10月号
連載コラム 「続・第二のプレイボール」|Vol.4
釣り好きのマスターと慕われる元プロ野球選手・大原和男さん
文・写真/岡力<コラムニスト>
創業34年になる一軒の焼鳥屋、カウンター越しで威勢よく料理を提供する大原和男さんは阪神タイガースに在籍した元プロ野球選手である。
神戸市垂水区出身、幼少期は三角ベース程度だったが中学に進学すると本格的に野球を始める。当時、大阪市内の公立に通っていたが兄の助言もあり名門・浪商中学校へ転校。特にプロを意識せず野球漬けの毎日をおくる。転機が訪れたのは高校3年の時。阪神のスカウトから声がかかり育成選手として練習に参加。翌年の1966年に行われたドラフト会議で10位指名を受け正式に入団した。ちなみに1位指名は、江夏豊だった。オールラウンドプレーヤーだった大原さん。早々に捕手としてブルペンに座りジーン・バッキ―や村山実といった大投手の球を受けた。1969年からの3年間は、一軍の試合に出場。しかしシーズンオフに大洋ホエールズからトレード話が浮上。同時期に父親が他界した事もあり関西を離れる事ができずユニホームを脱いだ。
再就職先が見つからず路頭に迷う日々。そんな時、意外な人物が手を差し伸べた。「村山実さんが料理好きだった私をホテル阪神に紹介してくれました。それがきっかけでフランス料理のシェフとして第二の人生がスタートしました。ただ、独立の際はコストや手間を考えて焼鳥にしました(笑)」。
メニューは基本的にお任せ。日によって須磨、明石で釣った新鮮な魚がアテとしてふるまわれる。「若い時は、好きな野球でお金が貰えて幸せだった。選手時代に培った負けない気持ち、諦めない気持ちを大事にしたい」。意外だが店内には、野球に関するものが一切ない。今日も料理人として謙虚な姿勢で板場に立ち、炭火の前で勝負している。
炭火やきとり「大ちゃん」
大阪府吹田市南金田2-5-14
12時~13時30分(ランチ)・17時30分~11時
TEL.06-6384-7904 日曜定休