7月号
HAVE A RICE DAY!® お米のパワー・ビーフンで、世界の食卓を笑顔に!
ケンミン食品株式会社 代表取締役社長
高村 祐輝 (たかむら ゆうき) さん
5月に新社長に就任されたばかりの高村祐輝さん。創業者である祖父と二代目・父の意志を継ぎ、「ケンミンビーフン」で世界を目指す熱い思いをお伺いしました。
「五穀の王様=米」への情熱の歴史
―このたびは、社長就任おめでとうございます。
ありがとうございます。来年、当社は創業70周年を迎えますが、長年皆さまにご支援いただいていることへの感謝を忘れず、創業者の健民、22年間社長を務めた一成から引き継いだバトンを次の世代にしっかり引き継ぐことが使命と考えています。
―ケンミン食品は、お祖父さまの代からですね。
台湾出身だった祖父・高村健民が、戦後アジアの各地から帰国された方々の「現地で食べたビーフンをもう一度日本でも食べたい」という声にお応えしてビーフンの製麺づくりを始めたのが最初です。
健民は、米を「五穀の王様」と呼んでいて、米からできためんがお客さまの健康に役立つという信念をもっていました。社名のケンミン(健民)も「健康を皆さま(民)に」という願いが込められています。
―創業された当時の1950年代は物資等の調達も難しく、ご苦労も多かったでしょう。
戦時中に日本米が不足してインディカ米などの輸入米が配給されていた流れもあり、戦後も輸入米を分けてもらいながら作ったという話を聞いています。
―日本米では、ビーフンには向かないものなのですか。
はい。ビーフンは元々中国南部で生まれた食べもので、アミロースという成分を多く含んだ硬い米でないと製造には適さないんです。
―現在は、タイで米作りからビーフン作りまでを一貫生産しておられるのですね。
国内の米作が潤沢になると、輸入米が規制されてしまい質のいいビーフンづくりが危機になったのです。そこで何とか海外で原料を調達し一貫生産できないかと。タイ米といってもたくさん種類のあるなかで、特定の地域で、しかも一期作で作られる芳醇なお米にこだわり、生産農家の方々と30年にわたる信頼関係を培いながら現地でビーフンづくりを行っています。
よく海外で生産というと安価な労働力を求めて、と想像されがちですが、私たちの場合はより品質のいいものを求めてタイにたどり着いたという感じです。
―現在は、シェアの6割を占めておられますが、そうした品質への追及が受け入れられたということでしょうか。
私たちのビーフンは、現地のものに比べるとめんも太くコシもあるんです。日本人の好みに合うよう、どんどん「ニホンナイズ」したことも皆さまに愛していただいている理由かなと自負しています。
世界にオンリーワン「ケンミンの焼ビーフン」
―70周年を前にして、三代目を継がれましたが、今後のビジョンをお聞かせください。
一代目が焼ビーフンを発明し、二代目はタイでの一貫生産体制の確立とテレビCMなどでケンミンを日本一の会社にしました。三代目である私は、現在南京町にある「YUNYUN(ユンユン)」のような外食産業に一層力を入れ、ビーフンを一人でも多くの方に食べていただけるように努力するというのが一つです。
9月に初の県外進出で大丸心斎橋店に「YUNYUN」2号店をオープンします。大阪はインバウンドも多く、ビーフン自体がグルテンフリーなので、食意識の高い海外のお客さまにも受け入れていただけるのではと思っています。
―新店舗には新しいメニューも登場しそうですね。
ヴィーガンビーフンなども考案中です。今後オリンピックや大阪万博もあるので、海外の方も意識しながら、ケンミンのビーフンを日本発・ラーメンのような「世界のビーフン」として発信していくのが2つめの大きな目標です。
―輸出にも力を入れられるとお伺いしました。
まず9月から、初めてケンミン焼ビーフンのアメリカへの輸出をスタートします。輸入規制のある豚骨や鶏ガラのスープ原料を魚介や鰹節といった日本風のだしで代替することで、本来と同様の味を実現しました。醤油もグルテンフリー醤油を使用しオールグルテンフリーの焼ビーフンで、アメリカの市場に挑みます。タイ・ベトナムフードが人気の米国で「世界一簡単に調理できる焼ビーフン」がどれだけ受け入れられるか楽しみです。
―味の付いたビーフンは、世界でケンミンさんだけとか。
そうなんです。しかも茹で戻し不要で、フライパン一つで3分調理。話題のチキンラーメンの2年後の発明だったんですよ。忙しくて献立にお困りのときも、家族のための健康メニューとしてたっぷり野菜を摂れて簡単に作れると、ご好評いただいています。
―ビーフン以外の製品も手掛けておられますね。
米を使った食品の専門企業ということで、昨年悲願の「ライスペーパー」を発売しました。製造が困難で、日系企業では初めての成功です。亡き健民もこれを作るのが夢で、実現に68年もかかりました(笑)。
みんなが笑顔の「健民家族」
―ケンミンさんに伺うと、社内の雰囲気がとてもよく、社員の皆さんが楽しく働いておられるのが伝わります。
創業者の健民とヨネ元相談役が常々申していたのは、ビーフンづくりは大変手間のかかる仕事で、祖父母2人4本の手では到底作られるものではないということです。「社員がいてくださっているからビーフンが作れる」という創業者の気持ちは代々受け継がれています。女性にも働きやすく、具体的な数字でいうと、過去10年産休取得された19名全員が復帰されており産休復帰率100%です。
―社長がおっしゃられている「HAVE A RICE DAY®」はケンミンさんらしい素敵なスローガンですね。
「豊かな食生活に貢献する」という経営理念のもと、今後の80年、90年に向けて、社員が心を一つにできたらと(笑)。
私どもは、ビーフンを作る会社ですが、皆さまのお役に立つ会社にもなっていきたいという気持ちでいます。
―地域活動も積極的ですね。
南京町商店街振興組合の理事として仲間とまちづくりの協議をしたり、ヴィッセル神戸のユニフォームパンツスポンサーとして応援しています。
最近、大阪や京都に比べて神戸は元気がないといわれますが、「食」の魅力は十分です。神戸のブランドを育てるのは神戸に生きる人の仕事。私も一神戸人として、神戸の良さを発信できるよう、頑張るつもりです。
※「HAVE A RICE DAY」は、エム・シーシー食品株式会社の登録商標です。
高村 祐輝 (たかむら ゆうき)
1982年生まれ、36歳。2005年3月関西学院大学卒業、同年4月に京セラ株式会社入社。2008年ケンミン食品入社。2011年KENMIN FOODS(THAILAND)CO.,LTD MANAGING DIRECTOR、2015年取締役、2017年常務取締役就任後、2019年5月に代表取締役社長に就任。兵庫県神戸市出身。
https://www.kenmin.co.jp/