2019年
9月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第九十九回

カテゴリ:医療関係

オンライン診療は是か非か

─オンライン診療とは何ですか。
山本 オンライン診療とは遠隔医療のうち、医師患者間において情報通信機器を通して患者の診察及び診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムに行うと定義されています。お医者さんへのかかり方は外来で受付をし、待合で待って、診察を受け、支払いをし、近くの薬局で薬を受け取るというのが一般的ですが、それをパソコンやスマホで受診できてしまうのがオンライン診療です。テレビ電話のイメージを想像していただければ良と思います。オンライン診療のシステムを提供するベンダーのうたい文句をそのまま引用すると、スマホで手軽に受診でき、地方でも難病専門医にかかることができ、薬は処方箋もしくは薬そのものを郵送で受けとることができ、しかもキャッシュレスということになります。

─オンライン診療はいつはじまったのですか。
山本 情報通信機器を用いた診療のはじまりは平成の初め頃で、インターネットの発展を背景とした離島へき地医療のサービス向上のための遠隔診療に遡ります。1997年の「遠隔診療は直ちに医師法第20条(無診察診療の禁止)等に抵触しない」という厚生省健康政策局長通知もあり実現したのです(図表)。当時の遠隔診療の概念は医師間(DtoD)による遠隔画像診断や遠隔病理診断が先行しており、医師と患者間(DtoP)についてはかなり慎重なものでした。それが2017年の内閣府の未来投資会議において経済成長分野として医療介護業界が注目され、AI・ICT・ビッグデータ・ロボット等の革新的先進技術による具体的施策が決定されることで遠隔診療が再びクローズアップされたのです。

─オンライン診療と遠隔診療との違いは何ですか。
山本 もともとは「遠隔診療」とよばれ、その後、「オンライン診察」→「オンライン診療」と名称が変化していきましたが、2018年の診療報酬の改定では「オンライン診療」の呼称に統一され、オンライン診療料・オンライン医学管理料等が新設されました。現在では情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為で医師同士や看護師・患者とのやり取りなどが「遠隔医療」、遠隔医療のうち医師患者間において、情報通信機器を通して患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムに行うものが「オンライン診療」と定義されています。

─オンライン診療は誰でも受けられるのですか。
山本 2018年4月の診療報酬改定で記載された内容に沿えば、初診から6か月以上同一医師が診察し、緊急時には30分以内に自院で診察可能という受診条件があります。該当疾患が限られるなど保険診療としてはかなりハードルが高いものとなっているので誰でも気軽にというわけではありません。

─オンライン診療が可能な医療機関はどれくらいありますか。
山本 2019年2月の段階での各ベンダーの契約数から推測すると、すでに5000か所近くの医療機関でオンライン診療を開始しているか準備中となっています。しかし、実際に稼働している医療機関は数パーセント程度ですので、まだまだ発展中の手法と言った方が良いでしょう。

─オンライン診療にはどのようなメリットがありますか。
山本 オンライン診療のメリットとしては、まず、通院負担の軽減が考えられます。また、院内感染の予防など患者にとってのメリットも大きいですね。社会的には難病外来など専門性の高い診療における地域格差の是正、医師リソースの有効活用、慢性疾患の重症化予防や低負担な診療が普及することによる医療費抑制効果の可能性などがあげられます。

─逆にどんなデメリットがありますか。
山本 セキュリティへの人的・経費的なコストは非常に大きいですね。さらに患者が利用している無線LANからのハッキング、診察のやりとりがネット上に出回る可能性などを考慮すると、セキュリティ上のリスクはさらに大きくなるでしょう。診察するにあたっては、対面診療に比べコミュニケーションが取りづらい点が課題です。また、クレジットカードが必要で、最低でもスマートフォンが必要など、本来このようなシステムで手をさしのべられるべき高齢者やIT弱者にとってはハードルが高いという指摘もあります。

─海外の現状はいかがですか。
山本 デンマークや米国においては日本以上にオンライン診療の発展が目覚ましいですね。デンマークでは国を挙げて医療健康情報のデジタル化に取り組んでおり、その一環としてオンライン診療が組み込まれています。米国ではシェアNo.1のラドテック社は低料金、365日24時間受診をうたい文句に4年間で10倍の売上高に成長し、昨年度は会員数2200万人、登録医療従事者数3100名に達しているとのことです。

─オンライン診療にはどのような可能性と懸念があるのでしょうか。
山本 例えば国内の高血圧患者は1000万人と推定されていますが、実際に定期的に医療機関を受診している患者はその半分にも満たないとの報告があります。生活習慣病および予備軍の患者を企業内に設置したオンラインの肥満外来や禁煙外来で受診の機会を増加させることは、関連疾患の発症予防に効果があるでしょう。一方で、事実上の処方薬ネット販売ではすでにオンライン診療を悪用した事例が発生しており、ビジネス主導の医療や診察の形骸化などについては注意深く見守る必要があります。

─オンライン診療は今後、普及していくのでしょうか。
山本 2018年に厚生労働省より「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が出されて診療報酬改定でもオンライン診療が記載されたとはいえ、まだまだ本格的な解禁には至っていません。しかし、諸外国の動向やICTの発達を考慮すると、将来的にオンライン診療が入院、外来、在宅に次ぐ第4の診療形態になり得る可能性は高いのではないでしょうか。

(図表)情報通信機器を用いた診療と「医師法第20条無診察診療の禁止」(1948年)に関するこれまでの経緯
出展:厚生労働省資料「情報通信機器を用いた診療の経緯について」


兵庫県医師会医政研究委員
山本 学 先生