9月号
時代は変わっても「親睦と奉仕」のロータリー精神は変わらない
生田神社 名誉宮司
加藤 隆久 さん
国際ロータリー第2680地区 2017-2018ガバナー
瀧川 好庸 さん
東京、大阪に続き日本で3番目にできた「神戸ロータリークラブ」メンバーでパストガバナー(元ガバナー)の加藤名誉宮司。「神戸西ロータリークラブ」メンバーで現ガバナーの瀧川好庸さん。お二人にロータリーの思い出や魅力などお話しいただいた。
古くからご縁がある
パストガバナーと現ガバナー
―加藤名誉宮司と瀧川さんとはご縁があるそうですね。
加藤 私の兄が昭和12年4月に滝川中学に入学しました。野球の名門校ですから、同級生に別所毅彦、下級生に青田昇などがおりました。私がロータリーに入った時の推薦人は瀧川清一さんです。
瀧川 パストガバナーの瀧川儀作さんの息子さんですね。別所さんはよく存じ上げているのですが、加藤名誉宮司のお兄様が滝川出身とは初めてお聞きしました。当時は滝川野球部の第一期黄金時代だったと聞いています。私の祖父にあたる瀧川辨三の長男、英一が野球好きだったようです。
―来年100周年を迎える瀧川学園の創立者・瀧川辨三さんは、どんな教育理念を持っておられたのですか。
瀧川 創立当時から、知育に偏ることなく、徳育を基本とした教育を目指し、世のため他人のために役立てる人間にならなくてはいけないと言っています。マッチ業で成功し、海外へも積極的に輸出していたこともあり、校訓のひとつに「雄大寛厚」、つまり広い心をもって世界に羽ばたける人間になりなさいと言っていたのだと思います。
―再来年は100周年を迎える甲南学園創立者・平生釟三郎先生の理念も似通ったところがありますか。
加藤 甲南学園は、徳育、体育、知育の均衡がとれた教育、つまり良き体、良き考え、世の中に尽くしうる人間を育てることを目指してきました。私が教師をやっていた当時の教え子もロータリークラブで活躍してくれ、私が教わる立場になっています。
伝統ある神戸ロータリークラブの〝子ども〟といわれる神戸西
―加藤名誉宮司は震災の年に神戸ロータリークラブ会長を務めておられたのですね。
加藤 私は還暦の年、神戸ロータリークラブ会長をやっていました。年が明け、1995年1月17日、「そろそろ会長の任期も終わりだなあ」と思っていた矢先、あの阪神・淡路大震災が起きました。崩れて地を這う拝殿を見た途端、突如、短歌が浮かんできました。自分の人生も終わったかと思っていたところ、父親が現れ、「私は四つの神社を建てた。お前はまだ神社一つ建てたことはないだろう」と。そこから懸命に復興へと向かいました。その後私は、事あるごとに短歌を詠み、公式訪問した74クラブを詠んだロータリー短歌を、代表幹事だった井植貞雄さんが「ふれあい」という本にまとめてくれました。
―神戸ロータリーの被害は。
加藤 事務局があったオリエンタルホテルが閉鎖されました。前年の会長・中内力さんから受け取り、託された、三つの宝、ポール・ハリスのバッジ、生家の絵、国際ロータリーの認証状が埋まってしまったかもしれない、大変だ!と事務局メンバーと一緒にヘルメットをかぶって9階まで上り、やっと探し出しました。今は、ポール・ハリスの来神写真が増えて四つの宝になっていますが、今年も無事に中野正德会長に引き継がれました。「加藤会長の時、三つの宝を無くした」と代々言われずにすんで良かった(笑)。
瀧川 四つの宝ですか、さすが!歴史と伝統がある神戸ロータリークラブですね。神戸西は、その子どものような存在ですから嬉しいですね。
加藤 神戸西ロータリークラブの宝は優秀な人材です。神戸YMCAの総主事を長年務められた今井鎮雄さん、弁護士の奥村孝さん、谷水清司さん…。
瀧川 3人のパストガバナーと私では段違いですが…。ロータリーの生き字引のような今井さんには色々と教えていただきましたが、当時は右から左で(笑)。奥村さんは何でもズバズバとおっしゃる方でしたね。谷水さんとは懇意にさせていただきました。
厳しくもあり、楽しくもあり
ガバナー一年間の務め
―ガバナー就任が決まったら必ず参加する「ガバナーエレクトトレーニングセミナー」についての思い出は。
加藤 私が参加したのは、開催地がアナハイムからサンディエゴに変わった年でした。タイのビチャイ・ラタクルさんに「RI会長代理として、2680地区大会にぜひ来てください」とお願いしました。会長にも手紙をお渡しし、直々のお返事を頂きました。当時はお国の芸の披露がありましたから、流行っていた「マツケンサンバ」を披露し大成功。終わったらスタンディングオベーションでした(笑)。
