7月号
驚きの物流センター エスパス
(株)フェリシモ 武元 康夫さん
黄色・緑・紫・ピンク・青、カラフルなバッグが頭上を流れていく。クルッと向きを変えて目的の場所へ向かい、品物を入れてもらったら、バッグはまた元の列にきちんと戻って、次の目的の場所へ。物流ライン「スカイポーター」が稼働するユニークな総合物流・情報施設「エスパスフェリシモ」を訪ねた。
―14年前、エスパスを開設することになった経緯とは。
武元 元々、フェリシモは大阪に本社を置き、大阪、東京などに物流拠点が点在していました。本社を神戸に移転するにあたり物流拠点も1カ所に集約して作業効率を高めようという発想で始まり、最終的に情報、物流、お客さま窓口がエスパスに集約されることになりました。
―大きな外観もユニークですね。
武元 建物の全景は船の形をイメージしています。アトリエ感覚をコンセプトに、ギャラリーやホール、屋上ガーデンなどを設けていますので、普通の工場や配送センターのイメージではないかもしれませんね。
―外から、色とりどりのバッグが流れていく様子が見えますが、あれが〝フェリシモご自慢〟のスカイポーターですね。このシステム導入までには試行錯誤もあったことでしょう。
武元 フェリシモの情報を提供して数社の専門企業でコンペをしました。スカイポーター・システムはその中の1社からの提案です。私たちがやりたいと考えていたことにピッタリ合うものでした。機械そのものはドイツから輸入されたものを使っています。
―スカイポーターのどういうところが良かったのでしょうか。
武元 まず、スカイポーターの下のスペースを有効に使えることです。従来のコンベアでは空間がさえぎられますが、4階から1階までシステムが繋がっていて、分断されることがありません。また、横向きに流れていくコンベアと違って、ハンガーでぶら下がっているスカイポーターのバッグは縦向きですから、倍以上の数を流すことができ作業が効率的に進みます。
また扱う商品が増えたり、商品構成が変わったりしてもラインを切ったり繋いだり、分岐したりが自由にできます。1つのバッグに入りきらないたくさんの商品をお買い上げのお客さまの場合は、従来は伝票と突き合わせて手作業でマッチングしていましたが、バッグを2つ、3つ…と自動でマッチングできるように最近、更に改良されました。
―情報施設でもあるのですが、どのように顧客情報を管理、処理しているのですか。
武元 2つのコンピューターがあります。1つは商品の流れや値段、仕入れ先など商品管理及び、住所や注文状況などお客さまの情報を管理するホストコンピューター。もう1つはエスパス独自の物流コンピューターです。この2つのコンピューター間で、例えばお客さま情報と商品入荷情報などを相互にやりとりしています。空中を流れているバッグ一つひとつには、お客さまの情報を書き込めるタグが付いています。その情報を読み込んでバッグが必要な場所へ移動していき、さらにそれに従って人がピッキング作業をしています。ですから、商品間違いなどはほとんど起きることはありません。
―環境やエコへの配慮は?
武元 常時使う照明は、蛍光灯を全てLEDに取り替えました。従業員が普段使用する給湯に太陽光発電を利用したり、雨水をトイレの水や庭の散水に利用したりしています。
また、北海道、東北、関東、九州など地域をまとめてJR貨物を利用して運んでいることは、もちろんコスト削減の目的もありますが、CO2削減につながっていると思います。
―最近はこのスペースを利用して家事サポートサービス「カジサポ」も始めたそうですね。
武元 毎月1回、お客さまへ荷物をお届けする物流が空のままで帰って来ます。その便を利用すればビジネスが生まれるのではないかという発想から始まりました。閑散期のビジネスであり、しかも家事お手伝いでお客さまに喜んでいただけます。クリーニングの預かりと返却、コートのような季節のものや布団のようなかさ張るものは長期保管をします。
―これからのエスパスについて。
武元 現在、ホストコンピューターがリニューアル中ですので、それに合わせてこちらのコンピューターもリニューアルして、今後また新たなシステムを構築していく予定です。
また毎年、小中学生が見学に来ますが、せっかく来てもらうのだから仕事体験もしてもらっています。もっと地域の皆さんにフェリシモのことを知っていただけるよう、今後も地域交流を深めていきたいと考えています。
―ユニークなシステムをご紹介いただきありがとうございました。今後もエスパスフェリシモの新たな挑戦に期待しています。
武元 康夫さん
(株)フェリシモ CSフルフィルメント本部
物流サービス部 部長
1977年フェリシモ入社。学生時代のアルバイトをきっかけにフェリシモに入社。その後商品課などを経て、当時大阪に拠点を持っていた同社の大東市の物流事業所時代から拡大を続けてきた物流システムの構築に中心的役割を果たす。