10月号
神戸のカクシボタン 第三十四回 神戸のご当地飲料「アップル」
写真/文 岡 力
兵庫区、長田区で古くから愛されている「神戸たこ焼き」の取材時。口直しに最適と店主から勧められた「アップル」と呼ばれる飲料。この辺りでは、たこ焼き同様に古くから親しまれている。名前の通りリンゴ味かと思いきやそうでもない。詳しいことは、店主もわからないと言う。深まる謎・・・。早速、製造元を訪ねる事にした。
1952年創業の「兵庫鉱泉所」は、各種清涼飲料水を製造卸する老舗メーカーである。現在、ラムネ、サイダーといった7種の商品を販売している。素材にこだわり甘味料は、全ての商品に上白糖を使用。震災の影響を受け半分ほどの数になってしまったが銭湯やコナモン等を提供する約150店舗に商品を卸している。工場を見渡すとガラスの瓶に入った大量のアップルを発見。三代目の秋田健次さんにお話を伺った。
「アップルと言いますが中身は、みかん水です。物心ついたときから何故かそう呼んでいます。串カツやお好み焼きとの相性が良く定番の商品です」。
以前は、十数社が多少レシピの異なる「アップル」を製造していた。しかし、現在は同社のみとなった。明確な発祥や語源は不明だが成分にリンゴ酸が入っており、それが関係しているのではと秋田さんは語る。
ちなみに製品のガラス瓶には「パレード」と印字されている。これは、全国の同業から成る「パレード」(ほかにも「シーホープ」「GLラムネ」がある)という組合組織で瓶を一括して製造している事に由来。そのためパレードと印字されているが各社によってコーヒーやサイダーなど中身が異なる。
昭和の時代から神戸の下町に癒しを与え続けているアップル。これまで辿ってきた歴史を喉で感じながらレトロな瓶を傾け一気に飲み干す。
■兵庫鉱泉所
神戸市長田区菅原通1丁目8
■岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「のぞき見 雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)