9月号
ファッション都市・神戸の未来を語る
お洒落・ファッション, 神戸, 行政関係
『べっぴん』を発信していきたい!
7月21日、神戸ファッション美術館オルビスホールにてシンポジウム「ファッション都市・神戸の未来」が開催された。神戸が全国に先駆けて「ファッション都市宣言」を1973年におこなってからもうすぐ50年を迎える現在、取り巻く環境の変化の中で、ファッション都市としての神戸のあり方を再検討するとともに、未来と可能性を多角的に討論する場となった。
第1部ではアジアン・ヨーロピアン・コンサルティング・カンパニー社長の齋藤統氏を招聘して「ファッション都市・神戸の可能性」をテーマにおこなわれた。齋藤氏はパリを拠点に活動、ヨウジヤマモトやイッセイミヤケなど日本人有名デザイナーの海外進出に尽力した人物で、今年で第43回を迎える神戸ファッションコンテストの審査委員長を担当しているファッションのスペシャリストだ。
「神戸がファッション都市宣言をおこなった1973年は私が渡仏した年であるとともに、フランスではパリコレのプレタポルテ部門がスタートしてファッションの大きな転換期になった年でもあります。これも何かの因果でしょうか」と齋藤氏。
神戸ファッションコンテストの特典で海外へ留学した過去の入賞者たちの活躍ぶりを紹介し、彼らの秘めたる可能性について語った。また、世界の人々にとって神戸は日本の都市の中で3本の指に入る有名な都市だが、具体的なイメージがないと指摘。ファッションについても「多角的かつアカデミックな視座が必要」と訴えた。一方でフランスと同じく神戸は文化に熱い街であるとともに、地形的にも南仏に近く交通も便利なので、イベントなどによる文化発信には絶好、神戸ファッション美術館など得難い財産もあるので、それらを生かして日本を巻き込んでいくべしと述べた。
第2部ではパネルディスカッションがおこなわれ、齋藤氏に加え久元喜造神戸市長、齊木崇人神戸芸術工科大学学長、渡邊百合(株)マキシン社長がパネラーとして登壇し、百々徹京都造形芸術大学准教授の司会進行でおこなわれた。齊木氏は芸工大の概要や、議長を務める「デザイン都市・神戸」創造会議での議論と展開を紹介。未来の鍵は人づくりとそれぞれを繋ぐコーディネート力にあると力説した。老舗帽子店、マキシン社長の渡邊氏は、神戸はものづくりが充実し、喜びと誇りをもって仕事ができる街だと賞賛。改めて神戸の良さを見つめ直し、憧れの街・神戸にふさわしい自覚と責任をもつべきだと提言。
久元市長は、「ファッションは生活文化全体であるという原点に戻って差別化を図り、FastやEasyと対極の価値を創り上げるとともに、可能性を形にし、発信する努力も必要。今年のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の舞台は神戸だが、これを機に神戸の『べっぴん=別品(良い物)』を発信していきたい」と語った。齋藤氏はよりクオリティを高め、スローで上質なものを神戸と感覚が似ているフランスに発信することもひとつのアイデアと語り、今後も神戸とヨーロッパを繋ぐ架け橋として尽力したいと抱負を述べた。
多くの聴衆が駆けつけ熱心に耳を傾けていたが、そのほとんどが神戸の海をイメージしたブルーのアイテムを身につけ、会場を彩った。