8月号
県内74のRCを率いて
国際ロータリー第2680地区ガバナー
医療法人 尚和会 会長
大室 ● さん
(●は人偏に嶲)
今年7月から県内74ロータリークラブ(RC)を率いるガバナーの重責を担った大室さん。ご自身の病院と奉仕の精神という共通点を持つRCの活動や医療についてお聞きした。
―ガバナー就任おめでとうございます。ここに至るまでの準備が長くて大変だったのでしょうね。
大室 準備期間が2年半、東京、大阪で何回か研修会があり、最終の仕上げが今年1月13日から19日にアメリカカリフォルニア州サンディエゴで開催された国際協議会でした。世界各国から537人のインカミングガバナーがパートナーと一緒に参加しました。それだけでも千人超で、研修リーダーやロータリーシニアリーダーなどもパートナーと共に参加しますから1500人を下らない参加者の多い大きな大会です。
―国際ロータリーの最大の大会ですね。
大室 はい、その一つです。もう一つが、国際大会です。今年はポルトガルリスボンで開催され3万人近くの参加がありました。
―県内74RCを回って、スピーチもされるのですね。
大室 これから11月にかけて1週間に4、5カ所を目処に回る予定です。国際協議会で学んだことを会員の皆さんに私の言葉で伝えたいと思います。
―所属の宝塚武庫川RCとしての独自の活動は。
大室 宝塚武庫川RCの活動で非常に喜んでもらっているのが、少年少女ちびっこ野球大会開催です。少年野球のチームでは低学年の子供たちはなかなか試合には出られません。そこで小学4年生以下を対象にして大会を先ずは数チームでスタートしました。小さな子供たちや保護者の皆さんにとても好評で、今では20チーム以上。予選が1日では済まない状況になっています。
―国際的な活動もしていますか。
大室 海外留学支援です。現在、活躍してくれているのが、フランスソルボンヌ大学へ留学して帰国後、東京にあるアフリカのトーゴ共和国大使館付秘書として勤務している女性です。そのご縁で、トーゴの代理大使から「何か国のために支援してもらえないか」というお話をいただきました。元フランス領ですから、ヨーロッパからは支援があり井戸はたくさん掘ったものの、使い方が分からず、ゴミを放り込むなどしてちゃんと機能していないということです。そこで、今年の5月に現地に行き、井戸のごみを掃除して、ポンプ式にする整備活動を始めました。今後、井戸使用者から少額ですが利用料を徴収して、住人が自分たちの井戸として管理するシステムづくりをしていく予定です。アメリカカリフォルニア州ラ・ハブラRCとは30年近く友好提携して、メンバーや家族が相互に行き来しています。フィリピンマニラのRCとも交流があります。水害が多いマニラでたびたび起きる浸水に対応できる、車高を高くした救急車を寄贈しました。
RC活動と医療の共通点は、奉仕の精神
―もともと外科医の大室さんが宝塚第一病院を任されたのが37歳の時。その2年後にRCに入られたそうですが、RCが支えになったことはありますか。
大室 病院での仕事においても、「真実かどうか」「みんなに公平か」「好意と友情を深めるか」「みんなのためになるかどうか」というRCの4つの理念をずっと心に留めてきたのが良かったと思っています。私がRCに入った当時の熊野啓五郎会長は札幌高等裁判所長官などを歴任された方で大変な人格者でした。色々なことを教えていただきました。企業経営者もたくさんおられましたので、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしの近江商人の哲学など、「なるほどなあ」と感心することも色々ありました。様々な立場の方たちが集まるRCだからこそ、教えていただけたと思っていますね。
―阪神・淡路大震災でも宝塚第一病院は大きな被害を受けたそうですね。
大室 そうです。当時は、商店街からの炊き出しなど、地域の皆さんから大きな支援をいただきました。
―救急病院として地域貢献もずっとされてきたのですね。
大室 私が病院を引きついだ当時は宝塚市に公立病院もなく、年間約3千件、市内だけでも救急の約40%を受け入れ、私自身が診て、執刀していました。現在は、各担当医に任せていますし、市内の救急受け入れ体制も整ってきましたので状況は随分変わってきています。
―介護老人保険施設の開設はやはり高齢化社会のニーズに応えるものですか。
大室 震災後、職員の間に、困っている人たちを助けたいという気持ちが育ったことがきっかけのひとつです。そこで、たまたま伊丹市には介護保険導入後もそれを利用できる施設が少ないということで、老健施設をつくり、続いて宝塚市でも始めることになりました。
―宝塚リハビリテーション病院も運営してますね。
大室 回復期リハビリテーションは厚生労働省の施策に沿ったものです。急性期を過ぎた患者さんがリハビリを受けると本当に元気になられます。ところがスムーズに受け入れてもらえる病院がないのが現状です。リハビリは毎日受けることが重要なのですが、通常の病院では土日祝日は休みで週5日しか受けられません。当院では90名以上の、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのスタッフを置き、1年365日、リハビリを受けられる環境を整えています。
―RCと医療は奉仕の精神で共通していますね。ガバナーとして、RCの活動に医療支援を取り入れる予定はありますか。
大室 医療に関してはなかなか難しいと思いますね。RCの活動趣旨は、行政や他の団体がやっていない地域奉仕活動をしようというものですから、それに沿っていこうと思っています。
―最後に、今後の抱負などあればお話しください。
大室 日本はどの分野をとってもかなりのレベルを達成しています。一方、海外には支援を必要としている国や地域がたくさんあります。RCとしても留学支援に力を入れていますが、海外へ行って単に語学の勉強をするという時代ではないと考えています。日本でしっかり勉強したことを海外へ行って教えたり、広めたり、支援に役立てたりするために活用して欲しいと思っています。
―ご多忙な1年になりますが、健康に留意してご活躍ください。本日はありがとうございました。
大室 ● さん(おおむろ すぐる)
(●は人偏に嶲)
国際ロータリー第2680地区ガバナー
医療法人尚和会 会長
1939年生まれ。医学博士(大阪大学)。東北大学医学部卒業後、大阪大学付属病院、市立芦屋病院、大阪労災病院、兵庫医大病院を経て、父の跡を継ぎ宝塚第一病院理事長兼院長に。急性期医療のみならず高齢者医療の重要性を痛感し、介護老人保健施設、宝塚リハビリテーション病院を開設。2011年より現職。その他の公職として、宝塚商工会議所副会頭他。