4月号

私の神戸創生論|永吉 一郎 さん(神戸デジタル・ラボ 代表取締役)
まちのポテンシャルを繋ぐ
先日神戸市は、2020年までのマスタープランとして「神戸2020ビジョン」を策定し、テーマに「若者に選ばれるまち」を掲げた。市政方針ともいえる同ビジョンにおいて明確なターゲットを掲げたことは画期的なことであり、若者離れが進む現状解決のためにあらゆる手段を取ると宣言したものとして評価できる。
現に、神戸市は政令指定都市で2番目に大学の数が多いものの、彼ら「若者」の多くは卒業後に神戸を離れ、東京や大阪などの大都市へ「通り過ぎ」てしまっている。この現状を変えるため、今の神戸に必要なのは「通り過ぎ」ていた若者に「引き続き留まりたい」と思ってもらえる魅力づくりであり、同時に今まで「集まる」ことすらなかった若者が「あのまちを訪れたい」「あのまちに行けば自分のやりたいことができる」と思ってもらえる魅力づくりであろう。理想は、この両者を同時に進めることであるが、後者の魅力づくりに力点を置いてビジョンを始めるべきだと提案したい。その結果として、前者の魅力づくりにも好影響を与えうるだろうし、より着手がしやすい施策だと思うからだ。その魅力づくりのキーワードは「イベント」である。
実は、神戸には既に興味深いイベントが多数開催されている。しかし、それらは世界的に見ると知名度がなく、ほとんど知られていない。であれば、これらを一つのより大きな名称の下で同時期に開催し面的に訴求することで、それらの価値は単独で開催するよりも何倍・何十倍にもなりうるし、国内外から注目されるようにもなるのではないだろうか?
このアイデアは、ゼロから何かを生み出すという難易度の高いものではなく、既にあるまちのポテンシャルを「つなぐ」というだけのことであり、しかし、だからこそ神戸のまちがより魅力的に輝く具体的な第一歩となると考えている。読者のご意見をお待ちしたい。

若者たちに「留まりたい」「訪れたい」と思ってもらえるような魅力づくりである。そのキーワードは「イベント」 画像提供/神戸市

神戸では「神戸ルミナリエ」をはじめ、興味深いイベントが多く開催されている

「南京町春節祭」。毎年多くの外国人が観光に訪れる

生産者と消費者の交流イベント「ファーマーズ・マーケット」。既存の街のポテンシャルを「つなぐ」ことで、神戸のより一層の輝きにつながる

神戸再生の可能性を秘める東遊園地で開催された「アーバンピクニック」

永吉 一郎(ながよし いちろう)
1962年、神戸市生まれ。広島大学卒業後、京セラ株式会社にて精密機器、通信機器の開発に従事。1991年、父親の急病に伴い帰神、広告代理店の社長に就任。震災後インターネットの可能性を感じて株式会社神戸デジタル・ラボを設立。現在はセキュリティからIoTまで幅広く手掛ける