8月号
輝く女性Ⅱ Vol.3 大同門株式会社 代表取締役社長 フォーリー 淳子さん
インタビュアー・三好 万記子
人気料理サロン「ターブルドール」代表の三好万記子さんがホスト役となって、
輝いている阪神間在住の女性にお話を伺うシリーズ。
おもてなし上手な三好さんとの対談から、どんなオイシイお話が飛び出すことでしょう。
大同門株式会社 代表取締役社長 フォーリー 淳子さん
焼肉レストランのパイオニアがさらなる挑戦!
「食ビジネス」の創造を通して、関西を元気に。
大同門の歴史は1968年、大阪・梅田新道から始まります。焼肉といえば路地裏&煙モウモウのホルモンしかなかった時代に、フォーリーさんのお父様・創業者の西村義博さんが、女性や家族連れでも楽しめる焼肉レストランをオープン。焼肉定食、つけだれ、無煙ロースター等々、新しい焼肉文化を次々と創案。日本人の外食生活と「焼肉」の距離を一挙に縮めたのが「大同門」なのです。
…日本初の焼肉レストランチェーン「大同門」の創業者の長女として生まれ育ったフォーリーさん。西村家の聡明な美人三姉妹は地元西宮でも有名で、同じ中学・高校に通う私にとって、フォーリーさんは憧れの先輩でした。若い頃から、いずれは家業を継ぐという考えはお持ちだったのですか?
いいえ、その逆です。親の力を借りずに自分の力で何かを成し遂げたい、家業とは一切関わらないと心に決めていました。男女雇用機会均等法が施行された時代、当時流行っていたキャリアウーマンを目指して、通訳、そして起業…と無我夢中で働いていましたね。しかしBSE問題などのあおりを受けて、大同門の業績が悪化。民事再生法の適用を申請する事態に陥ったことを受け、自身が代表に就任し、再建に努めました。
…「ファミリービジネスに関わらない」。心の葛藤はなかったのでしょうか。
迷っている余裕はなかったですね。祖父から受け継いだ「大同門」創業の土地を手放さざるをえなかったとき、父が家族の前で泣いたんです。昔堅気で厳格な父が流す涙を見て、西村家の長女として、大同門を失うことはあってはならないと。他の人の手に渡って初めて、大同門は両親の生きてきた証であり、自分たちを育ててくれた人生の一部、DNAだったことに気が付いたんですね。支えてくださった関係者の皆様や、ご支援、ご愛顧くださったお客様のためにも、大同門というブランドを守ろうと腹をくくりました。
…そうして妹で取締役副社長の綾城紀子さんと二人三脚で事業を再構築。大企業のトップとして、迷わず、つき進まれる原動力はどこにありますか。
迷うことだらけですよ(笑)。だからこそ目標を明確にして、ミッションとして掲げています。おかげさまで無事、今年4月に創業50周年を迎えることができました。これからの50年も皆様の記憶に残るブランドにしていくことが私の使命。関西を代表する外食産業であったことを誇りに思い、今後も新しいカタチで「関西の食」を引っ張っていける会社を目指したいと考えています。
…お金や人間の流れの東京一極集中が加速しています。
関西経済を活性化するためには関西の企業が元気にならないと。父は「時代に先駆け、誰もが手掛けたことのないものを発掘し、事業化する。新しいものを作らねば商売をやる意味がない」と語っていました。その意志を引き継ぎ、激しく変化する顧客の消費動向を先読みし、外食流通の生活提案者として新しい食文化や食生活を関西から創造・発信していきたいと思っています。
…生活や文化に欠かせない「食」で関西を元気にできそうですか。
今、注目しているのは拡大する「中食」市場です。共働き世帯の増加など、ライフスタイルの変化を背景とした「時短需要」を反映した結果だと思いますが、そのニーズに応えられるビジネスの展開が飲食産業を元気にするひとつの鍵になりそうです。
…確かに女性の社会進出に伴ってライフスタイルは大きく変わりつつありますね。お稽古の世界でも、昼間のレッスンに生徒さんが集まりにくくなってきています。例えば、お仕事帰りに寄れて、作った料理を持ち帰って夕食に活用できる教室や、場所を選ばないウェブラーニングなど、時代のニーズにあわせてビジネスも変化させていかないと。
消費者の価値観の変化を読み取っていくことが大事ですよね。食事といっても、ただ栄養素をとるだけのものではなく、誰のための食事か、誰と食事をしてどんな喜びをわかちあいたいとか。いいレストランの条件として料理、サービス、雰囲気、お客様という舞台を構成する4大要素があるように、「中食」のメニューも、味、安心や安全、食材、コストパフォーマンスなど、時短を必要とする女性が価値を感じる要素と、そのバランスを考えて開発していかなければならないと思います。
…世の中のお母さん達が後ろめたさを感じず(笑)、堂々と買える惣菜を作ってほしいです。子供やご主人、誰かの笑顔のためにという理由付けがほしいですね。ちなみにフォーリーさんのご主人は超美形でハーフの息子さんもとってもハンサム。愛するご家族のために(笑)、毎日夕食を作られているとか。
主人は食べることが好きなので、どんどん横に膨らみつつあります(笑)。芦屋の「メツゲライクスダ」の燻製ベーコンの旨味と香りが効いたレンズ豆のサラダなど、家でどうしても出来ないものは購入もします。本場顔負けのシシリー料理を楽しめる「オステリーナ ダ ジッジ」や、力のあるフレンチをいただける「メゾン・ド・タカ」など、週末は外食も楽しんでいますよ。三好さんは食に関する感性が鋭くてグルメ情報も豊富。いつもいろいろと教えてもらって助かります。
…フォーリーさんは大きな組織の代表、私の料理教室は主婦の方が中心という具合に、全くステージが違うからこそ、情報を交換することで新たな世界も広がります。ニッチな世界でも価値があれば認めてもらえる今の時代。関西からでも十分世界に出ていけるチャンスはある。関西から日本全国へ、そして世界へ広がっていく、食の新しい価値、トレンドづくりをぜひフォーリーさんに先導していってもらいたいと思います。
三好さんからの質問コーナー
Q.ハマっているグルメや気になるお店はありますか?
A.肉業界の人間ながらヴィーガン料理が気になっています(笑)。
食事サラダやパワーサラダ人気がさらに高まると思います。野菜という観点からは中近東料理にも注目。スパイスを使った野菜がたっぷりの料理で、お肉料理とのバランスも絶妙。ヘルシーで低カロリー。いいことだらけです。
フォーリー 淳子(フォーリー じゅんこ)
神戸女学院大学卒業、西宮市在住。大阪府知事付通訳として大阪府庁に勤務。府庁退職後は、同時・逐次通訳者として活動。33歳で英国IT企業の日本総代理店を立ち上げる。同企業を売却後、1998年にAIをベースとしたレコメンドサービスを提供するシルバーエッグ・テクノロジー(株)を人生のパートナーでもあるト-マス・フォーリー氏と設立。同社は2016年に東証マザースに上場。2010年、民事再生にてファンドの手に渡った家業のレストランチェーン「焼肉の大同門」を買戻し、社長に就任。2015年シルバーエッグ専務取締役退任。
三好 万記子(みよし まきこ)
株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母。