は怒って攻撃して来るが、その時はそれこそ煙に巻くのである。自分たちがせっかく集めた蜜をミスミス取られてしまうのであるから蜂さんも未練たっぷりである。
 遠心器まで運んだ蜜がたっぷりの巣板は蜜蓋が付いている。その蜜蓋を包丁で薄く切り取り、遠心器に装着すれば後はハンドルを廻すだけである。写真のように蜜を収穫するのである。その蜜蓋をちょいと口に入れるとそれは甘い新鮮なハチミツと香りを味わうことができる。蜜を搾り取った巣板はまた巣箱に戻し、蜜のたっぷり付いた蜜蓋は巣箱の前に置いてやると、残った蜜はミツバチが回収することになる。かわいそうにミツバチはまたいちからハチミツを集めなければならない。

 ハチミツの収穫は、蜂が元気であることが前提であるので、採れる蜜は全て取り上げる。ハチミツの味は収穫した時期によって異なる。収穫した日から次の収穫の日の間に咲いた花の蜜になる。その間に咲いた色々な花の蜜の混合で、百花蜜と称す。よくアカシアの蜜とかミカンの蜜とか売っているが、それは例えばアカシアの花が沢山咲いている所にミツバチの巣箱を持って行って、その蜜をゲットするのである。プロの養蜂家は花を追って日本列島を南から北へ巣箱を持って移動するのだが、当方はそんなことは出来ないので、同じ場所に巣箱を設置し百花蜜となる。

 さて蜜を取り上げられた蜂は、また一生懸命働いて蜜を集める。蜜がいっぱいの場合人間も同じだが蜂も働かなくなる。そして前回紹介した巣分かれに勢力を注ぐことになり、次の女王を育て世代交代を図る。古い女王蜂は70%位の働き蜂を連れて巣分かれし、どこかへ行ってしまう。そうなると蜜をあてにしている人間様にとっては大損害。そこで定期的に巣を点検し、健康管理はもちろんのこと王台を見つけたら取り除く。逆に王台を温存して女王蜂の世代交代を図る事もある。「人間は悪い奴や」と思われるかも知れないが、その通りでミツバチも家畜にて人間のコントロール下にあり仕方ない。
 自然界においても王台はいくつも作られるが、最初に生まれた女王蜂がまだ生まれていないさなぎの女王蜂候補を次々排除し、自分が新しい女王として君臨するのである。しかし女王と言えども、その一群(ファミリー)にとっては卵を生産する役割を持った一機関であって、ファミリー全体がひとつの生命体と言える。私たちはその大切なハチミツをいただいて、入居者さんに味わっていただいている。

 ところで、ハチミツは花の蜜そのものではない。ミツバチが集めた蜜は花蜜といって砂糖水とあまり変わらずショ糖である。ミツバチが集めた花蜜を六角形の巣に蓄えていくが、その時ミツバチが出す酵素により、花蜜がブドウ糖と果糖に分解される。そして、翅で扇いで蜜を濃縮するのである。また、巣の中の温度は常に36℃に保たれており、蜜はさらに濃縮され、糖分が約80%になって初めてハチミツになる。糖分80%では、たいていの細菌は生存できないのでハチミツは腐らない。昔から薬としても使われてきた所以である。
 子供の頃、口内炎が出来たときなど親から口にハチミツを塗られたことが思い出される。また、プロポリスというサプリメントの名をよく耳にするが、これは従来蜂ヤニと呼ばれていたもので、ミツバチが植物から集めてきた樹脂を唾液と混ぜて巣の隙間を埋めたりする接着剤のようなものだ。養蜂作業では巣板を取り出すとき蜂ヤニ(プロポリス)がこびりついて作業がしにくく厄介なものだ。しかし、ただの接着剤ではない。前述したように、巣の中の温度は36℃であるが、この温度で細菌やカビが生えないのは不思議とは思いませんか?そう不思議です。これはプロポリスの抗菌、静菌作用のためだ。東欧では早くから医療に利用されていたようで、例えば歯痛、傷口や虫刺され(つまり感染症)に塗布すると治りが早くなるとのこと。プロポリスとはプロ(protect守る)ポリス(police都市、警察ではない)つまり「ミツバチの巣を守るもの」の意です。また後程、ご説明したいと思います。

巣板を持ち上げハチを刷毛で払い落とす、俵養蜂場の春井さん

巣板を持ち上げハチを刷毛で払い落とす、俵養蜂場の春井さん


白くなっている部分が蜜蓋

白くなっている部分が蜜蓋


まん中の一回り大きいのが女王蜂。ミツバチはファミリー全体がひとつの生命体といえる

まん中の一回り大きいのが女王蜂。ミツバチはファミリー全体がひとつの生命体といえる


巣板から蜜蓋を切り取り、遠心器に入れる

巣板から蜜蓋を切り取り、遠心器に入れる


蜜板を遠心分離器にかけ、遠心力でハチミツだけを取り出す

蜜板を遠心分離器にかけ、遠心力でハチミツだけを取り出す


砂糖水のような花蜜は、ミツバチの酵素によりハチミツとなる

砂糖水のような花蜜は、ミツバチの酵素によりハチミツとなる


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藤井 芳夫

藤井内科クリニック

〈2016年11月号〉
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