2020年
11月号

コロナを南京町にとって〝良い試練〟と捉え、今できることを考える|<鼎談>岩田 弘三さん・安藤 忠雄さん・曹 英生さん

カテゴリ:神戸, 観光

(写真右より)
南京町春節祭実行委員長
株式会社ロック・フィールド 代表取締役会長
岩田 弘三 さん

建築家
安藤 忠雄 さん

老祥記代表取締役
南京町商店街振興組合理事長
曹 英生 さん


司会
神戸フィルムオフィス 代表
松下 麻理 さん

例年多くの人で賑わう南京町の中秋節ですが、コロナ禍の今年はいつもとちょっと違う集いを開催。
曹英生さんが岩田弘三さんと安藤忠雄さんをお招きし、食やお祭りのこと、この試練をどう乗り越えていくのかなど話し合い、YouTube公式チャンネル「神戸・南京町」で発信しました。

おうちで体験。アカデミックな南京町の中秋節

―神戸で長年食に関わるお二人と安藤先生という異色の顔合わせですね。岩田さんと安藤先生お二人と南京町の関わりは。

 本来、中秋節にはたくさんのお客さんに南京町へ来ていただき龍舞や獅子舞、食も体験していただくはずなのですが、コロナ禍の今は無理です。そこで南京町から今までとはちょっと違うアカデミックな発信をして皆さんにおうちで見ていただきたいと、岩田会長、安藤先生にお越しいただきました。

岩田 すごいプレッシャーですね。私は南京町で育ち、曹さんのおばあちゃんには本当に可愛がっていただきました。中学生のころ、豚饅頭をたくさん食べさせていただいて以来、曹家の大ファンです。

 岩田さんが若くして料理の道に入ったのも、うちのおばあちゃんのせいなんです。朝まで徹夜マージャンをするおばあちゃんの部屋の音がうるさくて、隣にいた岩田さんは勉強に身が入らなかったとか。勉強ができていたら、違った道で大成していたと思いますよ。

岩田 それはないと思いますが(笑)、私がまだ二十五、六歳のころ始めたレストランへ、曹さんがお父さんとハンバーガーを食べに来てくれていましたね。

 岩田さんが自ら作られるハンバーガーが史上最高に美味しいと私は思っています。岩田さんがコック服を着て作ってくれていたんです、カッコ良かったですよ。

岩田 自分で作らないと仕方なかっただけです(笑)。今は曹さんが南京町のために頑張っておられます。私も老祥記・曹家の〝一ファン〟として応援したいと思い、今日は参加させていただきました。

安藤 私は普段から南京町はウロウロしています。横浜の中華街と比べても、神戸の南京町はちょうどいい大きさでお客さんが愛着を持てるのでしょうね。今回は、40数年近くの付き合いがあり、社屋も造らせてもらっている岩田さんから連絡があって「断るわけにはいかんな。なんの話かな?」と思いながら来ました(笑)。

食には作って食べるプロセスと、会話のプロセスがある

―毎年恒例の中秋節のお祭りができないのはやはり寂しいですね。

 獅子舞や龍舞などの伝統芸能を発表する場がない。晴れの舞台があってこそ日々の練習に励めるものです。こんな状態が続いてしまうと、伝統的な良い文化がなくなってしまうという危機感を持っています。「祭りは子どもを大人にして、大人を子どもにする」といわれています。動画配信などいろいろなチャレンジはしていますが、やはりそういう現実の祭りの場を早く取り戻したいという気持ちは正直あります。

安藤 今は何でもリモートで、私も海外にも行けませんから仕事はリモート、大学でもリモートで講演会をしました。どうにも味気ない。リモートでは人間は育ちません。例えば、大学に通う目的はもちろん勉強ですが、生涯の友人を作ることにも意味があります。集まって食事に行き、食べて会話をしながら考える。食を通して文化を学ぶ。ところが今はできるだけ一人で食事をしなさいという。これは人類にとって大変な事態です。便利で合理的で経済的、それだけでいいわけがなく、人間の生活はそれ以上のものがなければ成り立たない。食べることにも楽しさや感動がなければならない。

 いずれコロナが収束したとき、食を本来の形に早く戻すことを考えなくてはいけませんね。日本人は潔癖で反省しすぎるところがあります。それは良いことなのですが、そのせいでコロナ禍が過ぎてもこの状態が継続する可能性があります。少しラテン系のマインドを持つこともいいのかなと思いますね。

安藤 経済も回さないといかん。私の事務所は梅田にあるのでスタッフには外へ出て食事をするように勧めています。ところが彼らはいつも一人で出ていく。特にコンピューターとずっと向き合っているスタッフは人とは喋りたくないみたいで…食には作るプロセス、食べるプロセスがあって、そこには会話のプロセスが本来あるはずなんです。食事は、大切なコミュニケーションの場でもあります。

