12月号
ノースウッズに魅せられて Vol.05
海の結氷を待つ
ノースウッズの北の果て。ハドソン湾に面した港町チャーチル。この人口千人に満たない辺境の町周辺に、10月から11月半ばにかけて、ホッキョクグマが集まってくる。理由は夏の間溶けていたハドソン湾が再び凍るのを待つためだ。
じつはホッキョクグマの主な獲物は、脂肪分の豊富なアザラシ。しかし、泳ぎの得意なアザラシを狩るためには海氷が必要で、呼吸しに上がってくるのを待ち伏せするか、氷上で休んでいるところを捕まえるしかない。
広大なハドソン湾だが、チャーチル川から注ぐ真水と海流の影響で、この町周辺から凍り始める。それをクマたちも知っていて、一刻も早く狩りに出るために集まってくるのである。
この写真の親子も海岸沿いで、冬の到来を待っているところだった。子グマはもう少しで一歳。母グマは海氷が溶けた7月から4ヶ月もの間、何も食べていない。しかも、授乳によって1日に1キロずつ体重が減ってゆく。
この地のホッキョクグマたちは、夏の断食期間中には、まるで冬眠のように新陳代謝が落ち、冬の間に蓄えた脂肪のみで生きるよう適応してきたのだ。
しかし今、地球温暖化の影響で徐々に海氷が溶ける時期が早まり、凍る時期が遅くなることが懸念されている。狩りの出来ない期間が長くなれば、十分な脂肪を蓄えられず、出産、子育てへの影響も避けられない。
たいてい二頭を産み育てるホッキョクグマだが、この時出会った子グマは一頭だけだった。偶然なのか、気候変動の影響なのか、それがずっと気になっている。
写真家 大竹 英洋
芦屋市 冬の公民館講座「北米ノースウッズを旅して」
講師:大竹英洋
〈日程〉2020年1月18日(土)、2月8日(土)、3月14日(土)
〈時間〉10時~11時30分
〈会場〉芦屋市立公民館
〈内容〉北米の湖水地方ノースウッズで出会った野生動物とのエピソードやカヌーの旅、ホッキョクグマの貴重な生態について
〈お申込み〉①講座名②住所③氏名④電話番号を記入の上、12月15日までにハガキかファックスで。応募者多数の際は芦屋市民優先の上、抽選。受講料1200円(3回一括)
〈宛先〉〒659-0068芦屋市業平町8-24 芦屋市立公民館
Tel:0797-35-0700/Fax:0797-31-4998