2020年
1月号

身体は嘘をつかないが、 脳はいくらでもウソをつく|横尾忠則

カテゴリ:文化人, 神戸

身体は嘘をつかないが、 脳はいくらでもウソをつく

横尾忠則

昨年12月に横尾忠則現代美術館で開催されていた『横尾忠則 自我自損展』は、展覧会のキュレーション(展示作品を選び、その展示方法などを決定すること)を横尾忠則自身が行い、話題を集めた。作品づくりの根底にあるものをインタビューした。

週刊誌は仏教書

―作品のイマジネーションの源泉はどこにあるのだろうと考えさせられます。
源泉は、ぼくの子ども時代の経験でしょうか。つまり、1歳から19歳までの10代に経験したこと、あるいは記憶、思索、そういったものが総合的になって、その後の人生の体験と絡み合いながら生まれてくるんですが、言葉ではなかなか説明しにくいです。

―最近はスマホが手放せない子どもが多いようですが。
ぼく自体、スマホは操作できないから日常的に使っていないだけで、使えるのであれば使ってみたいと思います。あれはあれで、子どもたちの新しい情報源になっているんじゃないですか。ぼくの情報源は、新聞、テレビ、ラジオですが、創作における情報源というのはぼくの10代のときの体感が大半で、今の社会で体験している情報は、創作にはあまり関係ないですね。ぼくは難聴で、テレビを見てもよくわかりませんし、テレビは情報の窓口にはなりません。ただ、週刊誌はよく読みます。スキャンダル記事が好きなんです(笑)。
ぼくは、スキャンダル記事は「仏教書」だと思っています。因果応報、自業自得…そういうものの結果で、問題が起きる。何かことが起きるには原因があって、縁があって、結果が出るわけです。大げさにいえば自然の法則というのが、現代の人にはわかっていないんじゃないかな。それが週刊誌の記事になっている。わかっていない人が、かたよった解説を書いている(笑)。それをぼくは「仏教書」と思って読んでいます。教典を読むより現実的で具体的でよくわかります。

身体は脳と違って正直なもの

―『自我自損展』ではご自身がキュレーションを担当されました。
今回のぼくのキュレーションの背景に、ちゃんとした論理があるかといえば、論理はありません。思想もないし、気分で選びました。でも「気分」が一番大事なんですよ。人間はそのときの考えで行動していると思いがちだけど、意外とそうではないんですよね。その中に、損得や利害関係を頭に置いている、それは気分ではありません。気分とは、感覚的なもの、本能的なもの、生理的なものです。もっといえば、魂と接続しているのが気分なんです。現代は、知識とか情報とかそういうので結びついているので、そうすると時代的にはそれが正しく見えることもある。でももっと人間の本能とか魂に考えさせた方がいい。自我の背後に魂があるんですよね、その魂が、イエスと言っているのか、ノーと言っているのか、そういうところまではみんな考えない。もっとその手前です。
脳の考えは、自我的なものです。身体は脳とちがってもっと正直です。身体はウソはつかないですが、脳はいくらでもウソをつく。今は脳社会。脳が問題を起こしたりする。そうじゃなくて、身体が、身体自体を脳に置き換えてしまった方がいいんです。ぼくはそれを「肉体の脳化現象」と呼んでいます。肉体を脳化してしまう。身体は考えはしません、感じるだけなんです。

―作品の中には、B-29やマッカーサーなど、戦争に関わる絵も印象が深いのですが、平和への思いは強いですか。
人がものを創るときの根底に、何か思想があるとしたら、それは「平和」しかありません。なにも声を大にして、平和、平和と言わなくても、ものを創る、描く、それ自体が平和の原理そのものなんですよ。そこにさらに平和、平和!と積み重ねて言うから逆におかしくなってしまう。「創る」ことは「平和」なんです、戦争じゃなくて。死を描いていても逆に生を描こうとしているんですよね。ぼくの絵の中に飛行機が出てくるけれども、あれはぼくの少年時代の戦争体験です。ぼくは戦争に行ったわけでも空襲に遭ったわけでもないけど、その時代の恐怖というのが戦争だった。ぼくに限らず、あの時代を生きた子どもから老人まで、みんな、戦争を受け入れる人なんていないですよ。

―読者の方には、作品のどこを楽しんでほしいですか。
そこに描かれているものに、あまり意味を求めない方がいいですね。例えば筆のタッチ、動き、絵具の盛り上がり、そういうものを見てもらう。これは何を描いているかとか、何を意味しているかとかいうのは、あまり知的に考えない方がいいですよ。今は、なんでも知的に見て、それを自分の教養にしようとかね、そういう考えも、つまり欲望なんですよね。だから小さな子どもが見て感じるようにね、胸襟を開いてすべて受け入れるっていう、そういう姿勢で作品の前に立ってもらえばいいんです。作品の空気や風を感じてもらえばいい。そうすると、自分が作品の中に入らなくても、自分の中に作品が入ってきてくれると思います。
もしそこで何か発見があれば、自己を変革することになる。「発見」というのは、「発明」とはちがって、そこにすでにあったものを、自分が見つけ出すこと。それは、その人がその瞬間に自分を変革して、一歩前進するきっかけにもなることなんです。

絵の資料のため、アメリカのアンティークショップで「世界の滝のポストカードを集めて送ってほしい」と注文したところ、以来数年にわたり滝のポストカードがつまったボックスが送られてきた(値段は毎回約20万円)。「最近送付がなくなったので滝が全部集まったのかなと思ったんだけど、お店のおばあさんが亡くなったみたい」と、横尾さん。それが作品になっている

横尾忠則現代美術館(兵庫県立美術館王子分館)

神戸市灘区原田通3-8-30
TEL.078-855-5607
10:00~18:00/展覧会開催中の金・土曜日は~20:00
月曜日休館(祝日、振替休日の場合は翌日)、
年末年始、メンテナンス休館(不定期)

〈2020年1月号〉
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