2019年
7月号

神戸鉄人伝 第115回 名筆研究会 会長 井元 祥山(いもと しょうざん)さん

カテゴリ:文化人, 神戸


紙面いっぱいに躍動するのは、普段使っている現代の文字。書かれているのは現代語の詩。調和のとれた漢字や流麗なかなと違い、一見無骨で単刀直入な印象の「現代詩書」。井元祥山さんの作品には、独特の雰囲気と趣きがあります。現代詩書を研究する名筆研究会を率いる井元さんに、お話をうかがいました。

―なぜ書の世界に入られたのですか?
私は旧国鉄職員で機関士だったのですが、企画室に異動になり「運転事故防止」などの看板を作成しなくてはならなくなりました。看板に似合う文字を書くために書を習い始め、村上翔雲先生に出会います。これが人生の転機となりました。村上先生は「漢字を古典で学びなさい、自分で古典の原書を見て書きなさい」とおっしゃいました。

―まず、臨書を勧められたのですか。
そう、現代詩書も基本は古典です。しかし私には、先生の筆づかいに今までに見てきたのと違う運筆の方法が見えました。他のどの先生とも違う、この先生はすごい、真剣に臨書に取り組んだら、こんなすばらしい作品を生み出せるのか?と。まあ、惚れたわけですね。1971年に先生が立ち上げられた名筆研究会に、迷わず参加しました。

―現代詩書の決め事を簡単に言うと?
「漢字とかなの両方で書かれていて読めること」「現代の詩を現代の書で表現すること」でしょうか。村上先生は「読めなあかん」と言われ、「作品は観者に感動を与えるものでなければならない」という信念をお持ちでした。そして先生は文人と言われる方々とよく交流されていました。文芸関係者の作品、詩や句を素材として見ておられたのでしょう。

―文人の方々も書芸をなさいますね。
詩人や俳人が自作の詩句を筆を執って書くことは多いですから、現代詩書作品と区別できない方もいらっしゃるかもしれませんね。もちろん文人の書にも、味わい深いものはあります。ただ文人は臨書をしない、つまり古典を学んでいないので、そこに自ずと書家との差が出ます。やはり臨書を十分にやってこそ、「書」として生きた線が出せるのです。

―名筆研究会もやはり、臨書に重きを置いておられますね。
現代書は手本を真似て書くものではありませんが、初心者のお稽古はまず古典の臨書からです。指導者が古典をもとに書いた手本を、繰り返し練習することで古典が身に付く。そうなって初めて、自分の作品として現代書が書けるようになるのです。

―その名筆研究会の後継者にと、いきなり指名されたとか。
村上先生から会長の任命を受けたのは2010年8月のことです。私はずっと勤めを持ちながら制作してきたので、書一筋の人間ではありません。定年退職した後は会の常任理事として講師や審査員もしていましたが、まさかのご指名でした。実力なら私以上の方も居る、それなのになぜ私なのかと驚きました。先生は私が旧国鉄の幹部として生きてきた人間だから、会を組織として運営できるだろうと見込んでくれたのです。師である先生のお気持ちに背くわけにはいかない、そう腹を括ってお受けし今日に至ります。

―会長として、今後はどのようなことを?
会の発展に尽くすことはもちろんですが、村上翔雲先生の遺作の整理も重要な仕事。そして現代詩書というものを、世に知らしめる使命があります。そのためには阪神地区だけでなく、もっと地方都市での活動を広げて行かなくてはなりません。まず地方の文人とつながり、その作品を我々が形にする。ただ制作発表すればいいというのではなく、きちんとつながりを持って活動することが大切です。近いところでは加古川市で実践しましたが、次は姫路市ですね。県外での活動も構想しているところです。(2019年5月16日取材)

制作に、運営に、普及に、いつも真っ向勝負の井元さんでした。

「はっきり物申す性格ですので、疎まれることも多いです」と井元さん。「でも創作の世界で、論を戦わせるのはとても大事なことだと思います」

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。

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