瀧川 楽しそうですね。今はそういうことはなくて、しっかり勉強しろと(笑)。セミナーは厳しかった…会場は自由に出入りすることはできず、1週間缶詰状態。いろいろな問題を出され、それに対してみんなで意見を出し合う。お腹が痛い、熱があると言っても、医師の診断が無ければ欠席はできない。久しぶりに、大学のゼミを思い出しました。
―県内74クラブの訪問の思い出は。
加藤 「触れ合い、学び、ロータリーの心を育み、行動を。そして率先しよう」という趣旨のテーマをもって訪ねました。兵庫県は摂津、播磨、丹波、但馬、淡路という五つの国それぞれに特色があります。地域ごとの例会は独自の方針をもっておられ素晴らしく、楽しみながら回らせていただきました。
―瀧川ガバナーもいよいよ始まりますね。
瀧川 7月19日に直前ガバナーのいらっしゃる尼崎中ロータリークラブに表敬訪問し、翌日に神戸ロータリークラブを訪問しました。たくさんの会員の皆さんとお会いでき、ロータリークラブの今後についてもお話しできたらいいなと思っています。楽しみですが、兵庫県は広いですから、体力が続くかちょっと心配はありますが…(笑)。
名称や機構は変わっても
変わらないロータリー精神
―時代とともにロータリーも変わってきたようですね。
加藤 本質は変わっていないけれど、名称が変わったり、機構が変化したりしているようですね。交換留学制度も私がドイツに行った頃には「GSE」と呼んでいましたが、今は「VTT」と名称が変わったようです。IT化も進んでいるようですが…。
瀧川 「VTT」と名称は変わっても内容は変わっていないようですよ。いろいろなことでインターネットを利用するようになり、各クラブ運営の情報も全て会員向け専用サイト「My ROTARY」に入力していきます。会員がログインすると、世界中のロータリークラブの情報を得ることができ、ペーパーレス化にもつながっています。
―ロータリークラブの魅力は。
加藤 創設者ポール・ハリスが大事にした会員間の友情を大切にすること、そして寛容の精神と職業奉仕です。ロータリーでいう奉仕は単に慈善というものではなく、広い概念で他人のためになること全てを指し、倫理性を大事にしています。
瀧川 私は、「ロータリーは大人の学校」だと感じています。40~50人の会員が集まり、職業、年齢に関係なく友情で結ばれています。例会で学んだことを外で生かして世の中のために尽くす。それがロータリーの本質。最終的には世界奉仕であり、世界平和につながっていくのだと思います。
―世界平和が揺らいでいます。宗教間での争いが大きな問題ですね。
加藤 神戸は国際宗教都市です。中央区の人口約12万人のうち約1万人が外国人です。全国で一番古いイスラム教モスクがあり、栄光教会、中山手教会、神戸聖ミカエル教会、関帝廟、ヒンズー教、シーク教、ジャイナ教などの宗教施設があり、それぞれの宗教をもつ人たちが認め合って暮らしています。北野天満神社では毎年、さまざまな宗教の人たちが集まり国際まつりが行われています。こんな街は世界でもなかなかないですね。神戸独特のもの。世界が見習うべきだと思います。
瀧川 日本の国自体が神仏混合の考え方で、一神教の考え方とは違って柔軟性があります。また海外の文物を取り入れて日本化しています。これが日本文化の根底にあるのでしょうね。世界では宗教のぶつかり合いで色々なことが起きています。「自分たちだけが正しい」と主張し合っても解決はできません。世界平和を目指すのであれば、日本的な考え方が必要だと思いますね。
―ロータリークラブの世界的ネットワークを活用する世界平和のための活動にこれからも期待しています。
加藤 隆久(かとう たかひさ)
生田神社 名誉宮司
1934年、岡山県生まれ。1957年、甲南大学文理学部文学科卒業。1959年、國學院大學大学院修士課程(神道学専攻)修了。生田神社神職、神社本庁常務理事を経て1986年に生田神社宮司に就任。神戸女子大学文学部教授、兵庫県芸術文化委員、神戸カナダ友好会会長、兵庫県神社庁長、国際ロータリー第2680地区ガバナー等を歴任
瀧川 好庸(たきかわ よしのぶ)
国際ロータリー第2680地区 2017-2018ガバナー
1942年、兵庫県生まれ。1965年、上智大学外国語学部卒業。聖心女子大学非常勤講師、上智大学文学部教授を経て、2014年、学校法人瀧川学園理事長に就任。2017年より、公益財団法人兵庫県私学振興協会理事長。1991年、神戸西ロータリークラブ入会。1998-99年度に同クラブ幹事、2005-06年度には会長を務めた