2011年
9月号

世界でサステナビリティの実現を目指す|P&Gジャパン株式会社

カテゴリ:経済人

P&Gジャパン株式会社
サステナビリティ・チームリーダー
北野美英さん

未来を担う子どもたち
そして、女性を支援

―P&Gが進める「サステナビリティ」とは?
北野 目標は持続可能な社会の実現です。世界80カ国以上にあるP&Gの拠点を中心に「環境保全」と「社会貢献」活動という2本柱を軸にサステナビリティ実現に取り組んでいます。
 社会貢献に関しては、世界で共通して、未来を担う14歳未満の子ども達の生活や学習などを支援しています。2012年までに、世界中で3億人の子ども達を支援することを目指して活動しています。子供支援以外の活動は、それぞれの国が置かれている状況に合わせて活動を決めています。例えば今の日本では、東北の被災地への支援、また女性の出産後の仕事と子育ての両立支援です。

―学校表彰もされていますね。
北野 財団法人日本学校保健会が、学校保険活動に積極的に取り組み、顕著な成果を挙げている学校を表彰しています。P&Gでは、第1回から協賛しており、優れた取り組みを表彰することで、健康教育推進の支援をしています。

―女性の支援については?
北野 社内での女性活用推進の経験を社会に還元するため、2006年NPO法人【仕事と子育て】カウンセリングセンターを設立、運営を支援しています。
 その活動の一環として、2010年にNPOとP&Gが協働、神戸市と地域振興会が協力で、地域に住む育児休業中や、職場復帰を希望する女性を支援する施設「“輝く私”神戸RICステーション」を開設しました。カウンセリングを提供したり、職場復帰の際に役立つセミナーや、神戸市からの情報提供などを行っています。

環境に配慮した製品づくり

―環境保全は世界共通ですね。
北野 グローバル全体での目標を2020年に向けて設けています。石油原料の25%を再生可能な原料に置き換える、パッケージの削減、固形廃棄物を無くすなどの取り組みです。
 その一つに「お湯を使わない洗濯」という項目があります。日本人にはピンとこないかも知れませんが、欧米では水を一旦60度近くまで温めてから洗濯することが生活習慣になっています。水を温めるため、欧米では、洗濯時のエネルギー使用量が、製品ライフサイクル上もっとも高いことが分かっています。
 そこでP&Gでは、洗濯洗剤の「タイド・コールドウォーター」を発売して、水でも汚れはちゃんと落ちることを知ってもらい、社会そのものを動かしていこうとしています。電力会社とも協力してPRしてきた結果、徐々にですが浸透しつつあります。全米の全ての家庭の洗濯を水にするだけでも、アメリカが京都議定書で掲げた家庭におけるCO2排出削減目標の約8%の削減にあたると考えられていることから、意義のある取り組みであると考えています。

―日本ではどういう例がありますか。
北野 洗濯にお湯を使わない日本で、エネルギーと水の使用量を減らすにはどうすればいいかを考えるとまず、すすぎを1回にすることです。更に洗剤を濃縮することによって1回に使う量が少なくても同じ効果が得られるように濃縮すること。それによって輸送効率が良くなりパッケージに使うプラスチック量が削減され、更に詰め替えをするとごみの量も減らせます。
 今年6月初旬に新発売した「アリエール レボ」は、正にそれらを実現した商品です。さらに「洗浄力」に、「予防洗い」の機能もプラスしています。これは市場初です。子どもが付けてしまう食べ物汚れを、付いてしまってから洗うのではなく、「アリエール レボ」で洗うことで汚れを付きにくくしようというもの。しみ抜きの手間と時間を削減し、仕事と子育てを両立させる女性のお役に立てればと思っています。

―先日は京都大学の学生にも講演をされたそうですが、若い人たちの反応はいかがでしたか。
北野 今の学生さんが環境や社会貢献を理解し、企業選びの基準にしていることには驚かされました。「社会の理解と社内の評価方法を確立しなければ、社会貢献は持続できないのではないか?」という質問があり、社会貢献に対する関心の深さにびっくりしました。若い方たちが関心を持つことは、これからの社会で大切なことです。
 P&Gが展開している小学生対象の「環境教育の出前授業」では、社員が学校に出向いて、水の大切さや、節水の重要性などをお話ししています。これまでに、約8千人の子ども達に授業をしました。また、社員が出前で授業できない地域には、教材を無料で配布しており、全国で6万5千セット以上の教材を届けました。

