2020年
11月号
11月号
神戸のカクシボタン 第八十三回 いろんな街の雰囲気を伝えたい イラストレーター・千秋育子さん
写真/文 岡 力
「神戸での仕事はやはり上品な方向性に行くよう意識しています。食料品の場合は、陳列された際の見た目にこだわりますね。スーパーマーケットの仕事は安心・安全な感じが伝わるように心掛けています」。関西を拠点に世界で活躍するイラストレーター・千秋育子さんの手にかかれば至る所がキャンバスだ。
きっかけは、芦屋で50年続くマドレーヌのパッケージデザイン依頼だった。着手にあたり製造現場を見学。職人による手仕事に感銘を受け「温かみ」をコンセプトに描き上げた作品は話題となった。今から15年ほど前に転機が訪れる。高級食材を扱う「いかりスーパーマーケット」からオファーを受けプライベートブランドの企画に携わった。ギャラリーと化した店内には手掛けた商品がずらりと並ぶ。今にも香りが漂ってきそうな「ホットケーキミックス」やみなとまちをモチーフにした「フィナンシェ」は、手土産にも最適な逸品である。他にも兵庫県下の「ヤクルト自販機」や淡路島にある「グランシャリオ北斗七星135°」(グランピング風コテージ)のツール制作など活動は多岐に渡る。
プライベートは、元町でインテリア小物雑貨のショッピングにはじまる。輸入ウォールペーパー、古着のお店を巡りながらスイーツも堪能。散策を介して街の細かな情報を調べ作品に反映している。現在、淡路島の西海岸に点在する商業施設のイラストマップに取り掛かる千秋さん。今までにない唯一無二の「街色」がまた新たに誕生する。
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載「合間日和」(神戸市消防局監修・雪)「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「あての履歴書」(大阪スポーツ)