2020年
4月号

レスキューボートを開発し 命を救う手助けを -株式会社 朔玄羽

カテゴリ:神戸, 経済人

水害や津波を見据え

「Boys, be ambitious」
クラーク博士がそう言ったのは1877年のこと。でも一説によると、そのあとに「like this old man」というフレーズがあったそうだ。つまり、元気なシニアは少年よりも野心的だったのだろう。
そんな風潮は、2020年を迎えたいまも変わらないようだ。朔玄羽代表の土肥次郎さんは70歳代。神戸市西区、玉津インターから東へ分け入った丘に工場、事務所があり、敷地内には「古墳」「竹林」があるような長閑な場所で、レスキューボートを開発している。
台風や集中豪雨による水害の激甚化が著しく、南海トラフ地震による津波発生も緊迫化している昨今、被災地で実用的なボートの必要性はますます高まっている。一方で浸水エリアをゴムボートが進む映像はニュースでよく見かけるが、実は投入ゴムボートの2割ほどはガラスなどの欠片で破裂しているという。また、船外機で進むボートはスクリューが漂流物を巻き込むだけでなく、ある程度の水深がないと使えない。
また、ウォータージェット推進装置では「砂礫」を吸い込んで不具合が発生する場合があり、そこで、土肥さんはとある行政機関から内々の打診を受けて、プロペラで推進するスタイルのレスキューボートの開発依頼があり、開発に着手した。ヒントにしたのはアメリカの湿地帯で稼働のエアボートであったが、これは主に湖沼でのレジャー用。平底で波に弱く、高速は得意だが低速が苦手ということが分かった。
ならば自身の手で新たなボートをと考えた土肥さんは、旧知の仲でありビジネスパートナーでかつてラリーをやっていた出端吉章さん、大手建設機械メーカーでキャリアを積んできた砂河利文さんを招聘し起業。土肥さんが全体の設計、出端さんが駆動系、骨格のチューニング、砂河さんが材料調達と営業に奔走。結束固い三銃士はみな年金をもらって悠々過ごせるお年頃だが、マグロのように進み続けバリバリ仕事をしている。

生産しやすく実用的

小さな試作機を経て、完成した初号機、DD18型は全長約5m、全幅約2mの8人乗り。結構大きいが、なんと重量が480㎏と15人もいれば人力で担げるので被災地で取り扱いやすい。
船体はヨーロッパの複数国の特殊部隊も使用するものでオランダ製。素材はポリエチレン。当初硬質ウレタン注入ゴムボートも考えたが、1級環境管理士でもある土肥さんは「廃棄時の環境負荷が高い」とのことでそれを断念した。完成した艇は吃水30㎝以下、かつ、そのまま陸上へも上がれる。600㏄エンジンは60馬力でありながらわずか30重量㎏の飛行機用エンジンを転用。大きなプロペラは回転速度を自在に調整でき、数㎞/hから45㎞/hまで(船舶検査の制度のために制御している)幅広い速度で航行可能だ。わずか10ヶ月の開発機関で、ゼロからこれだけのボートを完成させたのは驚きだ。
災害救助用として行政や医師会などから期待されているが、河川でのクルーズ、釣り船などにも応用でき、大きな可能性を秘めている。
作業場は驚くほど簡素で、㈲基礎工業の河野禎靖さんが、旋盤や万力などそのへんの町工場にある機材を使って、素材もふつうのホームセンターで見かけるものばかり。限られた材料と道具でも、知識とアイデアがあれば実用的なものを生み出せる。
「設計を工夫し特別な設備は不要なので、町工場でも製作可能です。希望する企業があれば協議し必要となれば図面を提供し、あとはお好きなだけ作っていくらで売っていただいても結構です」と土肥さん。そしてこう続ける。「我々は利益追求より社会貢献を目指しているので」。

人のために尽くす

長年経営者として活動した土肥さんは、母校、村野工業高校の創立者、村野山人の遺訓「人は人のために尽くすをもって本分とすべし」を座右の銘とし、南米ボリビア国へ生活環境改善支援や技術援助をおこなうNPOも立ち上げている。
レスキューボート開発も愛する神戸のため。「津波が来ると東灘あたりでは国道2号線まで浸水する可能性があります。阪神・淡路大震災から25年経って防災意識が薄れていますが、来るべき災害に備えないといけないのです」と自らの使命を噛みしめ、神戸から発信することにもこだわる。
しかし、自分たちはボートのプロではない。ところが「素人は〝何も知らないので教えてほしい〟と言えるから強い。DD18型はプロじゃないからこそできたボートなのかもしれませんね」と土肥さん。時には近所のバイク屋さんにエンジンのことを訊ね、時には金属のプロにアルミ加工の指南を受けた。さらに接着剤メーカーのサポートを得て、出端さんの社長の会社の職人さんにも作業を請け負ってもらったそうだ。多方面から協力を得られたのは、人としての魅力があってこそ。素人とはまさに素直な人、素敵な人である。
「一人では無理。気心知れた2人の仲間がいたから」と語る土肥さんは、ものづくりをしたいという長年の夢を叶え、いまがとても楽しいという。すでに次のモデルに向け動き出し、砂河さん出端さん2名は船艇の模索でフィンランドへ飛ぶ。羽をもち人々を救うエンジェルなボートは、アンビシャスなシニアたちの夢を乗せて出航したばかりだ。
土肥さんたちのスローガンは、「県土は県民の一人ひとりが守る」。そのために、多くの企業が県、市、関係行政と「災害時出動契約」を締結することを願っている。最後に土肥さんは、「災害は忘れたころに必ずやって来ます」と断言した。

エンジンは航空用で30㎏と軽量

朔玄羽が開発したレスキューボートDD18型

「DD18型はプロじゃないから作ることができた」と朔玄羽・土肥次郎社長

右から砂河さん、土肥さん、出端さん。3人で力を合わせてDD18型を完成させた

マグロ釣りのリールも使用

素材はホームセンターなどでそろえた

東二見港で試験走航を行った

株式会社朔玄羽

TEL 078-940-8742

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