2020年
1月号

「神戸で落語を楽しむ」シリーズ 笑いは人情噺をするための権利

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 文化人, 神戸

落語家 三代目 桂 春蝶 さん

「落語ってすごいな」って

─子どもの頃、落語ってどんな存在でした?
毎晩寝るときに、心地の良い音楽のように聞いていました。大先輩の落語は、間とかリズムが良くて、語りかけてくれているようで。体は疲れているからス〜っと、いつの間にか眠れていましたね。

─落語家になろうと思ったのは?
父親(2代目桂春蝶)が亡くなったのが高校3年生の時。1月4日でした。進路を決める重要な時です。その時にね、お通夜や葬儀に来てくださったファンの方が「あなたのお父さんの落語を聞いたらどんな辛い時でも笑顔になれた」とおっしゃたんです。それを聞いて2つのことを思いました。「父親ってすごいな」と「落語ってすごいな」。
どんな人も「元気」に、「元の気」に戻してあげることができるんやって。一気に「同じことをやってみたい」って、気持ちが変わったんですよ。それまでは、憧れが強すぎて自分にはできないと思っていましたから。あのタイミングがなければ、落語家には絶対になっていないと思います。

─子どもの目から見た父親は?
父親と落語家との間には、だいぶ評価に開きがあります。「最低やな、この父親」って思うことがあっても、舞台でいい芸を見たら評価が元に戻るというより高い位置に行くんです。よく遊んでくれましたけど、「すごいことをやる人」っていうイメージがあるから、父と子としての接し方では無かったように思います。
それ以外では、すごく怖い人。プライベートはむちゃくちゃで。今思えば、芸人って人と違う雰囲気をまとってないとアカンと言われた時代な気がして、無理に演じていたところがあったのかな。それが、体に負荷をかけたと思うんですよ。

師匠や大切な仲間に出会えた幸せ

─入門同期が「華の平成6年組」と言われていますね。
僕らはバブルが崩壊した直後の芸人で、全然お客が入ってない時代。島之内寄席って月に1回やっている有名な上方落語協会の寄席でも、歴史上一番動員がダメな時でお客さんが5,6人やったんですよ。
そんな時代に出会えたのも縁ですよね。いつだってハラハラドキドキさせてくれるような仲間がいるのは、僕にとって「宝物」です。だからといって、日頃から仲がいい訳じゃない、良きライバル。一番意識しているし、気も使うし、それでいてホッとするし、いろんな感情がひとつになっているような感じですね。
2020年の1月24日から三日間。喜楽館で「華の平成六年組 吉弥・春蝶・かい枝 特選三人会」をさせてもらいます。楽しみにしていてください。

─師匠も厳しい方だったんでしょうね。
師匠の三代目春団治も二代目の息子でね。二世がもっている功罪っていうのかなぁ。こうやったらアカンようになる、こうやったら良くなるっていう教育の方法を分かっている人だったような気がします。あの人に付けて、僕は幸運でしたね。
ある日、高座に上がる瞬間、師匠のまわりに花吹雪みたいなのが舞っているのが見えたんですよ。錯覚なんですけど、見えたんです。美しかったぁ。美しさって、錯覚させるくらいの存在感があるんですね。この人ってホンマにすごいんやなって思いました。
だから、舞台に上がってきた一瞬で空気を変える落語家って、憧れますね。よい緊張が走るっていうのかな。ちょっと緊張させる芸人さんって好きやね。

好きなことは我慢しない

─落語以外にラジオや執筆など、いろいろされていますね。
そうですね。1年ほど前からはオンラインサロン(Web上で配信する会費制のコミュニティ)もやっていて、毎日1000文字以上のコラムを書いているんです。これが自分の創作というものの、研鑽の屋台骨となっています。
やっぱり、毎日書くって大切で、自分の考えというものを1000文字くらいでまとめるんです。ラジオやコラムを書くのも、体感トレーニングをいろんな方法でやっているのと同じで、全部が結果としてつながったらいいなぁと思うんです。

─映画も年に100本くらい観られるとか。
お稽古とか制作をやり続けていると、精神状態に良くないんですよ。映画を見たり本を読んだりお芝居観たりして、感じて心を動かす「感動」がないと新しいものが出てこないし、芸がおもしろくならない、元気もなくなります。マイナスになっていたら上げて、高揚していれば下げる、元の気に戻さないと。元の気に戻す方法は、それぞれにあるべきやと思いますよ。だから好きなことは我慢したくない。

笑いが街を変えるんです

─創作落語にも力を入れられていますね
新しいものを生みだしていく創作落語と古典落語の両輪を、なぜやらないといけないのかっていつも思うんですけど、古典落語は技術を磨くところ。人を感動に導く教えが全部詰まっています。新作とか創作落語は、自分の感性を磨くところ。技術を古典でたっぷり蓄えながら、それで培ったものを創作に生かしていく。この両輪でずっとやっていけば、自分が憧れる存在に少しでも近づけるのかなと思っています。
独演会は、前半はめちゃくちゃ笑ってもらえるものを、その後に情的な人間そのものの話を聞いてもらうんです。笑いばっかりではダメだし、情だけでもダメ。笑いは、人情噺をするための権利やと思っています。泣くほど笑って情にほだされる。パッと咲いた花に重要なエキスをポンと入れたら、ものすごくキレイに咲き続けると思うんです。
「今日は何かひとつもらえたね」って思ってもらえて、誰かの心にも灯火のように付けてあげたいなという共感をいただけたら、我々はありがたいんです。そういう意味でも笑いって、すっごい大事。

─喜楽館や新開地についての思いはありますか?
子どもの頃に神戸松竹座や恋雅亭に連れて来てもらって、新開地でお好み焼を食べたこと、覚えていますよ。今、恋雅亭や兵庫区民寄席のキャスティングプロデューサーをやっていて、こういうご縁をいただけることに「ありがたいなぁ」と思っています。兵庫区民寄席は、東京のメンバーも入れて斬新なメンバー組をしています。
新開地では、打ち上げとかするんです。どこでやってもおいしくて安い。いい店が多いです。寄席小屋がある街って、明るいムードをどれだけ演出していけるかでしょうね。笑いとか文化を根付かせることで、いい気が集まってくる。その街が刷新されるので、笑いは大切。ここ来たら面白いねって思ってもらえることが大切。10年くらいしたらすごくいい感じに変わっているでしょうね。だから、これからの新開地が楽しみなんです。


神戸新開地・喜楽館

TEL.078-576-1218
新開地駅下車徒歩約2分
(新開地商店街本通りアーケード)

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