7月号
harmony(はーもにぃ) Vol.41 新型出生前診断②
ダブルスタンダードの疑問
出生前診断で当初から問題となったのは、ダウン症と判定された場合に中絶をしてよいのかどうか、ということの是非です。
胎内に芽生えた命を、ダウン症ということで産まない選択をするのは、今社会で暮らしているダウン症の人たちの存在を否定することにつながるのではないか、という問いかけです。ひいては優生思想を助長するのではないかという批判です。
この考え方に対して「生まれる前の問題と、生まれてからの問題は別」という「ダブルスタンダード」(二重規範)の考え方が主張されてきました。
「障害を持つ子どもの出生を避けるという個人の考えに基づいた選択と、障がい者の施策を充実させるという社会全体の選択のどちらも認めていけばそれで良いのではないか」という考え方です。
しかし、障害のある子どもの出生を避けたいという感情は社会環境の充実とはあまり関係があるようには私には思えません。実際、福祉施策を進めている国々では障がい児の出生を予防するためのマススクリーニングが進められているのが現実です。
誰もが納得のいくような説明は出来ませんが、陽性と診断されてから自分たちの決断でダウン症の子どもを出産し、こころから慈しみながら育てている家族もいます。
私の周囲にも、ダウン症のこどもたちの養育を積極的に引き受けている里親も数家族います。
将来に困難が予想されても、それにもかかわらず、障がいを持つ子どもとの暮らしを選択する人たちも少なからずいるのです。それはダブルスタンダードというような理屈を超えたもののように思えます。
〈次号へ続く〉
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