―ダイバーシティもP&Gの大きな柱ですが、世界24カ国、女性スタッフが64%という背景からでしょうか。
北野 ダイバーシティ(多様性)の活用はP&Gの経営戦略の一つとして位置づけています。性別、年齢、国籍、人種のように見た目で分かるものもありますが、見ても分からない個々人の個性の違いもダイバーシティです。当社でのダイバーシティ推進は、それらの違いを全て認め合い、能力を生かし合う会社づくりを目指しています。それらの取り組みの結果として、国籍や性別などの数値が高くなってきていると言えます。
 また個々人の多様な意見を活かすことで革新的なアイディアが生まれ、ビジネス成長にも効果があると考えています。例えば、消臭芳香剤の「ファブリーズ アロマ」は、米国で開発される際に、製品パッケージ作りなどに日本人の意見がとりいれられました。その繊細な細部にまでこだわる厳しい価値観により、より良い製品を生み出すことができました。それが現在では、世界共通製品として販売されています。

グローバル企業ならではの緊急援助体制

―東日本大震災での支援も早かったようですね。
北野 震災の経験を持つ兵庫県、神戸市は、行政が支援の方法や対応方法をよく知っておられます。地震が起きた金曜日に緊急支援物資として送り出せる製品を確認し始め、月曜日に行政に連絡し、現地のニーズを把握していただきました。
 どれくらいのスペースがあるのか、どのルートが最短かなども相談させていただき、火曜日には避難所に緊急支援物資を届けることができました。最初に必要だった物資が「パンパース」と「ウィスパー」などの紙製品でしたので、製造している明石工場から送り出しました。国内で製造していない手洗い洗剤や歯ブラシなどは、海外のP&Gから送ってもらったものもあります。

―被災地支援は続けているそうですね。
北野 緊急支援物資を届けた後も、被災地の状況の変化に合わせて、水が出る地域にはヘアケア製品、洗濯洗剤、台所用洗剤、髭剃りなどの製品を届けました。
 また、4月26日から始めた「アリエール あなたにエールを。プロジェクト」では、宮城県内の避難所の皆さんの洗濯物を女性スタッフがお預かりして、山形県に設置したランドリーセンター(洗濯機40台)で、洗濯・乾燥・たたんで、お返ししています。仙台の人材派遣会社から10名程度のスタッフを雇用して活動を展開しています。7月22日現在で1万7000着を洗濯してお返ししました。
 また、5月23日から始めた「パンパース うんと眠ろう。うんと遊ぼう。プロジェクト」では、子どもがたくさん遊んで快適に眠れる場所を提供してきました。これも女性ならではの視点から生まれたプロジェクトです。

国際都市・神戸に拠点を置くP&Gジャパン

―東京に本社を置く外資系企業が多い中、P&Gが六甲アイランドに本社と置いた経緯は?
北野 環境の良さが大きな理由です。インターナショナルスクールがあり、新幹線や飛行機でのアクセスも良く、神戸市の六甲アイランド構想がP&Gが求める条件にぴったり合ったのだと思います。また、国際都市・神戸で働くというイメージは優秀な人材確保のためのメリットにもなります。

―優秀な人材は集まっていますか(笑)。
北野 不景気と言われる中でも、お蔭さまで当社は伸び続けています。優秀な人材が頑張ってくれているのだと思います(笑)。

―まずは2020年の目標達成に向けて是非、頑張っていただきたいと思います。ありがとうございました。

六甲アイランドにあるP&Gジャパン(株)

節水・節電ができる洗濯洗剤「アリエール レボ」

東日本大震災後、緊急支援物資として輸送された 「パンパース」

北野 美英(きたの みえ)

P&Gジャパン株式会社
サステナビリティ・チームリーダー
1991年P&G入社、生産統括本部購買部へ配属。1995年からヨーロッパの紙製品購買担当としてドイツに赴任、2001年からは北米・南米の化学品購買担当として米国に赴任し、2003年からアソシエートディレクター。2010年9月に広報・渉外部へ異動し企業広報とサステナビリティ・CSRを担当。

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