1月号
縁の下の力持ち 第7回 神戸大学医学部附属病院 集中治療部
神戸大学医学部附属病院
救急集中治療センター 副センター長
集中治療部 副部長
三住 拓誉さん
「元気に退院されました」この報告が一番嬉しい
大手術の後や重篤な症状に陥ったときお世話になるのが集中治療部。
麻酔科医が中心になってチームを組み懸命に治療に当たっています。
―あまり耳にすることがないのですが、集中治療部はどこで、どういった患者さんの治療をしているのですか。
私が副センター長を務めている救急集中治療センターにはICU20床とHCU12床があり、ここでは救急部、集中治療部、冠動脈疾患部が患者さんの治療に当たっています。集中治療部は専門医が中心になり、医師、看護師、研修医などがチームを組みます。主に術後の重症患者さんと病棟で重症化した患者さんを受け入れ24時間体制で見守り、最適な治療をしながら回復に向かわせるのが役割です。
―麻酔科の専門医もおられるのですね。
集中治療部は麻酔科の延長上にあり、私も麻酔科医であり集中治療の専門医です。若いスタッフは、手術中の麻酔、術後の集中治療、ペインクリニック全てを経験しながら研修しています。
―手術後は必ず集中治療部でお世話になるのですか。
必ずというわけではなく、特別な問題がない患者さんは病棟に戻って術後を過ごします。臓器移植や心臓疾患など大きな手術や、元々合併症を持った患者さんなどは術後、集中治療部で診ることになります。主治医、関連する専門医、看護師ほかスタッフが集まりカンファレンスを行いディスカッションしながら治療方針を決定します。
―病棟からの患者さんはどういう症状なのですか。
最も多いのが、菌が体中に回ってしまう敗血症、そして呼吸不全の患者さんです。時には近隣の病院では治療できない患者さんも受け入れ、土日も含め毎朝、主治医、専門の先生も交えて回診をして、その日の治療方針を決定します。中でも敗血症については、感染症内科の先生とも協力し、投薬などのアドバイスを頂いています。
―患者さんは最も苦しい時なので、あまり覚えていてもらえない存在ですね。
一般病棟に戻られてから訪ねる機会があっても、大概忘れられていますね(笑)。退院も直接見届けるわけではないのですが、主治医から「元気になって退院されました。ありがとうございました」と報告を受けるときが一番嬉しく、やりがいを感じています。
―医師を志し、麻酔科医の道に進み、集中治療を専門にされたのはなぜですか。
大学進学にあたってせっかくだから手に職を付けられる学部へ行こうと医学部へ。医学部ではせっかくいろいろな診療科の勉強をするのだから全部役立てることができる麻酔科にしよう、そして患者さんの回復のために治療もできる集中治療を専門にしようと考えました。疾患や臓器に関係なく横断的な治療ですから、経験20年以上の今でも、日々勉強の連続です。
―研修医の投票によるベストティーチャー賞を3年連続で受けておられる三住先生ですが、後進の育成にあたって最も大切にしておられることは。
ありがたいことに毎年、麻酔科には10人ほど研修医が入ってきてくれます。きちんと医学を極めた頭のいい子ばかりですから、まず教えたいのは大切な命を預かる現場に臨む姿勢ですね。仕事中は一生懸命、患者さんの治療に集中してください。中でも集中治療医はチームの中心になって治療方針を決めるのですから、他の先生方やスタッフとのコミュニケーションを大切にしてください。でもオフになったら、それぞれ何でもいいので楽しめることに集中しましょう。そういう私も、どうしても患者さんの様子が気になって、休みに出て来ることが度々あるのですが…。
―オフに集中しておられることは?
エギという疑似餌(ルアー)を使ってアオリイカを釣るエギング。病院内にも仲間がいてオフには一緒に楽しんでいます。エギングですが、これはスポーツの域に入ると私は思っています。まず医者が健康でなくてはいけませんからね(笑)。