2019年
12月号
12月号
市長が語る、都市の記憶 著・久元 喜造(神戸市長)
子供の頃、中学・高校生時代の思い出が、何の前触れもなく、ふと思い浮かぶことがある。とくに少年時代や思春期の頃の思い出ほど、鮮明に映像としてよみがえる。『神戸残影』では、久元喜造神戸市長が18歳までを過ごした神戸の思い出を、記憶の中の光景をたどりながら、人間、久元喜造として私見を述べている。「市電が走っていた頃」「山田川のほとり」「ぼくは、ひとだまを見た。」「居酒屋は街の賑わい」などテーマごとに、久元少年と久元市長という“二人”の視点を通してエッセイ風に綴られている。同時に、神戸がもつ資源、神戸市政の取り組み、神戸市にゆかりのある人物についてもふれられており、神戸の変遷を知る上でも興味深い。
久元市長は本書で次のように記している。「誰もが持っている、超私的な記憶が絶えることなく積みあがり続けているという世界を意識すること。そのような意識を持つかどうかで、街のありようは大きく変わってくるのではないだろうか」。将来の神戸を考える上でも考えさせられる一冊である。