4月号
海外のスポーツ文化を伝えつづけて150年
一般社団法人 神戸レガッタ&アスレチック倶楽部 会長 三木谷 研一 さん
開港直後の1970年に神戸に設立された外国人会員によるスポーツクラブ「神戸レガッタ&アスレチック倶楽部(KR&AC)」は、今年150周年を迎える。現在会長を務めるのは、楽天ヴィッセル神戸㈱副会長の三木谷研一さん。現在、KR&ACは日本人も入会が可能で、レストランが開放され、テニスアカデミーの活動も盛んだという。
サッカー、戦争、震災… 歴史が残るクラブ
―KR&ACは、今年創立150年を迎えるということですが。
1870(明治3)年9月の創立だそうですから、今年150周年になります。会の創設者は、スコットランド出身の薬剤師、A・C・シムさん。シム商会を設立し、日本初のラムネを販売したことで有名な方です。六甲山を開発したA・H・グルームさんも創設メンバーの一人です。KR&ACが設立されたばかりの頃は、レガッタというボート競技やラグビーなど、激しいスポーツが中心に行われていたので、会員の方々は年をとられると退会してしまう。そこでグルームさんは、会員を引き留めるためにゴルフをやろうと、六甲山に目をつけたという話も聞いています(笑)。同じく開港都市である横浜には横浜カントリー&アスレチッククラブ(YC&AC)があって、KR&ACと行ったサッカーの対抗戦が、日本で最初のサッカーの試合だというふうにも言われています。今年の天皇杯はヴィッセル神戸が優勝しましたが、サッカーとのつながりは非常に深いわけですね。
―趣きのあるクラブハウスも素敵ですね。
KR&ACの建物は、以前は東遊園地にあって、初代の兵庫県知事の伊藤博文と土地の契約書を交わしています。外国人のクラブということで、第二次世界大戦中は三国同盟を結んでいたドイツかイタリアの方を会長に立てていたそうなのですが、戦後は逆にそれがGHQに敵視される原因になった、ということもあったようです。結局、戦後、東遊園地には神戸市役所がつくられるということでKR&ACは移設されることになり、1962年に現在の磯上公園に移ってきたそうです。実はこの建物は、僕と同い年なんですよね。だから「古くなってきたね」とか「新しくした方がいいのでは」と言われると、なんだか悲しい(笑)。阪神・淡路大震災の際には、市役所が使えなくなってしまったので、KR&ACの建物を市にお貸しして、この2階で罹災証明書を発行されていたということもありました。
―三木谷さんご自身が会員になられたのは?
かつては、日本人は会員になれず、準会員という立場だったんです。2006年頃に僕も入会したときはそうでした。その後、一般社団法人化されてからは日本人も会員になれて、役員にもなれるようになりました。時代の流れもありますしね、5年前に理事になってからは、まずレストランに良いシェフに来てもらうことから始まって、建物も補修が必要なところがたくさんありましたし…。今後は日本の方にも気軽に来ていただけるような場所にしたいと思います。僕も久しぶりにテニスでもしようかと思っています。
地元の方にもっと親しんでほしい
―プレジデント(会長)になられてから、どんな取り組みを?
創設者のシムさんのことを考えたりすると、「頑張ってくれ」って言われているような気がしています。僕は、KR&ACがもっと市民に近い存在にならなければいけないと思っています。これまでは敷居が高いイメージでしたけれども、決してそうではないと。レストランは一般の方にもご利用いただけて、週替わりのランチコースをご用意しており、雰囲気のある建物の中でゆっくりお召し上がりいただけますよ。また、一般の方や、地元企業の方のご意見をうかがいたいということで、顧問という制度を作りました。30数名の方に顧問をお願いしたのですが、三木谷浩史をはじめ、アシックスの尾山基会長、オリバーソースの道満雅彦社長、田嶋の伊藤紀美子社長など、皆さん快くお引き受けいただきました。伝統のあるKR&ACですから、神戸の皆さんはそれぞれに思い入れや、昔ここで食事をしたといった思い出などがおありのようですね。
―現在は、どんなスポーツクラブがありますか。
現在は、特にテニスアカデミーがさかんで、子ども向けと大人向けの教室がありメンバーも増えています。他には、サッカー、ゴルフなどのサークルがあり、意外なところでは抜刀道(居合)の教室もあります。会員に師範の方がいらして、外国人会員と2人でされています。英会話のレッスンをされている会員もいます。施設の中には、ダンススペースやビリヤード場もあります。会員、非会員にかかわらず、気軽に施設をご利用いただきたいと思っておりますし、ぜひご入会もいただきたいと思います。施設やレストランの利用などには、会員の方への割引制度があります。
―150周年の節目には何か計画がおありですか。
創立記念日の9月23日に向けてイベントや記念誌の発行などを企画しています。特に、創設者のA・C・シムさんの足跡を辿ろうと、子孫の方を探しています。設立当初のメンバーでもあるグルームさんの子孫につながる方がおられて、こちらの顧問にもなっていただいているんです。あとは、歴史ツアーや貴重な写真を集めた写真展などもできるかもしれませんが、現在、委員会を立ち上げて計画を練っている最中です。
―海外のスポーツ文化を日本に広めた聖地でもあります。神戸市民としましても大切にしていきたいですね。
三木谷 研一(みきたに けんいち)
神戸市灘区生まれ。1985年東京大学農学部卒業。87年同大学修士課程修了。95年東京大学農学博士。楽天ヴィッセル神戸株式会社取締役副会長。日本健康体力栄養学会理事。健康食品管理士会近畿支部顧問。公益財団法人山崎本多藩記念館代表理事。兵庫県サッカー協会副会長。ヴィッセル神戸サッカースクールやアカデミーの運営にも携わっている。
神戸レガッタ&アスレチック倶楽部
神戸市中央区八幡通2-1-20
TEL.078-231-2271
レストラン
営業 11:30~18:00
ランチ 11:30~14:30
定休日 月曜
http://www.krac.org/
駐車場入り口にチェーンがかかっている場合は
インターホンで呼び出ししてください