10月号

ベトナム元気X躍動するアジア 第34回|タイグエン省「国際お茶フェスティバル」開催 ―予備調査のための現地訪問―
9月3日から9日までベトナム北部タイグエン省を訪問しました。本連載の7月号で紹介のように、タイグエン省人民委員会ロアン副委員長と在大阪ベトナム総領事館ソン総領事の要請に応えて、10月30日~11月7日に同省が主幹する「国際お茶フェスティバル」における日本参加に日本ベトナム経済交流センターが協力します。今回は、その開催前の現地の状況を紹介します。
文・ 上田義朗
タイグエン省は「第一級の銘茶」の産地
タイグエン省の中心部はハノイ市内から高速道路を利用して2時間の距離。同省は、総面積(8375.2㎢:兵庫県とほぼ同じ)の90.17%が農業用地です。昨年度の域内総生産の成長率は8%に達し、経済構造は農林水産業が10.67%、工業・建設業が54.39%、サービス・流通業が39.94%を占めています(出所:同省からの提供資料)。
タイグエン省は、ベトナムで「第一級の銘茶」と言われるほど有名な茶葉の産地ですが、経済規模で農林水産業は10%にすぎません。現実の経済は、バクニン省に続いて同省で携帯電話を製造する韓国サムスン電子の操業に主に依存しています。これは、国民の認識と経済の実態との乖離を意味しています。「お茶」産業の新たな発展は、この乖離の縮小に貢献するでしょう。
昨年7月の行政区画の統合によって旧バッカン省がタイグエン省に含まれました。旧バッカン省は北部山岳地帯に位置して森林・鉱物資源が豊富ですが、旧来のタイグエン省よりも特徴ある茶葉の産地とも言われています。これは、旧バッカン省のお茶が「タイグエン省ブランド」として新たに登場することになります。


ベトナムでも手摘みのほかに機械摘みがあります
日本に対する提案と要望
在大阪ベトナム総領事館で本年6月にお目にかかったロアン副委員長とタイグエン省人民委員会庁舎で再会しました。そこで日本に期待する要望事項を伺ってきました。それは以下の7項目です。
1、国際基準を満たす茶葉原料産地の開発。2、バリューチェーンに沿った生産連携の構築。3、茶葉の加工技術の移転。4、付加価値の高い茶製品の開発。5、市場調査・市場開拓に関する協力。6、技術研修および貿易・商業促進。7、タイグエン茶製品を国際市場、特に日本市場の消費者により身近なものとするための協力。
これらは、日本企業に対してタイグエン省が提案するビジネスチャンスです。今日のベトナムには人材も資金もあります。ただし商談には、ビジネス慣行や「常識」の両国間の相違を相互理解することが求められます。ビジネスにも一般に広義の「多文化共生」の視点が不可欠と私は考えています。
なお、お茶ビジネスの経営形態には、家族単位の農場を集約する協同組合と民間の株式会社があります。実際のビジネスに当たって両者に大きな違いはないですが、自社との最適な相性が最優先の検討事項です。

筆者とタイグエン省ロアン副委員長

タイグエン省の抹茶農園
ベトナムの抹茶ビジネス
世界的な抹茶ブームはベトナムにも浸透しています。すでにタイグエン省でも抹茶が生産され、ベトナム国内でも販売中です。日本とベトナムの栽培方法や味は、天候や生産設備の相違に依存して多様です。工業製品では世界同一の性能や品質が一般に求められますが、お茶のような食品では、各国また個人によって嗜好が異なります。必ずしも日本産と同じ商品をめざす必要はないと考えられます。
ハノイ市内では抹茶専門店「マッチャ東京」に人気があり、ベトナム全国展開を進めています。ここでは日本産の抹茶を使っており、商品価格は日本と変わらないか、やや高いくらいです。ベトナムにおいて抹茶の生産・販売市場は、今後も大きな成長力をもっているとみなされます。
なお抹茶にかぎらず、タイグエン省の茶葉を原材料とした加工食品やサプリメントの開発・製造・販売も成長可能性の高い領域です。

ハノイのThe Matcha Tokyo店内から
ぜひ、タイグエン省「国際お茶フェスティバル」に参加し、ご自身で同省そしてベトナムの魅力をご実感ください。詳しくは、「日本ベトナム経済交流センター」HPをご参照ください。
上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学名誉教授
岡山学院大学・岡山短期大学理事
日本ベトナム経済交流センター日本代表
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO












