2017年
4月号
4月号
神戸のカクシボタン 第四十回 豚まんの陰に光る逸品 三宮一貫楼
写真/文 岡 力
若年層との会話で「肉まん大好物なんです!」と聞けば「関西弁で肉は牛を指す。豚まんが正解だよ」と山岡史郎のように訂正を入れる。美味しそうな響きの関西弁を啓蒙する最後のめんどくさい世代である。
神戸市内で4店舗展開する中華料理店の老舗「三宮一貫楼」。昭和29年に兵庫区で大衆食堂として創業。昭和41年に三宮へ進出し豚まんの製造過程を一般の方に見せる店舗形態で人気を博す。こだわりの豚まんは、10㎜の粗挽きにこだわった国産豚と辛みが少なく繊維質がやわらかい玉ねぎで餡をつくる。それらを独自にブレンドした甘めの皮でうねりながら包む。この厳選された素材が三位一体となった時、あの絶妙なハーモニーが誕生する。
そんな一貫楼には、私がおススメする隠れた逸品が存在する。「栗入りあんまん」は、1日あたり1万個製造される豚まんに対して20分の1と小ロットながら根強い人気がある。豚まんと同じ手法で餡子を皮で優しく包む。違いは最後にひっくり返して丸く整形するところ。職人の熟練された技により手にするとふんわり、口にふくむとモチモチの食感を実現。コツは、生地を耳たぶの硬さにキープする事。店舗によって環境が異なるため水と粉の配合を微妙に調整している。今日も身体がほどよい甘さを求めている。アンパンマンではなくあんまんマン飛んで来ないかな・・・。
「三宮一貫楼 本店」
神戸市中央区三宮町3-9-9
営業時間 10時30分〜22時
岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「のぞき見 雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)