4月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第七十一回
川西市医師会市民医療フォーラム
目指せ! いきいき健康家族 ~自分を守る。子どもを守る。未来を守る。~ について
─川西市医師会のフォーラムとはどのようなものですか。
長谷部 川西市医師会では、現在の医療をめぐる諸問題について市民の皆様とともに考えていく場として、平成15年から県内各郡市医師会に先駆けて市民医療フォーラムを開催しています。
─昨年のフォーラムはどのような内容でしたか。
長谷部 11月5日に川西市みつなかホールで開催しましたが、「目指せ!いきいき健康家族~自分を守る。子どもを守る。未来を守る。~」と題し、東京大学名誉教授の武藤芳照先生を招いて「運動器と運動を大切に─子どものからだ異変から高齢者の転倒予防まで─」というテーマで講演していただきました。
─どのようなお話でしたか。
長谷部 高齢社会においてますます高齢者は増加していき、将来、高齢者1人を何人の現役世代で支えるかが問題となっていますよね。50年前は胴上げ型(1人/9人)が現在騎馬戦型(1人/3人)、40年後は肩車型(1人/1人)になってしまいます。昔は70歳になると口減らしのため山に捨てられる地域がありました。さすがに現在それはありませんが、その心配は今後問題となっていくでしょう。そのためにも現代は転倒・骨折を予防し、寝たきり・要介護・転倒死を防ぐ必要があるのです。転倒は命の「黄信号」です。つまり、体が転ぶほど弱っているということです。武藤先生は転倒の原因である加齢・病気・運動不足をわかりやすく説明、転倒で骨折させないために大切な「ぬかづけ」を紹介してくれました。「ぬかづけ」とは建物や構造面への目配り・注意・意識のためのポイント、「ぬ」=濡れているところ、「か」=階段、「づけ」=片付けていないところですが、覚えやすいですよね。転倒や骨折のリスクをさらに生活指導教育により減少させることができるともおっしゃっていました。また、川柳も紹介してくれたんですよ。
─どのような川柳ですか。
長谷部 「消えていく足の感覚 妻の愛」。この川柳の作者が15歳の女子であることには驚かされましたね。
─フォーラム以外に、川西市医師会ではどのような取り組みをおこなっていますか。
長谷部 昭和48年にメディカルセンターを全国に先駆けて設立しています。また、昭和49年から毎年7~9月の毎週木曜日に全12回の市民向け健康講座を開催し、医師会の先生はもちろん、大学の教授も招いてわかりやすい独自の講義をおこなっています。大変好評ですぐに定員に達してしまいますが、ぜひみなさまにご参加いただければ嬉しい限りです。川西市医師会はこれからもこのように市民のみなさまとさまざまな団体・行政とともに協力しながら、健康で幸せな街づくりを目指して取り組んでいこうと考えております。
─子どもたちの転倒についてはいかがでしたか。
長谷部 最近の子どもたちは二極化が進んでいるといわれています。運動不足の子どもは体のかたい子やバランスの悪い子が多く、反対にスポーツ過多の子はスポーツ障害を生じさせています。このような状況の背景には、現代の子は生まれたときから日常生活と遊びで体を使わないまま育ってしまうことが挙げられます。テレビのリモコン、エアコン、車、エレベータ、パソコン、スマホなどを使用していますし、テレビゲームは長時間化して1日1時間以上が約55%、4時間以上も約10%にもなるんだそうです。
─これでは運動量の低下を招きますね。
長谷部 子どもたちが跳び箱で手をついて両手骨折したり、むかで競走で骨折事故がおきたりしているんですが、これらのことは何より幼い頃から身体活動不足によって運動能力や体力が未発達で、運動の種目や課題に見合ってなかったというお話でした。また、熱中症について、健康のために水を飲むことで熱中症の事故を防ぐことになることもご紹介いただきました。
─武藤先生は積極的な生き方を推奨していたそうですが。
長谷部 人生七転び八起き、朝の来ない夜はない、止まない雨はない、涙の後には虹も出るというような積極的な人生観を持ち、子どもから高齢者まで誰もが健やかで実りある日々を生きることが大切であると説明されていました。
─日々生き生き暮らすことはとても大切ですが、川西市ではどのようにサポートしていますか。
長谷部 健康づくりに取り組んでポイントをためるとギフトカードや市の名産品との交換や地域への寄付ができる「かわにし健幸マイレージ」を導入しています。また、市のキャラクター「きんたくん」の健幸体操なども実施しています。
─講演の後にはパネルディスカッションがおこなわれたそうですが。
長谷部 はい。武藤先生や川西市医師会のほか、市の担当者、地域コミュニティ代表、ケアマネージャーと多角的な討論をおこないました。さらに医師会は医師が手作りのフォーラムを作っています。例えば、川西市民病院の院長が率先してカメラ係を担当したり、阪神自衛隊病院の院長が司会をしたり、医師会会員が積極的に運営に関わっているんですよ。
これからもこのことを、川西市医師会は大切にしていきたいと思います。