2月号
飛行機の速さと安さをいかせる使い勝手のよい空港
神戸空港ターミナル株式会社 代表取締役社長 松﨑 昭 さん
平成21年6月に代表取締役社長に就任以来、さまざまな新しい取り組みを進めてきた松﨑社長に、神戸空港の良さや今後についてお聞きした。
乗降客数、便数ともに順調に推移
―開港から10年、社長就任から7年を振り返っていかがですか。
松﨑 開港の翌年、平成19年度には乗降客数約300万人、神戸空港はピークを達成しました。
ところが私が社長就任した翌年の5月、JALが拠点撤退しました。便数も1日17便にまで減少し、平成22年度は年間乗降客約220万人と最低にまで落ち込みました。就任7年目の私にとって、これが一番不安な時期でしたね。その後、少し時間はかかりましたがスカイマークがカバーして、平成25年にはANAのパートナー社のエアドゥが札幌、ソラシドエアが沖縄に新たに就航してくれました。ANAを含めこれら4社で1日制限便数の30便をほぼ維持し、乗降客数約250万人で推移している状況です。
―特に好調な便は。
松﨑 羽田便はもちろんですが、全般的に好調です。昨年10月に1日1便から2便に増便した鹿児島便は乗降客数が3倍近くに増加しているのを見ても、朝夕2便の利便性は大きなものがあるようです。日立をはじめ大企業が立地する茨城へも1日2便が就航していますので出張などでご利用いただき、安定して好調です。長崎便も、神戸からの三菱造船所移転という背景もあり、観光利用も含め好調に推移しています。
アクセスがよくてコンパクトな空港だからできること
―使い勝手のよさで好評の神戸空港ですが、どういう点でしょうか。
松﨑 一つは、アクセスのよさだと思います。神戸空港利用のお客様の約6〜7割が利用するポートライナーは、三宮から約18分です。神戸市では三宮都心部の再生が進められているようですが、阪急・阪神三宮駅、JR三ノ宮駅からポートライナー三宮駅への便利で分かりやすいアクセス実現には期待するところです。一方、車利用の場合でも阪神高速を下りてからポートアイランド内ではほとんど渋滞もなく、快適です。駐車場料金も、ご搭乗者については24時間以内無料など格安に設定しています。車のナンバーを見てみると大阪をはじめ、京都、滋賀、岡山など周辺他府県からもかなりご利用いただいているようです。もう一つは、空港内での利便性のよさです。ポートライナーの駅、駐車場から歩いてすぐにチェックインカウンターに着き、そこですぐ保安検査を終えて、搭乗口までは1分ほどです。この動線のよさが神戸空港の大きな強みです。
―強みを最大限にいかすための苦労もあるのでしょうね。
松﨑 保安検査窓口を一つ増やし、なおかつ行列が出来始めると乗務員や業者用の窓口に係員を増やして開放しています。状況を一目で判断して対応できるのもコンパクトな空港ならではのよさだと思っています。朝夕、発着便が集中する時間帯にはボーディングブリッジが足りず、1機は地上からの搭乗となり時間がかかりご不便をおかけしていましたのでボーディングブリッジを1ヶ所増設しました。この規模の空港にしてはかなりの出費でしたが、便利さをお届けするためには必要なことだと考えています。
―神戸空港ならではの自慢は。
松﨑 神戸空港は神戸と緑の深い川崎重工のバイクを展示している空港です。車を展示する空港はありますが、バイクは日本でも唯一です。もう一つ自慢をしたいのが「ごみのない日本一きれいな空港」です。紙くずや吸い殻など落ちていません。私も毎日午前1回、午後1回、ごみを拾って歩いています。〝言い出しっぺ〟ですから率先しなくてはね(笑)。きれいになると、ごみを捨てる人も減ってくるんですね。近隣企業さんにもお願いしたところ快く協力してくださり、この一帯が本当にきれいになりました。
速くて安い、そして便利もお届けするために
―現在の課題は。
松﨑 1日30便に規制されていますので、神戸をベースとして就航させたい地方空港がたくさんあるにもかかわらず実現できないことです。さらに運用時間が7時から22時までに限られていることです。例えば現在、羽田からの最終着便は余裕を持って21時30分に設定していますので、羽田発20時15分です。東京都心で観光・ビジネスや会合を終えてから帰るには非常に中途半端なんですね。神戸空港の運用時間の延長が可能になれば、都心での会合で十分飲んで楽しんでから帰って来ることもできます(笑)。空港に着いたらポートライナーで帰宅して、翌日から出勤できます。
―実現は難しそうですか。
松﨑 十分に対応できる空港機能があり、海上空港ですから騒音問題もなく、時間延長の条件は整っているはずです。ところが実現が難しいことに歯がゆい思いをしています。
―関西3空港一体運営については。
松﨑 飛行機のよさは、まず速いこと、そして最近では安いこともあります。しかし便利さでいえば競合するJR新幹線が勝っている現状は認めざるを得ません。現在でも3空港は協力し、競争もしていますが、本当の競争相手は新幹線だと思います。3空港が関西で一つの空港となれば、強力な対抗策になるでしょう。3空港で飛行機が発着する時間を均等にするなどエアライン同士が知恵を出し合える場としても機能するはずです。例えば、羽田発のチケットで関西、伊丹、神戸の3空港どこへでも降りられるとすればお客様の利便性は非常に高まります。3空港が一体化すれば、新幹線利用者を飛行機に引っ張ってきて、お客様が便利に利用するためのいろいろな仕掛けを作ることが可能です。
―今年は10周年。イベントの計画は。
松﨑 神戸空港では普段から空の日イベントやジャズライブなどを開催しています。10周年の今年は2月13日・14日の両日に記念イベントが計画されています。エアライン4社それぞれの企画をはじめ、就航先の協力を得ての催し物も予定しています。
―ぜひともPRしたいことは。
松﨑 飛行機は決して運賃が高いわけではありません。アクセスがよい神戸空港なら時間も短縮できます。この二つはぜひ知っていただきたいことです。就航先の地元の皆さんには、神戸空港に降り立てば、大阪、京都、奈良へのアクセスがよいことも、今後積極的に伝えていきたいと思っています。
―神戸空港の今後に期待しています。ありがとうございました。
松﨑 昭(まつざき あきら)
1944年、鹿児島県生まれ。1966年に九州大学工学部を卒業後、川崎車輌株式会社(現川崎重工業株式会社)入社。同社代表取締役副社長を経て、2009年に神戸空港ターミナル株式会社代表取締役社長に就任