2012年
7月号
2月14日、「バレンタインデー」を日本に広めたことでも知られているモロゾフ(株)。 モロゾフのチョコレートは、ここ西神工場で製造されている

もっと知りたい西神インダストリアルパーク 第3回

カテゴリ:スイーツ・パン, 神戸

モロゾフ株式会社

カカオの豊かな香りを

1931年、トアロードのチョコレートショップからスタートしたモロゾフは、以来80年以上、本当の美味しさを追求し続けている。伝統を守りながら新しいことにも挑戦するモロゾフの西神工場を訪ねた。

―神戸・西神工場ではモロゾフのどのような商品を生産しているのですか。
中村 第一工場では当社のほとんどのチョコレートを製造しています。昨年は、年間の製造個数が2億個(粒)を超えました。できあがった一粒ひとつぶを、他の工場でパッケージして全国へ配送しています。
―モロゾフはプリンも有名ですが。
中村 皆さんが、チョコレート以外のモロゾフ商品で思い浮かべるのはプリンやチーズケーキだと思います。日持ちのしない洋生菓子は地域ごとに分散している全国の4工場で製造しています。関西圏については六甲アイランド工場で製造しています。プリンにつきましてはおかげさまで最近テレビで紹介され、あらためてご好評頂いています。西神工場では、チョコレート以外にも夏季商品のファンシーデザートを第一工場で、ロングセラーのアルカディアなどのクッキー類は1983年に竣工した第二工場で製造しています。
―最新の設備を備えた第一工場が完成したのはいつですか。
中村 2009年10月に建物は竣工しました。老朽化した東灘区御影のチョコレート工場から徐々に設備等を移設し、2010年2月から本格稼働しました。
―ご自慢の最新設備は?
中村 チョコレート製造の最新ラインです。当社のチョコレートの中ではバレンタインチョコレートが大きなウェイトを占めます。ファッション性があり、毎年お客様の嗜好も変化します。他社メーカーより一歩先を行く商品をお届けしたいと思っています。そのために、少量多品種、ひと手間かけたチョコレートを柔軟に製造できるラインを構築しました。バレンタインチョコレートは秋・冬から作り始めていたのでは間に合いません。この時期から順次作り始めています。
―原料の配合からすべてこの工場ですか。
中村 当社のレシピに合わせた原料チョコレートを日本チョコレート工業協同組合から仕入れ、その後コンチングというチョコレートをより滑らかにする工程を西神工場で加えたものが当社のチョコレートのベースとなります。
―こだわりもあるのでしょうね。
中村 お客様に本当の美味しさを伝えていくのは、私たち食品会社の使命ですから、本当のチョコレートの美味しさにこだわっています。味についてのこだわりは、企業秘密でご勘弁ください。
 製造過程については、温度管理に非常にこだわっています。チョコレートは非常にデリケートな商品ですので、微妙な温度変化によって美味しくなったり、逆に口溶けが悪くなったりします。チョコレートに含まれるココアバターの結晶を安定化させるための温度管理「テンパリング」が重要で、これがうまくできないと、口溶けが悪くなったり、ツヤがないチョコレートができたりします。わずかな設定温度の違いが品質に大きな影響を与えてしまうケースもあります。全てのプロセスで温度管理に気を遣い、チョコレートの美味しさを最大限に引き出すため、常に試行錯誤を重ねながら製造しています。
―全ての課程が機械化されているのですか。
中村 機械の力を借りながらですが、最終的には作業者の視覚、嗅覚、味覚、そして経験がものを言います。品質保証グループの指導を受け、様々な段階で官能検査を行い、当社の基準に適合しているかを確認しながら、出荷しています。
―安心・安全対策も力を入れてるのでしょうね。
中村 食品工場として食の安心安全を第一に考えています。お客様の信頼を最も損ねるのは異物混入です。そのリスクを減らすために、第一工場では、原材料の荷受けはドッグシェルターを設け外気を遮断しています。人間だけでなく、荷物専用のエアシャワーも設置しています。また、ダンボールに入った原材料は出来るだけ製造エリア区域外で開梱し、紙粉が入らないようにプラスチック容器に移し替えたり、チョコレートを送る配管内にはフィルターと磁石を設けて異物を除去したり…、そのほかにもいろいろな対策を講じています。
―これからの西神工場について。
中村 市場競争が激化する菓子業界で、当社が成長し続けるために西神工場で何ができるのかを考えたとき、一番大切なのはお客様の声を聞くことだと思います。お客様の期待に応えられる製品を必要なときに必要なだけ製造することが非常に大事ではないかと思っています。その期待に応えるには、工場で働く約240名の仲間の力、いわゆる現場力が必要不可欠で、その力を最大限に発揮できるようにするのが私たち管理職の役目だと思っています。
 西神工場が当社の中でも一番の工場を目指すことで、お客様に適正価格で美味しい商品をお届けし続けたいと思っています。
―80年以上続くのれんを守りながら、新しいことにも挑戦してくだい。楽しみにしています。

2月14日、「バレンタインデー」を日本に広めたことでも知られているモロゾフ(株)。 モロゾフのチョコレートは、ここ西神工場で製造されている


2009年10月に西神工場と御影工場を統合することで完成した新工場


爽快感あふれる果実の味わいが楽しめる「凍らせてシャーベット」


果実本来の風味を生かした、涼感たっぷりのゼリー「ファンシーデザート」


コンチェ室では、チョコレートの塊(画像右下)を溶かしながら、よりなめらかに仕上げる


まろやかなキャラメルクリームをチョコレートに加えて


成形されたチョコレートにアーモンドをトッピング。仕上げは手作業で1つ1つ丁寧に


最新の設備により品質を管理


最後は特殊な工程を経て文字を印刷


職人魂のこもった手作り商品も。ラズベリーゼリーとホワイトガナッシュをチョコレートでコーティング。さわやかな夏にピッタリの味わい(店舗・夏季 限定商品)


夏の定番、「ファンシーデザート」(ゼリー)は、1日約9万個を製造。オレンジ、ピーチ、マンゴー、アップル、グレープの5種類を1日ずつ5日のサイクルで製造する


モロゾフ株式会社 生産本部 西神工場長 中村 竜也さん

1964年生まれ。1988年専修大学経済学部卒業。同年、モロゾフ株式会社入社名古屋支店販売課。1997年現マーケティングセンター商品企画担当。2006年西神工場(現第2工場)製造課長。2010年2月西神工場長就任、現在に至る。

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