11月号
輝く女性Ⅱ Vol.6 オペラ歌手 株式会社JOC専務 小川 典子 さん
インタビュアー・三好 万記子
人気料理サロン「ターブルドール」代表の三好万記子さんがホスト役となって、
輝いている阪神間在住の女性にお話を伺うシリーズ。
おもてなし上手な三好さんとの対談から、どんなオイシイお話が飛び出すことでしょう。
オペラ歌手 株式会社JOC専務 小川 典子 さん
子供の頃から歌うことが好き。姉とよく二重奏をしていました。
自然に副旋律がとれる、“耳の力”に自信ありです。
ビジューやパールの装飾が上品で愛らしい神戸発ファッションブランド「Chesty(チェスティ)」。同ブランドのデザイナー兼プロデューサーの小川淳子さんを姉に持ち、ご自身もブランドのPRや錚々たる企業とのコラボ企画を担当。その一方でオペラ歌手としても活躍し、10月5日に開催された「ターブルドール創立15周年パーティ」では、身体を楽器とするオペラで鍛えられた美声による最高のパフォーマンスで、ゲストを感動の渦に巻き込みました。
…小川さんの歌声を初めて聞いた時は、お世辞抜きに心から感動しました。私のか細い声を大にして、ぜひ聞きに行くべき!と皆にお勧めしたいほど。ソロ活動に加えて、西日本で最も歴史のあるオペラ団体の「関西歌劇団」でも活躍され、また、童謡や唱歌といった懐かしいメロディーなど古き良き日本の心を歌い継いでいこうと、関西歌劇団のメンバーが集まって昨年結成されたヴォーカルアンサンブル「ノスタルジア」での活躍も大変注目されていますが、そもそも音楽の世界を目指されたきっかけは?
昔から歌うことが好きな子供でした。幼稚園の頃から自然とビブラートをかけることができ、それが面白くて大声で歌っていました。姉がソプラノで主旋律を歌うと、私が副旋律を考えて二重唱を歌うというコトを遊び感覚でしていました。幼少期に父から映画音楽やクラッシックを聴かせてもらい、またヤマハ音楽教室に通っていたこともあり、いつのまにか “耳力”を鍛えられていました。楽譜を読む力よりも、たくさんの音楽を耳から“体験”して、音楽の表情やニュアンスを聴きわける耳の力を養いました。“耳力”は音楽にだけではなく、語学力やコミュニケーション能力にも大切だと感じています。断片的な情報があふれている今の時代ですが、時間と共に流れるその場の空気や生の音に直に触れて体感する、その体験をすることで、人の心、感情も大きく動き、育まれるように思います。
…確かに簡単に検索して知識として得た情報はすぐ忘れてしまいますが、リアルに“体験”した情報や、そのときの感情はいつまでも記憶に残りますよね。
小・中・高と通っていた神戸海星女子学院は、生徒にいろいろな体験の機会を与えて下さいました。礼拝やミサの時などに皆の前で歌う機会を何度か頂き、神聖な時間に自分の声が役に立っていることが嬉しかったことを覚えています。また、芸術鑑賞会での素晴らしい歌とその歌詞に感動したこともあり、進路を決める際、私は音楽を学び、音楽と共に生きていきたいと思い、神戸女学院大学音楽学部へ入学。声楽を専攻し、プロを目指して本格的に学びました。大学卒業後の選択肢にファッション業界への道は全くなかったのですが、姉が「Chesty」を立ち上げたことで、私も手伝うことになり、昼間はファッション、夜は音楽関係と、二つの仕事を掛け持ちしていました。ブランドの仕事では、私は姉の通訳的な役割。デザイナー兼プロデューサーとして活躍する姉の世界観を、プレス関係の方やコラボレーションする企業様にわかりやすく説明します。夢あふれる素敵な世界を創りだす姉と、現実的にブランドストーリーを伝える私。今は、仕事で二重唱をしているような感覚です。
…「Chesty」といえば、仲良し美人三姉妹がそれぞれの役割を果たし、同じ目標に向かってどんどん大きくなられていることでも有名ですよね。姉妹だからこそ、理解しあえるすばらしい連携プレーですね。
姉は、姉妹それぞれが切磋琢磨し、輝くことを応援してくれています。私と音楽のことも深く理解してくれていて、舞台などで集中しなければならないときは歌の仕事を優先させてくれます。どちらも私にとって欠くことができないため、ファッションの仕事も楽しみながらこなしています。何より姉が私に似合うお洋服をデザインしてくれるのが嬉しく、今日のニットも私のリクエストなんです。音符や鍵盤にビジューを散りばめたデザインがとってもお気に入り。チェスティのお洋服は心を弾ませ自信をつけてくれる特別なものです。
…「フィガロの結婚」のケルビーノや、「皇帝ティートの慈悲」のセストといったメゾソプラノ歌手として活躍されるうえで楽しかったことや、逆に苦しかったことは?
