2018年
9月号

縁の下の力持ち 第3回 神戸大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部

カテゴリ:医療関係, 神戸

神戸大学附属病院
輸血・細胞治療部講師
川本 晋一郎さん

適正・安全、かつドナーさんの善意を大切に

日頃お目にかかる機会はないけれど、病院内には激務をこなしているスタッフがたくさんおられます。
そんな「縁の下の力持ち」をご紹介するシリーズ。第3回は輸血・細胞治療部です。

―輸血に関する仕事とは?

川本 外科手術や貧血などの治療で輸血が必要になった場合、副作用やアレルギー反応が出ない安全な血液製剤を患者さんに供給するのが役目です。

早川 まず患者さんの血液型、赤血球の血液製剤が必要な場合は抗体の有無を検査して、赤十字血液センターに発注します。また、常備している血液製剤を管理し、期限が切れて足りなくなったら発注し、緊急時に備え必要最低限の量を保管しています。

―細胞治療とは?

川本 血液は骨髄で作られていますが、白血病など悪性疾患で抗がん剤や放射線治療で良い結果が得られない、また再発したなどというケースでは再度治療をして骨髄を空っぽにします。そこでドナーさんから提供いただく骨髄液を移植し、この中にある造血幹細胞を使う治療です。また悪性リンパ腫では患者さん自身の末梢血の中から造血幹細胞を遠心分離して採取し、移植をするケースもあります。

―このケースで担当する仕事は?

早川 末梢血幹細胞の表面に付いている特殊なCD34というマーカーを目印に、どれだけ採取できたかをカウントします。また、採取後に患者さんが治療に入りますから、移植に至るまでの間、管理するのが主な仕事です。

―適正かつ安全な輸血のための主な取り組みは?

川本 輸血は重大な副作用を起こす危険性があります。また血液製剤はドナーさんの善意で成り立っている大切なものですから無駄にはできません。そこで、各診療科、看護師、医事課スタッフ等が集まり、2カ月に1回、輸血療法委員会を開き、副作用の頻度、破損やアレルギー反応に伴う廃棄などについての問題点を挙げ、議論し、改善に努めています。

早川 できるだけ患者さんの検査データもチェックし、オーダーに疑問があれば担当の先生に確認するよう心がけています。また、輸血の現場に出向き、投与や副作用の確認方法などをチェックリストに基づいて監査する機会を年に2回は設けるようにしています。

―自己血輸血の推進とはどういう取り組みですか。

川本 大量の出血が予想される場合、予め患者さん自身の血液を貯血します。そうするとアレルギー反応やウイルス感染などのリスクをかなり排除できます。最近は、自己血の血漿成分から作るフィブリン糊と呼ばれる接着剤のようなものを手術に使う方法を取り入れ、さらに安全性を高めています

―縁の下の力持ちとしてやりがいを感じるときは?

早川 やはり患者さんが元気になって退院して行かれるときです。安全な血液製剤の準備ができているから、先生方に安心して手術や治療に臨んでいただけると考え、日々仕事をしています。

―川本先生は腫瘍・血液内科で患者さんと接する立場でもあり、縁の下の力持ちでもあるのですね。

川本 各診療科との連携がスムーズにいくように、縁の下との間を行ったり来たりして調整するのも私の役割の一つだと思っています。

―先生が医学を志し、中でも血液内科を専門にされたのはなぜですか。

川本 患者さんを治療して、元気になってもらうという目標が分かりやすいというのが理由です。私が研修医のころ骨髄移植が軌道に乗り始め、新しい抗がん剤もどんどん開発されました。内科でがんが治せる時代に入り、魅力のある分野だと感じていました。

―ストレス解消法は?

早川 美味しいものを食べて、喋ること。女性ならみんな同じでしょうか(笑)。

川本 私はマラソン、神戸マラソンも走りましたよ。

―ハードな方法ですね!

川本 走りながら研究について考えていると、いいアイデアが閃いたり、解決法が浮かんだり…血の巡りが良くなるからかなと勝手に想像しています(笑)。

―先生が走ると医学が進歩するのですね。無理のない程度にどんどん走ってください!

神戸大学附属病院
輸血・細胞治療部講師
川本 晋一郎さん

臨床検査主任技師
早川 郁代さん

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