2013年
1月号
阪神間のモダニズム建築を代表する甲子園会館。昭和40年に武庫川学院が譲り受けた

栄光の名建築をまもる

カテゴリ:建築, 西宮

世界的な建築家、フランク・ロイド・ライトの愛弟子、遠藤新の設計による「甲子園会館」は昭和5年に甲子園ホテルとして竣工し、「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」と並び称された。戦災、震災を生き抜いたこの歴史的建造物は建築を学ぶ学生たちのキャンパスとなった今も、その佇まいは守られ、次の世代へ受け継がれようとしている。

―甲子園会館(旧甲子園ホテル)の歴史を簡単に教えて下さい。
後藤 超高級ホテルの時代は意外と短く、戦時中は海軍病院として使われ、終戦とともに進駐軍の将校宿舎となりました。昭和40年、建物の修復をはじめ、庭園を含めたかつてのホテルの景観を回復するという条件で、武庫川学院が譲り受けました。平成7年の阪神・淡路大震災では照明のライトカバーが数10個落下した程度の被害で済みました。F・L・ライトの建物は地震には強いと言われていましたが、確かにそうでしたね。
そして平成18年、武庫川女子大学生活環境学部に建築学科を、そして大学院に建築学専攻を開設しました。
―歴史的建造物を所有していることが建築学科開設の弾みになったのですか。
後藤 甲子園会館は建築学科を持つ大学が全国から見学に来るほど価値のある建造物です。建築学科の学生にとってはキャンパス自体が生きた教材といえます。当時、私自身が開設に関わったわけではありませんが、「最高の環境だ」と考えたのも当然だと思います。
―歴史的建物の中で学生さんがパソコンに向かっている…、何とも不思議な光景ですね。
後藤 1年生のスタジオは甲子園会館内の東ホールに置いています。畳1帖サイズの製図机とパソコンが1人の学生の専用スペースです。創作活動は気分がのってきた時に一気に進むものです。そこで時間を気にせず使えるように、敷地入り口には昼夜を問わず守衛を配備して人の出入りを厳しくチェックしています。
―女子大の建築学科は全国初ですね。
後藤 そうです。極めて教育水準の高い4年間ですが、更に本学は学部と大学院修士課程合わせた6年一貫教育を行っております。また教育プログラムがUNESCO/UIAの建築教育基準に対応していることを認定していただくために本年、※JABEEの審査を受けました。修士課程のカリキュラムは一級建築士試験の受験に必要な2年間の実務経験に相当すると認められています。
―何故、そういうシステムを取っているのですか。
後藤 本学は「社会に貢献できる有為な女性を育成する」という建学の精神に基づき、常に女性の社会的自立を目指してきました。本学では50年前から、女性に薬剤師の道を拓いています。同じように建築学科では、単に一級建築士になるだけでなく、国際的に通用する建築家を養成し、その社会的評価を高め将来の女性の仕事として広げていこうという考えを持っています。
―建築学科を始め、全5学部13学科は人気が高く、偏差値も高いですね。何か特別な戦略を持っているのですか。
後藤 難関女子大の一つに数えられているのはありがたいことだと思っています。本学はどの学科の先生も非常に熱心に指導されますから、学生の満足度は高く、退学率は国立大学の平均よりも低いです。、2011年の本学退学率は1.0%です。企業の人事担当者の評価も少しずつ高くなってきました。卒業生が頑張って、色々な面で評価をいただいているからだと思っています。
―資格系の卒業生の実績も高いのですか。
後藤 2011年は162人が小学校教員に採用されていますので、全国の女子大でもトップレベルだと思います。そのほか、毎年多くの中高教諭、幼稚園教諭、保育士が採用され、多くの薬剤師、管理栄養士が誕生しています。教育委員長、校長会会長や薬剤師会会長として活躍されている卒業生もいます。
―素晴らしい建物と環境ですが、これから進む方向は。
後藤 私が館長を兼務することになって、甲子園会館の保存、活用、広報を考えたとき、甲子園会館の価値をどう表現するかに悩みました。素晴らしいだけでは、うまく伝わりません。そこで、国等のお墨付きを頂くことにしました。平成19年に箱根の富士屋ホテル、軽井沢の万平ホテル等と経済産業省の近代化産業遺産の認定を、平成20年に日光の金谷ホテル等とベルカ賞を、平成21年には、文化庁の国登録有形文化財の登録をそれぞれいただくことができました。お蔭様で存在が広く知られるようになり、今では観光バスが訪れます。教育施設として効果的に活用しながら、さらに多くの人にも知ってもらう努力を続けたいと思っています。
※日本技術者教育認定機構

阪神間のモダニズム建築を代表する甲子園会館。昭和40年に武庫川学院が譲り受けた


設計は、近代建築の三大巨匠・フランク・L・ライトの愛弟子・遠藤新による


和風の建築様式を取り入れた西ホール天井の市松格子


打出の小槌のレリーフと水琴窟を思わせる音が楽しめる泉水


至るところに細工が施される。どこから撮影しても「絵になる」のがライト建築でもある


モザイクタイルとともに遊び心も散りばめたバーの床


甲子園会館の隣にある建築スタジオ。2009年にはBSC賞(建築協会賞)を受賞


建築設計演習課題「病院」


建築設計演習課題「老いが教えてくれる生きた空間」


甲子園会館内のスタジオ


建築設計演習課題「水辺の楽園」


建築設計演習課題「水辺の楽園」


優れた建築空間の真髄を実感できるよう、1年生のスタジオは甲子園会館内にある



昼間と夜間では全く表情を変える。その美しさに目を奪われる


今回で7回目を迎えたライトアップ。地域住民の楽しみのひとつになってる


昨年、全日本合唱コンクール全国大会で銅賞を受賞した武庫川女子大学附属高等学校コーラス部


ライトアップ点灯式での大河原学院長(左)と糸魚川学長


庭園や広場での照明演出は、建築学科学生(1・2年)のフィールドワーク演習の1つである


後藤 章さん

学校法人 武庫川学院
総務部長 兼 甲子園会館長
1952生まれ。1976年関西大学社会学部卒業、武庫川学院へ。秘書課長、人事課長、入試センター次長、総務部長を経て、2007年総務部長兼甲子園会館長。

武庫川女子大学 甲子園会館(上甲子園キャンパス)
兵庫県西宮市戸崎町1-13
TEL.0798-67-0079(直通)
武庫川女子大学 中央キャンパス
兵庫県西宮市池開町6-46
TEL.0798-47-1212(代表)

〈2013年1月号〉
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