岩田 日本の食はどうあるべきかをずっと考えてきました。野菜を大事にして健康に寄与する、日本の食材を上手に使いながら、日本人の健康と安全を育てたい。働く人たちにも健康で食について考えてもらいたいと従業員食堂は充実させています。ゆっくり時間をかけて、噛みしめながら食事をすることが一番大切ですから。

厄介な問題〝コロナ〟を気力・体力・知力で乗り切る

―南京町もコロナで大きな打撃を受けていますね。どう乗り切ればいいのでしょうか。

 緊急事態宣言下ではお客さんも売り上げも9割減でした。少し戻りつつある今が勝負どころです。それまでは国内、海外からたくさんの観光客に来ていただき「置いておけば何でも売れる」というような状況が続き、店にとっては良い時代だったかもしれませんが、将来を考えると絶対に良くなかったのだと思います。なんでもかんでも売れる時代は去りました。コロナを南京町にとっての〝良い試練〟と捉え、これをきっかけに変わっていかなくてはいけません。美味しいものをきちんと計画的に作り、無駄にしたり捨てたりしない。そういう配慮が商売をする人間にとって必要になってくるでしょうね。コロナで失うものは大きいけれど、乗り切った先にあるものは大きいと思っています。

安藤 中国でも「食べ残さない」と言い始めています。77億人を超える世界の人口のうち14億人ほどいる中国の人たちも丁寧に食べることが美味しいと考えなくては、地球上の食が危うくなります。もちろん日本も同じです。捨てる量がすごく多く、その食材をどこから求めているかといえば、結構外国からが多い。そこで大切になるのが「食育」です。昔から岩田さんが言っておられる「商品の量を2割減らして、最後までちゃんと食べるようにしないといかん」。これは正しいと思いますね。

岩田 食が担う社会貢献は多々あり、新しい時代の食の提案をしていかなくてはいけないと考えていますが、コロナの時代にどうするのか?何が必要なのか?これは難しい問題です。

安藤 突然起きたコロナという厄介な問題を一人一人が乗り越えていかざるを得ないのだけど、気力がなければ乗り越えられないでしょうね。必要なのは“知的体力”と“肉体的体力”。今の日本で一番足りないのは子どもたちの力です。「1聞いて10を知る」という言葉がありますが、今の子どもは、1聞いて0.5やったら上出来、それ以上はやらない。親が子どもを怖がり過ぎる。可愛がるだけではダメ、生きる力を教えないといけません。

一つ一つの店が競い合いながら助け合ってこそ、南京町

―新しい試みなどお聞かせください。

 「隣の街は元気だから自分たちも負けずに頑張ろう」という競争原理は必要です。自ら動いてどんどん発信していかなくてはいけません。そこで10月から、私が南京町の店を順に歩く「曹さんぽ」をYouTubeで配信します。各店の名物料理を食べて紹介し、お客さん目線で感想を言い、万が一、美味しくなければ、どうしたらいいかを一緒に考える。お酒が進んだりすると何を言い出すか分からない、ちょっと危ない?ちょっと変な?コーナーを始めます。もちろん来年の春節祭や中秋節は広場でみんなに楽しんでもらうのはゴールですし、それができる世の中になってほしいけれど、もしできなくても、コロナ禍でのこういったチャレンジの良い部分は残したいと思っています。

安藤 日本は清潔で美しい国、礼儀正しい国民性で、外国からの観光客が一番行ってみたい国だそうです。飲食は清潔第一、コロナが収束すれば観光立国日本にお客さんが戻ってくるときがきっときます。そこに60年代のようなエネルギッシュなおじさんたちがいないのが心配の種、曹さんには頑張ってもらわないと(笑)。

―これからの南京町についてメッセージをお願いします。

岩田 私は曹さんのおばあさんに育てていただき、お父さんとは良い飲み友達でした。これからの南京町のためにできるだけのことをしたい。それがご恩返しになると思っています。

安藤 店が集まってこそ「南京町」。一つずつの店が競い合いながら、助け合う。これしかない。「南京町へ行ったらなんか気持ちいいな」と言ってもらえたら、京都や大阪のお客さんにも来てもらえます。

 第1回目の春節祭で、みんなで龍を作ったあの時の団結力はすごくて、結果27万人のお客さんに来ていただきました。それからみんながやる気になって、街が右肩上がりに発展しました。あの時の感動を忘れないことが大切ということですね。今後とも先輩お二人からのアドバイスをよろしくお願いいたします。

南京町春節祭実行委員長
株式会社ロック・フィールド
代表取締役会長 
岩田 弘三さん

建築家
安藤 忠雄さん

老祥記代表取締役
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曹 英生さん

司会
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松下 麻理さん
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