11月号
神戸の街並を見て、 復興への希望を感じてもらえれば
伊東 博美さん
世界陸上アテネ大会・女子マラソン金メダリスト
神戸マラソンの開催が近づくにつれて、ランニングしている人の姿が増えてきましたね。私が住んでいる北区でもよく見かけるようになりました。私もクオーターマラソンに参加させてもらうのですが、現役の時とは違って今は毎日走っているわけではありません。現役の頃は毎日40㎞以上走っていましたし、金メダルを獲った世界陸上の頃は本当によく練習していましたが、実はあまり練習は好きではなかったんです(笑)。あの頃は辛い練習を経て、目標タイムをクリアすることが一番の喜びでした。
今は少し違ってきて、走っている時に声をかけていただいたり、出会った人たちと会話することなどが楽しいですね。今回も特に目標タイムなどは設定せずに、みなさんと一緒にゆっくり楽しもうと思っています。
今回のコースはアップダウンはあまりありませんが、後半にコース最大の難所である急な坂道が待っていますよね(笑)。マラソンでは35㎞からが本当に辛いのですが、その辺りにちょうど大きな坂がありますから、みなさん苦しまれるのではないでしょうか。あと海沿いのコースが多いので、風対策も考えておいた方が良いかも知れません。マラソンでは雨よりも風の方が影響を受けやすいのです。集団の中に入るとか、状況に応じた判断が必要になります。天候だけは当日までわかりませんから、いろいろなことを想定しておいた方がいいと思います。その上で無理をせずに、目標に向かって楽しんで走れれば良いですね。
神戸マラソンのように海と山の両方を見ながら走れるコースは、世界でも少ないと思います。走ることそのものだけではなく、景観も一緒に楽しんでほしいですね。被災地の東北からも多くのランナーが参加しますが、同じ被災地として復興した神戸の街並を見て、復興への希望を感じてもらえればいいな思います。1回目だけではなく、これからも多くの人が神戸に足を運ぶきっかけになるような大会になればと思います。
伊東 博美(いとう ひろみ)
旧姓は鈴木博美。1992年バルセロナオリンピックと1996年アトランタオリンピックは女子10000m代表として出場。1997年の世界陸上選手権アテネ大会女子マラソンでは金メダルを獲得。夫は男子100m現日本記録保持者で、現在・甲南大学准教授の伊東浩司氏