1月号
耳よりKOBE パリのアカギ 関西で「素描原画」展 赤木曠児郎さん
パリ在住で、パリの街並みを描き続ける画家・赤木曠児郎さんの展覧会が、昨年9月、大丸心斎橋店で開催された。赤木さんといえば「アカギの赤い絵」として、輪郭線を朱色で彩った独特の画法が特徴だが、今回は「素描原画」を集めて展示。素描原画とは赤木さんの造語で、油彩画を描く前に、黒インクとペンで描いたデッサン、記録のようなもの。「赤い絵」は家で描くが「素描原画」は街角にイーゼルを立てて描く。パリを描いたこの「素描原画」は500点に及び、パリの歴史的資料では、とも注目されている。
赤木さんは画家を志して29歳でパリに渡り、美術学校で学びながら、業界ニュースを紹介していた「日本繊維新聞」のパリ駐在記者として、情報を日本に提供していた。また、プレタポルテを日本に初めて紹介し、ジバンシイやシャネルなどの多数のブランドが初めて日本の百貨店に出店する際にも橋渡し役として活躍したこともあり、展覧会にはファンや美術関係者のほか、ファッション業界からも多数の人々が訪れた。
私費留学生としてパリに留学した赤木さんは、頼まれて神戸の婦人帽子店「マキシン」の専門材料の買いつけのアルバイトをしていたこともある。留学前には東京で、自身でも帽子デザインを手がけていた経験もあり、渡邊利武社長(当時・故人)の信頼を得て、材料の仕入れだけでなくヨーロッパの最新ファッション情報を発信。マキシンには赤木さんが渡邊社長に贈った回絵画作品がかけられている。今回の展覧会では、マキシンからの依頼で、昔を思い出した、帽子をかぶった印象的な女性を描いた作品も展示された。
赤木さんは「独自のものを持っていたからパリで続けてこられたのかもしれない。でも甘えていてはいけない。自分を壊していかなくては」と、新しいテーマにまだまだ創作意欲を燃やしている。
(参考『月刊美術』9月号、『私のファッション屋時代』赤木曠児郎)