8月号
輝く女性Ⅲ Vol.2 「MonStork -モンストーク-」
ブランドディレクター兼デザイナー芹澤 麿衣さん
インタビュアー・三好 万記子
人気料理サロン「ターブルドール」代表の三好万記子さんがホスト役となって、輝いている阪神間在住の女性にお話を伺うシリーズ。
おもてなし上手な三好さんとの対談から、どんなオイシイお話が飛び出すことでしょう。
「MonStork-モンストーク-」ブランドディレクター兼デザイナー芹澤 麿衣さん
大切に守り、時代にあわせて進化させてきた
私流の「神戸エレガンス」を次世代に繋いでいきたいと思います。
…神戸の洋服文化の第一人者として知られる「ブティックセリザワ」。その“お嬢様”として育った麿衣さんは、どんなファッショナブルな幼少期を過ごされたのか、読者の方も興味津々ではないでしょうか。
私が小さい頃はファッション都市神戸ならではの活気が街にあふれていました。外国文化に日常的に触れることができると、インポートファッションを扱っていた当店や輸入雑貨のお店に大阪や東京からわざわざ来られるお客様が大勢いらっしゃいました。
私は幼い頃から父や祖父のフランス出張のたびにソニアリキエルやキャシャレルなど、インポートのお洋服を買ってもらい着ていました。服育として質のいい服、自分を美しく魅せる服を着る経験を積み重ねられたことには感謝しています。遊んで汚すから子どもは安いものでいいではなく、五感がとぎすまされた幼い時だからこそ、いいものを肌で覚える。着こなしの稼働域、モノサシを伸ばすために、子ども時代の洋服は大きなポイントになると思いますね。
…柔軟な子ども時代に正しいファッションの基本をカタチづくってこられたというわけですね。自らのブランド「MonStork」を立ち上げたのは、ママになられたことがきっかけとか?
結婚して長女を出産すると、日々「ママの顔」しかしていないことが残念で仕方がなかったんですね。女性としてもお洒落を楽しみたいのに、動きやすさ重視のカジュアルな服しかなかったんです。「ないなら自分で作ってみよう」。例えば、赤ちゃんはミルクがほしいときは即、対応してあげないといけませんから、ボタンを使わず、胸元にジップをつけようとか。そういう具合に自分の体験を活かして、おしゃれなデザインでも子育てしやすい服を作ってみたんです。するとママ友から「私もほしい!」とたくさんの反響を頂き、2014年、“ママでもいい女”をコンセプトに「MonStork」を立ち上げることになりました。
…慣れない子育てをしながらのビジネス、大変ではなかったですか?
大変だけれど、大変ではない(笑)。私たちの世代って、欲張りなんです。働く女性としての顔も、母としての顔も、妻としての顔も、どれも放棄したくない。全てをやりとげるのは大変ですが、そのどれもが自分の輝けるスペースになっているからです。しっかり働きたいならベビーシッターを雇えばいいのでは?という声もあります。でもそれならば“母の顔”の部分を体験できないでしょう。あらゆるプロセスを踏むことで、しんどさを上回る幸せを感じられます。ビジネスも子育ても両立させることを自ら選んだのだから後悔もありません。
…確かに麿衣さん世代で頑張っている女性は皆、イキイキされていますよね。私たちの世代ならば、仕事と家庭の両立は大変だけど頑張っているのよ、って全力疾走してきた感があるけれど、もっと肩の力を抜いて、大変ささえも楽しんでおられる感があります。
…セリザワさんの歴史のなかで、麿衣さんが守り続けてきたもの、また新たに進化させてきたものは何でしょう。
神戸エレガンスのルーツは、神戸のライフスタイルから生まれたのだと思っています。女子高が多い神戸で着慣れたり見慣れたりしているお洋服といえば、制服の延長線上にあるのではないかなと。襟がつまっているリボンタイのブラウスとか、ジャケットとか、誰にも失礼がないトラッドスタイル。母として妻として女性として一着ですべてをカバーできるよう、「MonStork」では上質なレースや襟を多用し、美しいラインを楽チンに確保できるウエスト位置の高いフィット&フレアのシルエットを基本としています。また流行やトレンドを追いすぎると女性目線では素敵でも、夫婦としては奥様のエッジが効きすぎて、逆に見る人は引いてしまう、ということ多いですよね。ヘルシーな女性の健康美を強調しながらも男性にも女性にも好まれる、上品さはデザインにマストで入れるようにしています。
…母になっても女を捨てない、旦那様とも素敵な夫婦でいたい、それでいて失礼のない服。それが麿衣さんが進化させた、新しい「神戸エレガンス」なのですね。
女性はどの年代になっても、男性からも女性からも認められたいという意識はなくならないと思います。そう意識し続けることが大事なんです。せっかく女性に生まれてきたのですから、女性ならではのエレガントな魅力を、お洋服で無理せずに楽に作りだしていければいいなと思いますね。
…現在はママ世代のみならず、女子大生のコーディネートをプロデュースしたり、某女子大学のバッグを制作したり、次世代のママとなる女性たちと積極的に関わる日々を過ごされています。
「ママになるって素敵」と思ってもらえることを啓蒙していきたいです。だから大学生や若い人を対象にしたイベントにはあえて子どもを連れていきます。子どもがいても働くことができることを示したいからです。今の時代、結婚すること、親になることは自分のキャリアのさまたげになる、と考える女性が少なくありません。何も犠牲にしなくていい、結婚することも親になることも、両方得て幸せになれるんです。自分中心の世界が大事だから、極力排除してミニマリズムに生きようとするのではなく、もっと心の幅を広げてほしいと思いますね。
あらゆる世代の女性に、お洒落して幸せになることで周りの人も幸せな気分になれることを認識してほしい。そのためにも日常に「神戸エレガンス」を浸透させたいと考えています。女性が美しくなることで幸せを感じて、それが神戸の街を活気づかせる。會祖母がお店を開いたときに目指した原点に戻り、お洋服で神戸をイキイキさせればと考えています。
…スイートな“お嬢様”かと思いきや、凛と芯が通った男前な部分も持つ麿衣さん。そのギャップがまた魅力的です。麿衣さんの生みだすお洋服や、ママとして女性としての活動が神戸のファッション偏差値を上げ、さらには神戸っ子の人生そのものまでもハッピーに導いてくれることを期待しています。
三好さんからの質問コーナー
Q.ハマっているグルメや気になるお店はありますか?
A.逆瀬川のフレンチレストラン「オーベルジーヌ」です。オーナーシェフ・藪中宏一さんは、40年間宝塚ホテルのシェフを務めてこられた方で、そのホテルのお料理教室に私の母が通っていました。私が子供の頃からお世話になっていて、食べ馴染んでいるのに、毎回新鮮な感動をいただける、間違いのないフレンチです。家族のお誕生日などのイベントでお世話になることも多いですね。
「MonStork-モンストーク-」ブランドディレクター兼デザイナー 芹澤 麿衣
小学校から大学まで神戸海星女子学院に学び、卒業後はアパレル商社、レディースファッションのブランドプレスを担当。娘さんを出産後、2014年にクリエイティブディレクターとして「MonStork」をスタート。二児の母となった現在は女の子ママ代表のインフルエンサーとして活動する。また、神戸の女子大生の着こなしプロデュースや大学のグッズのデザインなど、次世代のママ予備軍である若い女性たちとの活動にも積極的に関わっている。
三好 万記子(みよし まきこ)
株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母。