2015年
2月号
世界のトップブランドから個人の工房で作られるものまで多彩なアイテムがそろう

技術だけではない「マイスター」の輝き[神戸とモノづくり(2)]

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マイスター大学堂
アウゲン・オプティカー・マイスター ドイツ国家公認眼鏡士
久利将輝さん

三宮センター街の老舗眼鏡店「マイスター大学堂」には、高い技術を求める顧客が全国からやって来る。
ドイツで研鑽を積み、日本で叔父に次ぎ2番目に眼鏡士のマイスターとなった久利将輝さんにお話を伺った。

震災後に渡独を決意

 ドイツの国家試験に合格してマイスター資格を取得したのは平成17年(2005)です。その後、半年ほどドイツで勉強を続け、翌年に帰国しました。
 幼少の頃、叔父が日本ではじめての眼鏡士のマイスターとなり戻ってきて、折に触れて「お前もドイツで勉強するか」と言われ漠然とイメージは持っていましたが、具体的に目指したのは大学3年の頃です。父から「勉強するならバックアップする」と言われ、挑戦しようと。店は昭和7年(1932)創業で祖父の代からやっていますので、昔からのお客様も多く、私が継がずに店を閉めたら申し訳ないという気持ちもありました。
 大学卒業直前に阪神・淡路大震災があり、センター街のアーケードが落ちるなどして一時的に営業できない状態になりました。しかし、幸い店に大きな被害はありませんでしたし、大学を出たての自分が神戸にいても何かできるわけではなく、ドイツでしっかり技術を学んで10年後に戻った方が、長い目で見て店にも神戸にも役に立つのではないかと思い、予定通り発ったのです。
 ドイツでの最初の1年はフライブルグの語学学校に通いました。働く店が決まっていないと職業学校に通えないのでお店を探したのですが、小さな街だったので見つからず、大都市のミュンヘンへ移り、日本を発って2年後にようやく店を見つけて職業学校に通えるようになりました。

マイスターへの道のり

 日常会話には困らなかったのですが、いざ働くと方言や専門用語など辞書に載っていない言葉に苦労しましたね。最初は掃除からはじまり、レンズを削る仕事、眼鏡一式を作る仕事、接客と一通り教えてもらいました。一番印象に残っていることですか?ある日、プラスチック板を渡され、きれいな円に切り出しなさいと言われました。2時間くらいかけて結構きれいな形ができたのでその店のマイスターに渡すと、見るもなく「2時間くらいで円なんかできる訳がない」と。よく見ると、私が切り出した円はガタガタだったんです。結局合格をもらうのに翌日までかかり、円が一番難しいと教えてもらいました。店で働きながら学ぶのが2週間、学校で学ぶのが2週間。交互に繰り返すと実践に理論が結びつき、とても良いシステムだと思います。
 3年間の見習い期間を経てゲゼレ(熟練技師)になると、眼鏡の加工・販売が許されるようになりますが、マイスター学校に入るまでにゲゼレの経験が最低1年必要です。

日本にもきちんとした資格制度を

 私はゲゼレとして修行した後、ミュンヘンの国立眼鏡学校へ通いました。マイスターになると開業だけでなく、弟子の育成もできるようになります。ですからマイスター学校では技術はもちろん、経営や法律、教育学についても学びます。技術者であるとともに経営者、教育者であることも求められるのです。
 マイスターの試験は、2度失敗すると一生受験資格を失う厳しいものです。試験は筆記のほか、眼の検査などの実技、レポートもありました。資格は、マイスター組合から授与されるアウゲン・オプティカー・マイスターと、国から授与されるドイツ国家公認眼鏡士という2つの資格からなっています。後者はあくまで技術職なので、教育学の試験に不合格でも取得できます。前者は教育学を含めすべての試験に合格する必要があり、こちらの方が上になります。私の場合、語学学校からマイスター資格取得まで10年くらいかかりましたね。お世話になったお店も3店舗あり、個人店舗から大規模店までいろいろと経験しました。
 日本に戻ってからはそれまで学んできたことを大切に、常にお客様にとってベストな方法を模索しています。例えば、遠くを見る用の眼鏡を作る場合でも、運転を長くする場合に使うものと、ある程度手元を見たい場合に使うものでは、同じ人でも度数は変わってきます。その差をどの様に埋めるかというと、お話ししている中でどのようなことを求められ、何に困っておられるのかを把握することです。
 トップレベルの日本の眼鏡技術者は、ドイツと比べても甲乙付けがたいレベルにあります。しかし、ドイツではきちんとした制度があるので、技術者は一定のレベルに達して平均点が高いのです。一方、日本はレベルの差が激しいのですね。眼鏡は健康に関わり、生活の質にも大きく影響します。ですから、日本にも最低限の知識を身につけるための資格が必要ではないかと思います。

世界のトップブランドから個人の工房で作られるものまで多彩なアイテムがそろう


当時、眼鏡でドイツのマイスターを取得したのは日本で二人目であった


(左)シャープで斬新なアイテム。久利さんのセレクトは見る者を楽しませる (中)2005年、マイスターシューレ(マイスター学校)で、視力検査の授業を受ける (右)1998年、渡独して間もない頃の一枚。ミュンヘンの工房でレンズを研磨する


(左)鴨居玲の作品を月替わりで紹介する (右)不世出の画家・鴨居玲を紹介する。店内には文化的な要素をさりげなく取り入れている


三宮センター街にある「マイスター大学堂」



■マイスター大学堂

神戸市中央区三宮町2-11-1-120(神戸三宮センター街)
TEL.078-331-5542
営業:9:30~20:00
休業:元日

「ドイツでしっかり技術を学ぶ事が神戸に役立つと感じた」。ドイツでマイスターの資格を取るのに、約10年を費やした

マイスター大学堂

アウゲン・オプティカー・マイスター ドイツ国家公認眼鏡士
久利将輝さん

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