現在約200名が所属する関西歌劇団は、指揮者、朝比奈 隆先生を中心に関西の声楽家の諸先輩方によって創立されました。研修は厳しいものでしたが、とても新鮮でした。音楽を中心に構成されたオペラは様々な要素を含んでおり、総合芸術といわれています。時代背景、国籍、風習など、それを踏まえた上での役柄に応じた立ち居ふるまいや、言葉の言い回しなど大変勉強になりました。例えば、若い私が年老いたイタリアのマンマ(母親)の役を演じた時は、指1本からその年齢にふさわしいゆっくりした動き、わが子を想う愛情、そしてその表現、またその母という存在がどういうものなのか、などなど、全てを理解し、イタリア人の高齢の女性を演じなければなりません。表現の中の一瞬一瞬に生まれる瞬間芸術を日々追求しています。異国独特の空気を肌で感じ取りたくて、結婚後に主人と愛犬を置いてイタリアとフランスに留学しました。短期間ではありましたが、生活の中での自然な言葉のニュアンス、空気感、お食事…全てが素晴らしい経験でした。
…貴重な時間を過ごされたんですね。暮らすことって、その国の文化を理解するためにとても大切なことだと思います。昔の神話に、その国の物を食べる=その国の住人になるという考えがありますから。
先生がいつもおっしゃっている“食べ物が人をつくる”というお考えは、正にその通りだと思います。子供が生まれてからは特に口にする食品の成分を細かくチェックするようになりました。料理サロンではお二人の息子さんを育てられた先生をはじめ、人生の先輩方に子育てのことなど、お料理以外のこともいろいろと教えていただいています。サロンを通して、ご縁が広がっていくことも楽しみの一つです。今はまだ子供が小さいので、子供の事を最優先にしていますが、今後は音楽を通して、私の考えや想いを大切に、情報発信や社会貢献をしていきたいと考えています。子育てを通して教育について学ぶことが沢山あり、それを活かして何ができるか、今はワクワクしながら色々と計画しています。
…小川さんは美人で華やかなイメージながら、実は料理に子育て、お仕事と何ごとにもまじめでコツコツと努力を積み重ねておられますよね。目標を実現する方法を早くから検証され、到達するまでの過程もエンジョイされている。5年後、10年後、どのように進んでいかれるのか、とっても楽しみです。
三好さんからの質問コーナー
Q.ハマっているグルメや気になるお店はありますか。
A.今夏「Chesty」のショップに隣接して、アフタヌーンティーやフレンチをベースとしたお食事を楽しめるカフェ「Ch Tea Room Kobe」を開業しました。
11月から私たち姉妹が大・大・大好きな本高砂屋さんの“きんつばアンフィーユ”がお店のメニューに期間限定で仲間入りします。伝説のスイーツ店「御影高杉」の高杉シェフのパイ生地で、高砂きんつばの餡とクリームをサンドした『和と洋の融合スイーツ』は驚くほど美味しいんです!是非お試し頂きたいです。
Ch Tea Room Kobe公式インスタグラム https://www.instagram.com/ch.tearoom/
小川 典子
1981年生まれ。神戸海星女子学院小学校から同高等学校、神戸女学院大学音楽学部声楽専攻卒業。文化庁・芸術団体人材育成支援事業オペラ「修道女アンジェリカ」公爵夫人役にてオペラデビュー。「カヴァレリア・ルスティカーナ」ルチア役、「ファルスタッフ」メグ役等、多数のオペラ、コンサートに出演。2010年「フィガロの結婚」ケルビーノ役、2016年「皇帝ティートの慈悲」セスト役では大阪文化祭奨励賞を受賞。第13回大阪国際音楽コンクール、エスポアール賞受賞。第10回神戸新人音楽賞コンクール、最優秀賞、聴衆賞を受賞。荒田祐子氏に師事。関西歌劇団正団員。ヴォーカルアンサンブル「ノスタルジア」メンバー
三好 万記子(みよし まきこ)
株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母。