11月号
「078KOBE」発ヤフー × 神戸のモノづくり|第二弾はKIICHIのフラグメントケース!
片山喜市郎さん STUDIO KIICHI 代表
長井伸晃さん 078KOBE 運営委員
(神戸市企画調整局つなぐラボ 特命係長)
ヤフーの検索ビッグデータをもとに開発された商品が、新しい神戸を発信するイベント「078KOBE」で誕生しています。今、製作されているのは、神戸牛レザーによるフラグメントケース。キャッシュレス化が進み、もうお財布は不要? というこの時代、ビッグデータを使って開発された神戸らしいフラグメントケースとは、どんなアイテムなのでしょうか。
IT×匠のおもしろさ
―検索データを使った商品開発を「078KOBE」でスタートされたきっかけは。
長井 2018年4月にヤフー株式会社と神戸市が連携協定を結びましたが、このことはビッグデータの価値というものを私自身も改めて感じたできごとでした。検索データというのは本当におもしろいもので、これによって趣味趣向のトレンドをつかむことができます。そこで、検索データを使って新しい、神戸らしい価値を生み出せないか、と考えたのがきっかけでした。「078KOBE」というイベントのおもしろさは多分野のかけ合わせなので、ITと他の分野だったら何と組むのがいいかなと考えたときに、客観的なビッグデータというものと匠の技をかけ合わせたらどんな新しいことができるのだろう、という個人的な興味がわきました。昨年の第一回目は、食の分野から、パンの「ケルン」さんとご一緒しまして、『AI特製カレーパン』という商品が誕生しました。二回目の今年は、KIICHIさんにお願いしました。匠の技術をお持ちなのと、神戸牛の皮革を使った商品を開発していることも聞いていましたからね。
片山 お話をいただいたとき、おもしろいなと思ってすぐにお引き受けしました。僕らがものづくりを行う際、これまでは、売り場やバイヤーさんの声を聞いたりはしますが、あとは感覚に頼るしかありませんでした。それを、一般のユーザーがどんなワードを検索しているかわかれば商品開発も変わってきます。例えば、現在ではキャッシュレス化が進んでいるから長財布は消えるんじゃないかな、と思っていたのですが、どうやらそれは正しかったようだとかいうこともわかったり。そういった、我々が肌で感じていたことや、これから来そうなものが可視化されるんですよ。
長井 ビッグデータの価値は、知らなかったことを発見することと、自分が持つ感覚を補強することと、2つありますよね。
片山 今回の製品をフラグメントケースにしたのも、女性がよく検索されている商品だったためです。
―実際どんな商品なのでしょうか。
片山 フラグメントケースというのは、外側に数枚のカードが入り、数枚のお札、小銭が少し入るというコンパクトなものです。デザインにおいて工夫したのは、小銭入れの部分が流動的になっていて、小銭を使わなくなったらカードが入れられるようにした部分です。時代が移り変わっても使えるようにしました。
―カードが数枚…。私なんか何枚もカードを持っているのですが、それも時代遅れなんですね(笑)。
片山 ポイントカードもどんどんスマホに集約されていますからね。財布もだんだんこういう形になっていくんだろうなというのは、我々も考えていきたいなと思います。でもこれも、調べたのはこの事業の時点のものなので、今だったらもっとトレンドが変化しているかもしれません。
長井 片山さんの良いところは、こうしてとりあえずやってみてくださるところ。誰も正解はわからないのですが、でも何か生まれるんじゃないかという期待感があってここまで来ましたね。
検索データをもとにした「神戸カラー」5色
片山 そのようにデザインは決まったのですが、これなら全国どこでやっても同じなので、「神戸」というキーワードを入れることを考え、検索ワードのデータから、神戸という検索ワードから連想、イメージするワードを集めました。建物であったり、風景であったりしましたが、集めたビッグデータをみんなでディスカッションして、そこから神戸をイメージさせるカラーを抽出したんです。神戸のイメージカラーは、グリーンやブルー系が多かったかな、あとはオレンジなども。そのイメージカラーにトレンドのカラーをプラスしたラインナップを集めて弊社のホームページで投票を行い、最終的な5色を発表しました。
長井 ですから今回は全部ビッグデータから算出した商品というわけではないんです。データプラス、人間がディスカッションして、神戸らしさも取り入れたアイテムになっています。
片山 首から下げたり、ななめ掛けできるようなストラップがついて、可愛らしいデザインに仕上げました。商品は、元町の「KIICHI」の店舗の他、ZOZOTOWNで10月から発売中です。あとは「078KOBE」の応援のためのふるさと納税の返礼品としても採用されます。いずれも限定数ですので、お早めに。
―製作中にコロナの流行がありましたから、ご苦労されたのでは。
片山 昨年の12月に関係者の方とお会いして、それ以降は全部オンラインでの会議でしたからね…。微妙な色味とか、質感などをオンラインで話し合うのは非常に難しかったです。
―片山さんの工房では、神戸牛の皮革「神戸レザー」を使った商品を数々手がけていますが、神戸牛の革はこういった細かい商品にも向いていますか?
片山 どちらかといえばこういう細かいものの方が向いていますね。神戸牛は個体があまり大きくないので、大きな皮革製品が作れないこともありますし。
―連携協定を結んでいるヤフーの検索データですが、今後、行政としてはどのような分野で活かされますか?
長井 市の職員向けの研修として、ビッグデータの活用法を学ぶデータアカデミーを開催しており、その他にも都心・三宮の再整備の効果の可視化に活かそうとヤフーの方々とともに取り組んでいます。神戸全体のまちや経済の活性化に不可欠な施策として都心三宮の再整備に取り組んでおり、新神戸から三宮、元町、神戸~ハーバーランドまでを対象としております。都心で一日過ごしていただくためには、居心地の良いまちづくりが必要ですが、この「居心地の良さ」というのはあくまで主観です。それを客観的なデータでどう立証するかとなったときに、人々の滞在時間の長さの検証が必要になってくる。そこで、ヤフーが持つ位置情報のビッグデータを活用するのです。ヤフーが提供するアプリからの位置情報ですね。あとは関西電力と連携して、人々が街の中でどう動いているか、時間帯によっての人の流れの分析などもしました。今後、人中心のまちづくりの実現に向け、これらのデータを活用していきます。
―客観的なビッグデータを使った、人中心のまちづくりが、楽しみですね。
■STUDIO KIICHI
神戸市中央区元町通6-7-3
TEL.078-381-6786
11:00〜19:00
定休日 水曜日
https://studiokiichi.com/