4月号
神戸 旧居留地ものがたり Vol.8 神戸の災害・防災基地に
神戸市危機管理監・理事
川野 理さん
4月、旧居留地に「神戸市危機管理センター」(市役所4号館)がオープンした。街の雰囲気に溶け込む建物は、一体的な危機管理を行う中枢拠点、災害時の対策拠点、また防災について学習拠点。市民にとっても身近な存在だ。その概要や特徴、利用方法などをお聞きした。
―オープンまでの経緯と建物の概要をお話しください。
川野 阪神・淡路大震災後、集約的な防災拠点の必要性がいわれるようになりました。まず市役所内または、その近くでなくてはならず、そこで、隣接する土地を有効活用して「危機管理センター」を建設することになりました。1、2階が危機管理室、さらに災害時に市民生活のライフラインに関わる部署が集まり、3~5階に消防局、6~8階に水道局が入っています。
―阪神・淡路大震災の経験が特に生かされている点は?
川野 防災機能の中枢がダメージを受けると災害対策活動ができません。まず建物自体を強いものにしようと免震構造にしています。地震の揺れを約3分の1に抑えることができます。さらに、電気の供給が途絶えるという問題もありますので3日間作動する非常用電源装置を設置しています。また、東日本大震災の教訓を生かし、想定外の津波が当センターまで襲ってくる可能性もありますから建物を維持する設備にトラブルがないよう、非常用発電機・電気室は9階に置くなど対応しています。
―システムの特徴は?
川野 情報システムを再構築し一元化を徹底しました。4階の消防管制室では市内全域の119番通報を集約しオペレーションセンターで整理・管理しています。従前のアナログからデジタルネットワークに刷新していますので音質も高まり、通報を正確に聞き取ることができます。
新たな危機管理情報システムで市内全域の災害情報を一括して集約し共有します。情報を職員にネットワークで周知させ、災害が起きると瞬時に携帯電話に状況通知と出動発令なども可能です。1階本部員会議室には曲面大型ディスプレイを設置し、情報の共有を徹底しています。2階には防災に携わる人が緊急時に集合できるスペースも設けています。
―市民に向けての情報発信は?
川野 災害時に、現在106カ所に設置している街頭型スピーカーや各地区の防災福祉コミュニティの戸別ラジオで地域の方に情報をお届けする防災行政無線を活用します。街頭型スピーカーは海岸部を中心に増設中で、平成24年度末までに130ヶ所程度を予定しています。この拠点から継続して情報を発信できると考えています。
―1階の「防災展示室」(4月5日オープン)はどのようなものですか。
川野 市民の皆さんに防災について学んでいただけるコーナーを開設し、嘱託職員が常駐しています。近隣の方に来ていただいたり、休日には家族で来て学習していただいたり、企業の防災研修にご利用いただくなど様々なケースでの利便性を高めるために、平日だけでなく土日祝日も午前10時から午後6時、金曜日は午後9時まで開館しています。神戸市内全域のハザードマップを床面に設置していますので、職員の話を聞きながら災害時の避難経路を学習できます。ほかにも家具の固定方法、AEDを使った救命方法などの学習コーナーや防災グッズの紹介、子ども向けにゲーム感覚で防災を学ぶコーナーも設けています。防災に関する図書やDVDなども整備しました。災害時にはマスコミプレスセンターとして利用する予定です。
団体での予約が必要ですが、本部員会議室の大型ディスプレイで神戸市が作製した津波や水害に備えるDVDを視聴していただいたり、119番の管制室見学も可能です。
―デザイン都市神戸の中でも旧居留地に造られたということですが、特別な工夫や配慮はされたのですか。
川野 外壁に石を使うなどの景観に配慮しているほか、観光客など人通りの多い旧居留地ですから、誰でも利用できるトイレを1階に設置しています。
この場所には明治時代、製茶メーカーがあり、工事中に煉瓦づくりの釜が見つかりました。これも居留地の一つの歴史として保存しようと、1階外側に煉瓦を利用したモニュメントを設置しました。お越しの際には一度ご覧いただけたらと思います。
また、「光都・神戸」をアピールしようと、1階のガラス壁面に神戸の街をイメージした絵柄を描きLED照明でライトアップする予定です。災害時にはフラッシュして意識啓発に役立てることができます。
イメージキャラクターの「どすこい防サイくん」は神戸芸術工科大学の学生さんのデザインによるものです。子どもたちにも防災啓発のシンボルにしようと、第一弾としてデザイン都市のイメージに合うバナーを作りました。1階街路側に掲げていますので、目に留めていただけたらと思います。
―いよいよ本格始動しましたが、これからの基本方針は?
川野 神戸市の危機管理の基本方針は市民の皆さんに安全・安心な生活をしていただくために最大限の努力をすることです。災害が起きた時に、できるだけ被害を少なくして早い復旧を行うことが危機管理を担当する部署の責任、ひいては神戸市の責任だと考えています。
―危機機理センターができて大変心強く思っています。市民の安全・安心のために活用・運営をよろしくお願いします。
インタビュー 本誌・森岡一孝
川野 理(かわの おさむ)
神戸市危機管理監・理事
1977年、関西学院大学商学部卒業、同年神戸市に入庁。2001年、港湾整備局空港整備本部参事。2002年、神戸空港ターミナル(株)代表取締役常務。2004年、市民参画推進局次長。2006年、行財政局行政部長。2007年、秘書室長。2010年、危機管理監・理事。
神戸市危機管理センター1F「防災展示室」
防災意識を高める「防災展示室」を開設
危機管理センターの1階に設けられている防災展示室・研修室。地震・津波災害対策、風水害対策をコンセプトとし、神戸市民の防災意識を高めるために開設された。常設展示では、防災グッズコーナーや映像ライブラリーコーナー、応急手当の方法を学ぶコーナーの他、子供向けに防災ゲームや教材などもそろう。
危機管理センター防災展示室・研修室
TEL.078-322-6239
開館時間/10:00~18:00(土・日・祝日も開館)
休館日/12月29日~1月3日
入館料/無料
阪神・淡路大震災の経験から、「自助」「共助」の精神で市民とともに防災意識の向上を図るため、「“デザイン都市・神戸”推進のための連携協力に関する協定」により、神戸芸術工科大学との共同事業により危機管理センター竣工とともに誕生したキャラクターです。