2012年
7月号
7月号
関西の地球人
神戸華僑の心を伝える
神戸生まれ神戸育ちの神戸っ子。父が台湾から移住した、華僑二世であるものの、神戸中華同文学校での「この日本で中国人代表として生きていかなければならない」という民族教育は、強くその精神に刻まれている。教育熱心だった両親の「日本の大学に行かせたい」という願いで、5年生から諏訪山小学校(当時)に転校した。大学を卒業後はメッキ会社に就職、時代は高度経済成長期で、休む間もほとんどなかった。数回の転職を経て働きづめの毎日に母の介護なども重なり、体調を崩して退職。王柏林前館長から「神戸華僑歴史博物館を手伝ってくれないか」と声がかかったのは、そのころだった。
それからは「神戸華僑の心を伝えるために」ボランティアすることに。いわばそれまでは日本社会の中で日本人として生きてきたが、華僑社会へ戻ることにより、中華同文学校で学んだ「華僑精神」のアイデンティティを思い出したという。歴史を猛勉強し、博物館に見学に来た人には展示物を見てもらうだけでなく、わかりやすい説明を心がけ、博物館の広報活動にも奔走。
また、神戸に移り住んだ華僑たちの「ライフヒストリー」を聞き書きし、本にまとめる研究会にも参加。「華僑の家に生まれてきた私には、異国の地に移住して大変な苦労をしながら生きてきた、ごく普通の華僑の体験を伝えていく役目がある」。博物館が日本と中国の「心の架け橋」となるよう、残りの人生はそれに尽くしたいと話す。
林 正茂さん
(華僑二世/神戸華僑歴史博物館副館長)