9月号
わたしの神戸デザイン 最終回
メディアミックスで地域貢献
SRCグループ
代表取締役社長
横山 剛さん
―学生時代に起業し現在に至るまでの経験が生かされていることはありますか。
横山 過去の失敗や成功に全く興味がないんです。たくさん失敗もしているはずなのですが…(笑)。一つのことを成し得たら、次のことに目が向いてしまいます。日々、失敗や成功を重ねているうちに、プロセスだけはノウハウとして蓄積されているのかなとは思います。
―いろいろな発信手段を扱っていますが、対象とする人は?
横山 メディアごとにユーザーが異なります。私たちが持つ媒体で全ての性別、年齢層がカバーできればいいと思っています。
―難しいユーザー層はありますか。
横山 男性で働き盛りの年齢層です。30~40代男性向けのフリーペーパーでの成功事例はあまりないようです。難しいのでしょうね。
―Kiss‐FMを通じた地域貢献はどうのように考えていますか。
横山 人、企業、文化、スポーツという4方向で考えています。放送局は、公共の電波を預かっている限りは地域に貢献するために存在するものです。
また、ラジオは、リスナーやスポンサーに常に向き合っていかないといけないと思っています。いかにリスナーに楽しんでいただくのか、企業の広報に適正価格でお役に立つかが課題です。発信する情報で人や企業を動かせば、地域社会に貢献できます。そのための一つの方法が、ラジオが持っているのはブランド力を利用することです。例えば、兵庫県下の20代以上の9割以上はKiss‐FMの存在を知っていますが、その人たち全てが放送を聞いているかといえば、そういうわけではないでしょう。Kiss‐FMのこのブランド力が残っているうちに、フリーペーパーを発行したり、ウェブコンテンツを充実させたり、いろいろな方法で情報発信をすることを急ピッチで進めています。
―転職・就職に関して、今の傾向はどうですか。
横山 数の採用から質の採用へという傾向が更に顕著になっています。ホワイトカラーと呼ばれる業種はかなり採用を絞り込んできています。そういう意味では就職難です。年齢に値するキャリアをしっかり持っていない人にとっては転職・就職は非常に難しいでしょうね。
―神戸の情報誌「Recipe れしぴ」の特徴は?
横山 適正な価格の広告で、十分な集客効果がある「Recipe」として育てています。あちこちに広告費を使うことなく、「Recipe」だけで集客できればお店は繁盛し、とても効率的でしょう。そこで神戸という狭いエリアで、非常に多くの部数を発行し、クオリティーにも非常に気を遣っています。おかげさまで、「Recipe」だけに広告を出しているというお店も徐々に増えてきています。
―神戸らしさが出ている情報誌ですか。
横山 神戸らしさを出せる情報誌にしようと心がけています。いわゆるチェーン店は少なくて、地元の人が〝自たちの力で〟良いものを提供しているお店が中心です。
―地元スポーツチームも応援されていますね。
横山 ヴィッセル神戸とオリックス・バファローズはスポンサーとして応援しています。アメフトチームのエレコム神戸ファイニーズは事務局のお手伝いをしながら、傘下にある子どものチアリーディングスクールの運営を支援しています。今話題のアイナック神戸や、フットサルチーム、バレーボールチームなどもKiss‐FMで番組コーナーを設け、応援しています。
―今後のメディアミックス戦略はありますか。
横山 目的は、人が動くことによって地域経済が活性化し、地域にちょっといいことが起きて、人が幸せになることです。そのためには、どういう媒体をどのように使えばいいのかという組み合わせを考えることです。自分たちが今後どうしたいのかを考えるのは企業のエゴだと思います。まず、「皆がどうしたいのか?」を第一に考えて、必要な情報を発信していきたいと思っています。
―新しい組み合わせにも挑戦しているのですか。
横山 時代はグローバルからローカルに戻りつつあります。全国展開している大手ブランドがローカルにも目を向け始めていますので、それら既存のブランド力とも組み、うまく活用しながら情報発信をしたいと考えています。
―神戸のブランド力も大きいですね。
横山 他の地域から見れば、「神戸ブランド」は、それだけで充分な価値があるので羨ましい限りだと思います。しかし私たちがそれに甘えてしまっては危機感が生まれにくく、逆にそれが弱点にもなりかねないと私は思っています。神戸の皆が本気で地域の活性化に取り組めば、今の何倍も良くなるのではないでしょうか。神戸を元気にしようと多くの方が、いろいろな活動をされています。私たちも情報発信会社としてそれらの活動を広報し、応援しようと頑張っています。
横山 剛(よこやま たけし)
SRCグループ 代表取締役社長
甲南大学文学部卒。大学在学中に起業。その後リクルート広告事業を開始しリクルート社の神戸事業所との合併等を経て、情報誌Recipe等の出版事業、人材紹介事業、スポーツ支援事業等を通じて一貫して地域と共に発展すべく事業を展開。平成22年KissFMKOBEの事業再生の為、兵庫エフエム放送(株)を設立。