2019年
1月号

輝く女性Ⅱ Vol.8 株式会社プラスリジョン 代表取締役 福井 佑実子 さん

カテゴリ:グルメ,

インタビュアー・三好 万記子

農作物をつくる人も食べる人も、自然に支え合うオーガニックな生態系をつくり、持続可能な社会を提案されている福井さん。オーガニックといえば、土づくりに注目しがちですが、耕し方のみならず、食べ方や買い方、働き方も、全てつなげて考えるのが「本当の有機農業(オーガニック)」。淡路島で有機栽培された規格外の玉ねぎを障がいのある人たちが加工した「オニオン・キャラメリゼ」のプロデュースをはじめ、民間企業に向けた障がい者雇用促進セミナーやコンサルティングなど、オーガニックな社会につながる活動に尽力されています。

今回、お話を伺ったのは…

株式会社プラスリジョン 代表取締役 福井 佑実子 さん

障がいのある人たちが働く場をつくることもオーガニック。農産物だけでなく、
畑から食卓までの有機的なつながりも含め持続可能な世の中をつくっていきたい。

有機農業の課題と福祉の課題を解決したいと2008年に会社を設立しました。会社名には「プラス」するのは「リジョン(融合)」という活動方針を込め、分野横断的なメンバーでプロジェクトチームをつくり活動しています。福井さんは農林水産省が推進する6次産業化(農林漁業者の利益向上・所得向上のために1次産業の生産だけでなく2次産業の加工や3次産業の流通も視野に入れた事業開発/商品開発)をめざす農林漁業者のアドバイザーとして全国各地の産地にも足を運びます。誌面に登場する井上農園も兵庫県の6次産業化認定事業者です。

…障がいのある人たちが、障がいなく働く環境づくりを行っておられる福井さんですが、このお仕事を始められたきっかけは?
もともと働いていた国立大学では産学連携を担当していました。まだCSRなどなかった当時、有機農家さんの厳しい経営状況や、障がいがある方々の自立・社会参画の低さなどの社会課題を目の当たりにしました。しかし、いざ何かお手伝いしたいと思っても、検討すべきデータが全くなく現状が把握できないんです。そこでまず厚生労働省の研究に参加し、障がいとは何か、障がいにはどういった特性があって、どういった合理的配慮のある環境ならば、彼らの実力を引き出し、発揮できるかを整理することから始めました。

…それが私もレシピづくりをお手伝いさせていただいたお弁当事業ですね。
はい、「厚生労働省障害者自立支援調査研究プロジェクト」の現場となったオーガニックのお弁当宅配事業です。農家さん直送の有機野菜を使って障がいのある方がお弁当をつくり、注文を頂いた企業に宅配していました。障がいがある方の障がいを「ある」から「ない」に変える働く環境づくりは福祉施設と大学とシンクタンクで、レシピは三好先生、その他にもいろいろな方に助けていただきました。

…有機野菜ならではの濃い味を活かした味付けや彩り、栄養、頭を悩ませたレシピづくりでした(笑)。現場で皆さんがイキイキと働かれていたことが印象的です。その後、2008年に会社を設立され、「オニオン・キャラメリゼ(玉葱飴色炒め)」に取り組まれました。ヨーロッパでは料理の下味として重宝されている炒め玉ねぎは、一つの作業を丁寧かつ確実にこなす障がいのある方達の特性を活かした素晴らしいアイデアだと思いました。
「オニオン・キャラメリゼ」はレシピおよび商品名も三好先生のご考案です。障がいのある人が作ったからではなく、商品に魅力を感じて買っていただけるよう、淡路島産で有機認証を取得し栽培されている玉ねぎ生産者から規格外の有機玉ねぎを約束した量を毎年買い取る契約をしました。素材が最上なので塩も油も使用せず、純粋に有機玉ねぎだけで濃厚な甘味を出しました。おかげさまで一般流通で15万食以上は出荷したんじゃないでしょうか。延べ15万人以上の方の手に渡ったと思うと、商品を通じて福祉や有機農業の現場を伝えることができたかなと思っています。

…飲食業ほか、障がい者雇用促進セミナーにも注力されています。
日本には936万人の障がいのある人がいて、そのうち世の中に就労が難しい障がいがある人は350万人以上いると言われています。障がい者手帳をお持ちでない方も合わせれば、その3~5倍は存在すると言われます。そこで自分の経験や知識を発信することで、わたしにできることは小さいけれど、もっと社会的にインパクトのある大きな雇用を生みだしていければと、障がい者雇用に熱心に取り組んでいる企業や、ダイバーシティ経営を目指す上場企業向けのセミナーやコンサルティングを実施。首都圏中心ですがたくさんの雇用につながりました。大手企業さんだけでなく地元の中小企業さんなどでも、障がいのある人の特性やニーズにあった働き先が増え、障がい者雇用や合理的配慮を考えることが普通になる社会づくりに貢献したいと思います。

