4月号
第2回 コウベ フード カンパニー|損得ではなく、善悪で仕事に取り組む
損得ではなく、善悪で仕事に取り組む
マルヤナギ小倉屋本社
神戸に拠点を置く食品メーカーの若手経営者の勉強会「コウベ フード カンパニー」。同世代の事業継承者が集うことで、同じ悩みや課題を話し合う活気あふれる会となっている。第2回目となる勉強会が昨年末、マルヤナギ小倉屋本社で開催された。同社では昆布の老舗「小倉屋」ののれん分けとして1951年に創業、現在では昆布佃煮、煮豆、蒸し豆、お惣菜など多くの人気商品を世に送り出している。
まずは、会のメンバーでもある執行役員総合企画室室長・柳本健一さんがマルヤナギの歩み、主力商品、最近の取り組みについて紹介した。さらに本社内を見学、商品の受注から出荷を行う現場、また本社1階の直営店で売れ筋商品などについて紹介した。
この勉強会では、現社長が事業継承した当時の苦労話など直に伺えることも特長。柳本一郎社長は「私が社長を引き継いだ時、先代(父)の超ワンマン体制。利益率は高かったが退職者も多かった。社長就任時に取り組んだのは、損得ではなく善悪で仕事に取り組んだこと。安全・安心を大切に、従業員が働きやすい環境につとめた。先代の社長からは、『そんなに従業員を休ませてどうするんや』と叱責された」と当時をふり返った。
また、20年にわたり稲盛和夫さんに教えを請うた。やがて、その成果は「マルヤナギフィロソフィー」として、マルヤナギ小倉屋の経営の指針となった。
続いて、柳本勇治副社長が業界初となった蒸し大豆の開発と市場の創出について語った。当時業界では料理に使う大豆は水煮大豆だったが、健康志向の高まりもあり、茹でるよりも蒸すほうが栄養価は高く、大豆本来の美味しさを損なわないこともあり、蒸し大豆を開発し全社で育成に取り組んだ。
「当初は、売れ行きも芳しくなく苦労の連続。そんな中、『甘くないあの蒸し大豆、どこに行ったら手に入るか』という熱烈なファンレターをいただいた。その時に、食べてもらえれば蒸し大豆の美味しさを分かってもらえると、腹をくくることができた。全国の小売店で社員が一丸となり試食販売を行い、その数は5000店舗にのぼった」。そのような活動が実を結び、NHKでも紹介されたことも追い風となり、今ではマルヤナギの売れ筋商品にまで成長した。
質疑応答では、メンバーの一人から「現在は流通が強い時代。プライベートブランド(PB)の売上は大きいが、利益率がそれほど高くない」との悩みに、柳本副社長は「PBの製造も大切だが、他方で自分たちは何をつくりたいのかを考え、オリジナル商品の開発に力を注いだ」と。柳本社長、柳本副社長の話を聞くメンバーたちの真剣な眼差しが印象に残った。
また最近では、マルヤナギが開発した「蒸しもち麦」が注目を浴びている。工場のある加東市でもち麦の栽培をはじめた。地元の農業振興はもちろん、学校給食へのもち麦提供をはじめとして市民の健康増進を最大テーマに取り組んでいる。「山田錦に続く新たな特産品として、もち麦を」と、柳本副社長が思い描くマルヤナギの将来像を語った。