2017年
4月号

Power of music(音楽の力) 第16回

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 文化人

音のない楽譜
『ジョン・ケージの世界』

上松 明代

 演奏家にとってコンサートプログラムの選曲は非常に重要で、それ故、頭を悩ますこと。よく見かけるプログラムでは面白みにかける。だから私は30歳から大学院で作曲を学んだ。自ら演奏する曲を作曲・編曲したかったのだ。しかし大学院なので、最終目標は修士論文の完遂。授業も様々で、多角的視点から音楽を深く掘り下げ学び、修士論文に挑む。ある日「音楽美学」の講義で、一人の作曲家を深く知る。それが20世紀に生きたアメリカ人作曲家、ジョン・ケージだ。
 クラシック音楽ファンなら彼の代表作はすでにご存知であろう。そう、言わずと知れた『4分33秒』である。これは3楽章から成る曲で、全楽章、それぞれに〈TACET(休み)〉と記してあるのみ(楽譜も出版されている)。演奏する楽器は特に指定されていないが、ピアノで演奏されることが多い。演奏?休みなのに?
 演奏者は、ストップウォッチ片手に登場し、演奏状態に入る。楽器は鳴らさない。携えたストップウォッチを視界に入れながら、その時間をただ舞台上で過ごすという【無音の音楽】。
 20世紀に入り、新しい音楽様式は出尽くし、停滞していたクラシック音楽界に、西洋音楽の価値観を破った作風とも云うべき【偶然性の音楽】を確立したケージ。『4分33秒』も、様々だ。ある会場では観客が騒めき、また他の場合、会場は静寂の中、空調のモーター音だけが低く響く。フィンランドで演奏された映像は、とても印象的だった。その会場は半屋外の舞台で、鳥の囀りと風が木々を揺らす音が聞こえる『4分33秒』であった。神戸なら神戸だけの音楽が作られるであろう。その全てが【偶然性の音楽】という芸術。
 彼はこう話す。「世の中にある音を聞くことを我々は忘れてしまっている。世界は様々な音に包まれていて、それを自分で聴き出すこと。それをずっとやっているとごく自然に自分の内なるところで響いている音楽が聞こえてくるはず。それが作曲だ。」
 楽譜上に音はないが、音楽はそこにいつも存在する。

上松明代(フルート奏者・作曲家)

武蔵野音楽大学卒業。在学中にハンガリーの「音楽」と「民族」に魅了され、卒業後ハンガリー国立リスト音楽院へ留学。31歳で知的好奇心から兵庫教育大学大学院で作曲を学ぶ。演奏活動と同時にバイタリティー溢れる作曲活動も展開中。六甲在住。You Tubeにてオリジナル曲公開中。
オフィシャルサイト http://akiyouematsu.com

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