9月号
名湯を愉しむラグジュアリーな空間 有馬グランドホテル「別墅 結楽」オープン!
株式会社 中の坊 代表取締役社長 梶木 実 さん
7月26日、東館の全面リニューアルを終え、露天風呂付きクラブフロアをはじめ、多様なシチュエーションに応える客室を配備、また800名まで収容可能の大会議場が完成した有馬グランドホテル。安心・安全を提供するホテルで、「お客様のご要望にきめ細やかにお応えしたい」という思いを、梶木実社長に伺った。
「別墅 結楽」は全室ベッドルーム
―今回のリニューアルの経緯は。
この度の改修は、耐震改修促進法が施行されたことがきっかけのひとつでした。阪神・淡路大震災の際には、有馬グランドホテルは増築の最中に大きな揺れに襲われ、幸いケガ人は出ませんでしたが建物には大きな被害がありました。そういった被災の経験のある我々ですし、宿泊業は、お客様に一日を過ごしていただくわけですから、安心・安全に関してはひときわ大きな思いがあります。前回の建て替えが96年で、この25年のあいだ、お客様のニーズはがらりと変わっています。昔のような、上げ膳据え膳だけでご満足いただけるような時代は終わり、皆さんそれぞれにご要望やお好みをお持ちですし、お口も肥えている。そのお声に応える施設に変えること、プラス今後見込まれる需要を取り込み、皆さまに必要とされる旅館にしていきたいという願いからです。
―お客様のニーズに応えた「別墅 結楽」はどういった客室が主ですか。
生活様式が洋風になったこと、またご高齢の方にとってもベッドが良いということで、「別墅 結楽」の75室すべてにベッドをお入れし、テーブルとイスを設置したお部屋になりました。一方で、情緒面ではしっかりと旅館の雰囲気を取り入れ、和モダンのしつらいの中でおくつろぎいただくことができます。2階、7階は露天風呂付き、お部屋食の「別墅 結楽『大地・大空』」というクラブフロアです。各部屋に金泉・銀泉の露天風呂が付き、お食事はそれぞれの階にある厨房から出来たてのお料理をお持ちし、お部屋で召し上がっていただけます。これは、ご高齢の方がご宿泊の際に、大浴場や、お食事の会場が遠い、お部屋で全て楽しめるようにして欲しいといったお客様からのご要望にお応えしたものです。
3、5、6階にはさまざまなタイプの和洋室、洋室をご用意しています。ご家族やグループでおくつろぎいただけるお部屋はもちろん、お一人でも気軽にお泊りいただけるようにダブルルームを多くしました。お夕食は専用ダイニング「時分時」でのお食事です。よりできたてのお料理をお出しするため、ライブキッチンを設置し、季節を味わう会席料理、中華オーダーバイキング、串揚げコースからお選びいただけます。これも、お客様のご要望により近づくための選択肢を増やそうという思いからです。
有馬で需要のあるコンベンション施設
―宴会棟には、800人まで入れる大型会議場もオープンしました。
これまであった3つの宴会場をひとつにしまして、ホワイエを大きくとった大型の会議場をつくりました。会議やセミナーではプロジェクターをお使いになる場合が多いですから、対応するため天井高を6mとっています。その他、宴会、会議、小さな分科会等にも対応できるお部屋もありますので、規模に応じてお選びいただけると思います。有馬温泉は、伊丹空港から約30分、新神戸から約30分、京都から新名神で約1時間と、意外と多方面からのアクセスが良く、これまでも会議や分科会の需要がありました。会議の後には大人数のお部屋でなく、お一人でくつろぎたいというご要望も多いですので、「別墅 結楽」にはお一人でもお泊りできるお部屋をご用意したのです。
―安全・安心面ではいかがですか。
小さな地震でも、エレベーターがストップしてしまいお客様がお困りになったということがこれまでありました。そのため、今回の改修では、震度4強の揺れでも安全が確認されれば自動復旧するエレベーターを導入しました。また、停電によって大事な式典の最中にご迷惑をおかけしてしまうというケースがかつてあったことを教訓に、大きな自家発電機を設置しました。停電が起きればすぐに自家発電機に切り替わり、照明や空調が問題なく動くようになっています。食の安全に関しても、大きく見直しました。
―有馬グランドホテルのグループ・中の坊瑞苑との連携はいかがですか。
瑞苑は数寄屋造りの建物の中、静かにおくつろぎいただけます。一方でグランドは解放感のある中でお子様も一緒にお過ごしいただけますので、提供するくつろぎが少し違っています。ですからリピーターのお客様は、ご夫婦での旅行では瑞苑、お孫さんも連れてご家族でお越しになるならグランド、といったふうに使い分けてくださっているようですね。
―リピーター率はどれぐらいでしょうか。
53~54%のリピート率です。これは三古湯、三名泉であり、身体に良い温泉である有馬温泉のブランド力によるところが大きいですよ。ただお客様のニーズが本当に変化、細分化していますので、我々も努力していかなくてはなりません。今冬までには、お一人おひとりが一皿ずつ選んでコースを組み立てられる「カスタム懐石」をスタートさせる予定です。選択肢の多さを生かすのが有馬グランドホテルの力です。
―そんな中で、ドッグホテルがオープンするとか。
今やペットはご家族の一員ですからね、西宮に本店がある阪急ハロードッグさんにソフト面を含めたご指導をいただきながら、安心してお泊りいただけるドッグホテルを目指していきます。
我々が努力しなければお客様には満足していただけませんから、サービス面での見直しや、他所でやっていないことにチャレンジすることで、支持、または信頼していただけるようになると考えます。最初は失敗も多く、お客様にお叱りを受けることも多いかもしれませんが、皆さんにもぜひご指導いただきたいと思います。
今後に関しては、幸いなことに有馬は知名度が高いですから、他府県の方々が「神戸に来られた目的は有馬温泉」ということが結構多い。ですから六甲山や、表六甲を含めて連泊できるような仕組みができればもっと良いかと思います。城崎、淡路島なども全国的に有名ですから、それらの温泉地とも連携したい。今、日本海の塩と、有馬温泉のお湯から作られる塩、瀬戸内の塩、それらの“塩つながり”で何か面白いことができないか、といった話もあるんです。
―楽しみですね。
梶木 実(かじき みのる)
株式会社 中の坊 代表取締役社長
1969年生まれ。神戸市出身。ウェスタンミシガン大学卒。1997年、株式会社 中の坊入社、2010年より同社代表取締役社長(現職)。趣味は、ゴルフ、読書、旅行。好きな言葉は「一隅を照らす」