1月号
親和に吹く新しい風
親和中学校・親和女子高等学校
校長 向田 茂先生
昨年、公立高校から親和学園に迎えられた向田先生。生徒たちとの触れ合いを通し、新しい教育の現場において、改めて感じる校祖の言葉の重みについてお話しいただいた。
教育の原点を「寺子屋」にみる
―昨年4月に校長に就任されてから、そろそろ1年。この間、向田先生は、すべての先生方の授業風景をご覧になったとか
「時には刺激も必要。外からの視点で見ることが、授業のレベルアップにつながってくれたらいいな」と思い、全員の先生の授業を見て回りました。先生方は、ご自身の授業を見られるという機会があまりありませんからね。
ところが、初めは緊張していた先生方も終わったら「ありがとうございました。何かアドバイスを下さい」と言われるのですが、なかなかいい授業をしているなあと感心させられ、特にアドバイスすることもなかったように思います。生徒たちはみんな、非常に静かでまじめに授業に取り組んでいたのが大変印象的でしたし、授業もとても家庭的な雰囲気で、親和の校風そのものだと感じました。
何より、生徒たちが喜んでくれたのはうれしかったですね。「校長先生、授業に来てくれてありがとう!」などと言ってくれました。「ちゃんと自分たちのことを見てくれているんだ」という安心感を生徒たちに与えることができたのは意外な成果だと思っています。
―少子化によって、同世代の友人たちと本気で触れ合う機会が少ない子どもたちが増えているのではないでしょうか。
中高一貫の6年間、同じ仲間とともに、集団の中で学んでいくことは、将来につながる人間の幅が広がることにつながります。しかしそのためには、私たち教師がしっかりと一人ひとりを見守り、「学びの場」を設けなくてはいけません。
私の専門は日本史ですが、日本の教育の原点は、江戸時代の「寺子屋」にあるのではないかと思っています。渡辺崋山の絵で見る寺子屋は、けんかをしたり、学習に飽きていたずらをしたりしている子もいて、色々な子供たちがいる雑然とした中で、先生は工夫しながら一人ひとり手厚く見ているのだろうなという雰囲気が伝わってきます。もちろん環境が全く違いますから、そのまま現代に置き換えるわけにはいきませんが、学ぶべき精神がそこにあるような気がしています。
一人ひとりに適した環境で将来を見すえたカリキュラムを
―親和らしい「学びの環境」とは、そんな寺子屋に通じる家庭的な雰囲気がありそうな気がします。
「家庭的な、手厚い指導」というのは、親和の教育の原点です。
現代は、生徒や親御さんが学校に求めるものが多様化しています。それら一つひとつに、私たちは真剣に応えていかなくてはいけません。
従来は、大勢の生徒を集めて効率の良い教育をするのが学校の使命と考え、それがまた時代の要請でもありましたが、今はそれとともに、多様化したニーズに応えるために、一人ひとりに合わせた教育が求められているのではないかと思います。
現代にも通じる校祖の言葉
―新しい年を迎えていかがでしょうか。
昨年、親和は創立125周年を迎えました。それを機に校祖友國晴子先生の言葉を見直してみました。「教育は消極的であってはならない」「少数の生徒にも渾身の誠を込めた精神教育を施す」。これは今の時代でも大切なことだと改めて感じています。
少子化の中、子供たちは日本の貴重な財産です。グローバルな社会で活躍できる人に育てていくのは私たちの使命です。校祖の教えを受け継ぎ、更に新しい風を取り入れながら、親和は前へと進んでいきます。
向田 茂(むかいだ しげる)
親和中学校・親和女子高等学校 校長
1974年東京教育大学文学部卒業。西宮市立西宮東高校教諭などをへて、2003年兵庫県立尼崎高校校長就任。以来、兵庫県立芦屋高校、兵庫県立神戸商業高校、兵庫県立姫路西高校の各校長をつとめる。2012年4月より現職。