…「障がい者への支援」と「有機野菜」の二つを軸にお仕事を展開されていますね。
国際有機農業運動連盟IFOAMによる有機農業の原理があります。健康の原理、生態的原理、公正の原理、配慮の原理からなり、例えば健康の原理ならば、人のみならず土や動物、地球環境も含む、すべてが健康でなければならないというもの。その他の原理も同様に皆の共存共生を考え、4原理が満たされてこその有機農業という考えです。有機(オーガニック)=農産物のことだけでなく、畑から食卓までの有機的なつながりを含め、土の耕し方、農作物や加工食品の買い方、食べ方、働き方全てを包括した持続可能な生き方を目指しています。この原理に照らし合わせると、私の仕事の有機農家さんたちがつくる農産物を商品化して付加価値をつけることも、障がいがある人の仕事づくりをすることもオーガニックな生き方の推進に含まれるということです。

…なるほど、福祉も農業も共にオーガニックであると。高齢化が進み、労働生産人口が減っていく中、障がいのある方々の活躍は持続可能な社会に有効だと思います。耕し方や働き方以外に、私たちの食生活に欠かせない買い方も含まれています。
農家さんは野菜をつくるだけではなく、防災や治安、景観保持、環境保全など、多面的な機能を担っています。しかし、その役割への対価は農作物の料金にのせられていません。農業をする人が減っていなくなれば、税金で補填する必要も出てきます。持続可能な暮らしに自分たちがどのようにつながっているのかを真剣に考える時が来ているのです。三好先生も共感くださり、自分ごととして考える仕組みに取り組んでいただいています。

…農家さんの作付から関わり、採れ高に関係せず買い取る契約を交わし、料理サロンの生徒さんたちに協力いただいています。昨今、自然災害も多くなってきていますし、責任を分担することにもなります。「オーガニックな生態系」に向けて私たちができることは小さなことかもしれませんが、その積み重ねが大きな一歩となり、社会を前へ動かす力へとつながっていければいいなと思います。
本物の価値をきちんと説明して売り、本物を適正価格で買うということをカタチにするのが私の役目。現在、日本ではオリンピック・パラリンピック開催に向けて、有機/オーガニックへの注目が集まっています。有機JAS認証制度ではレストランのオーガニック認証も農水省がパブリックコメントを集めています。また最近は大手企業さんを中心に国連で制定された持続可能な開発目標(SDGs)を達成しようという動きが浸透するなど、少しずつですが前へ進んでいる実感があります。これからも持続可能な小さなモデルを自分で実行し、チャレンジしたい方々に情報を提供したり、生産者をご紹介したりすることで、神戸、日本、さらには世界的基準で、世界の仲間と手をつなげていければと考えています。
一人ひとりができることを少しづつ実行することで社会は変わると思います。

…オーガニックについて興味を持ち、持続可能な社会について考える。福井さんがそのきっかけの種を蒔かれ、あちこちで咲いて、参加者の輪が大きくなっていくことに期待しています。

対談ホスト役の三好万記子さん(写真右)と福井佑実子さん(写真左)。お二人の出会いは13年前、30歳代のビジネスウーマンが集う交流会で。有機農家さんの課題を相談した福井さんに、会の主宰者が料理をケータリングされていた三好先生を紹介したことがきっかけでした。


丹波発の米粉めん『丹穂めん』

三好さんからの質問コーナー

Q.ハマっているグルメや気になるお店はありますか。
A.神戸は農村部が近い!生産地に足を運びおいしい野菜を買って近所の人たちとBBQやお鍋をするのにはまっています。
これからの季節はお鍋の〆に井上農園の「丹穂めん」がかかせません。

株式会社プラスリジョン 代表取締役 福井 佑実子

民間企業、国立大学産学連携組織勤務を経て2008年株式会社プラスリジョン設立。ETIC.主催STYLE2004入賞(2004年)、NEC社会起業塾6期生(2007年)、SVP東京 協働採択(2009年)大阪府第4次福祉計画策定委員(2010〜2011年)農林水産省施策・6次産業化プランナー(2012年〜)、ユニバーサル社会づくり賞・兵庫県知事賞(2013年)有機JAS認証・判定員・検査員(2013年~)

三好 万記子(みよし まきこ)

株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母。

〈2019年1月号〉
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