2021年
7月号
7月号
特集|最近読んだ一冊|藤澤 正人
なぜ、ネアンデルタール人が滅び、
現生人類、ホモ・サピエンスが生き残ったのか
6000万年前に霊長類が出現して以来、長い年月を経てどうして今、現生人類、ホモ・サピエンスが生き残ってきたかという非常に興味深い内容です。本書によって現在の私たちの存在が、偶然や運に負うところが大きいということを気付かされます。私たちが生き残ったのは、成功の可能性をもった遺伝子が幸運も持ち合わせており、たまたま適切な条件に出会ったり、地球の変化の速度と足並みをそろえることができたからにすぎない、すなわち、運よく偶然、適切な時に適切な場所にいることができたからだと述べています。現生人類の前に30万年も繁栄を極めていたネアンデルタール人がどうして滅びてしまったか。それは、運悪く不適切な時に不適切な場所にいたからだとしています。今日、地球環境が変化し、気候の変動も激しく、我々の行く末もこの運や偶然に左右されるのだろうか考えさせられます。
『そして最後にヒトが残った
ネアンデルタール人と私たちの50万年史』
著 クライブ・フィンレイソン 上原直子訳、 近藤修解説
出版社/白揚社 2,860円(税込)
神戸大学学長
藤澤 正人さん