4月号
Mercedes-AMG C 43 4MATIC Cabrioletで行く
伝統芸能と工芸が息づく淡路島の旅
西日本の島で3番目に広い面積を有する淡路島は、かつてひとつの国を成し政治的にも経済的にも独立していたことからも、独自の風土や文化を醸成してきた。また、わが国の創世を語るくにうみ神話の舞台でもあり、近年では貴重な銅鐸や鉄器製造群落の遺跡が発見されるなど、悠久の歴史ロマンが息づいている。
そのあゆみの中で生まれ、現在も受け継がれている芸能や産業もまた淡路の宝物。かつて御食国に指定されたほど山海の幸に恵まれるグルメの島でもあり、四季折々の花が彩るフローラルアイランドでもあり、その魅力は枚挙にいとまがないが、今回は淡路の文化と風土の所産であり、先人たちの知恵や辛苦の結晶でもある「伝統」をテーマに、世界初のガソリン車を開発したメルセデスに相応しく、日本のはじまりの地、沼島を望むポイントからスタート。碧海のウエストコーストを駆けることにした。
人形に生命を宿す
陽光を浴びラメを織りなす海の向こう、泰然と鎮座する沼島はどこか神々しく、あちら側に渡りたい衝動に駆られる。Mercedes-AMG C 43 4MATIC Cabriolet は波間を滑るように渡っていけるのではないかと思わせるスマートな流線型のフォルムだが、さすがにそのような機能は備えていないので諦めて海辺の道を西へ進むとしよう。
道中、ところどころに急カーブや急な坂があるが、スムーズなハンドリングとパワフルなDOHC V型6気筒エンジンで、むしろそんな道路条件が楽しいくらいのドライブ感だ。
最初にやって来たのは、福良港にある淡路人形座。ここではプロによる人形浄瑠璃が上演され、気軽に国指定重要無形民俗文化財を楽しめる。
淡路人形浄瑠璃は、16世紀に西宮から人形繰りが神事のひとつとして伝わったことが起源と伝えられる。やがて娯楽の色合いを強め、17世紀に浄瑠璃や三味線と結びつき、18世紀に三人遣いや人形のからくりなど現在受け継がれているスタイルになったという。
淡路島には昭和初期までいくつもの人形座があり、東北から九州まで巡業に赴いた。淡路人形座は大座のひとつ、吉田傳次郎座の流れを継承。世界からやって来る観衆に感動を与えるだけでなく、その伝統を未来へと受け渡す重要な役割も担っている。
幕が上がる。繊細な動きが人形に生命をもたらせ、さらに三味の音、太夫の語りにより感情が宿り、自然にストーリーへと導かれる。人形ではなく人間…そう思わせるくらい自然な仕草で叙情する舞台は、ライブ感に満ちて感動すら覚える。
人形遣いは簡単な操作で意のままに動くメルセデスのようにはいかない。人形の重さは10kgにもなり、それを頭遣い、左手遣い、足遣いの3人で動かしている。滑らかな所作は「足八年、左手八年、頭は一生」と言われるほど難しいそうで、伝統を守ることの苦労が伝わってくる。
一方で淡路人形座の建築は近未来的でユニークな造形。伝統とは根本の技術を受け継ぐだけでなく、進化の積み重ねでもあることを体現しているようで、メルセデスのポリシーにも重なる気がした。
色白細身の美人麺
福良の伝統といえば、淡路手延素麺もそのひとつ。品質が高く、生産量が限られていることから「幻の素麺」とも評されている。産地である福良の中心街は、もともと漁村だったためか道が狭い。しかし、Mercedes-AMG C 43 4MATIC Cabriolet はフロントの視認性もハンドルのキレも良く、バックカメラの画像も鮮明に表示されるので、隘路のすれ違いや狭い場所での駐車も小型車とあまり変わらぬ感覚でそう苦にはならない。
今回訪ねたのは、慶応元年(1865)創業の金山製麺。現在は6代目の金山守良さんが2昼夜かける伝統の技を守っている。
淡路手延素麺は、金山さんの祖先にあたる渡七平なる人物が天保年間、伊勢詣での帰路に奈良の三輪の里で素麺づくりに出会い、そのまま2年ほど滞在して技法を学び持ち帰って製法を漁師たちへ伝えたのが起源。海が荒れる冬の副業となり、雨が少なく素麺製造に適した気候もあって発展、最盛期は100を超える製造元があったという。
現在は14の製麺所が伝統を繋ぐ淡路手延素麺の特徴は、その細さにある。定番の御陵糸は細さ0・7ミリと全国の産地の中でも細めで、コシとのどごしを両立させた逸品。さらに細いおのころ糸だとなんと0・5ミリ、1束で約750本もあり、絹糸をいただくような食感が心地よい。
美女のように透き通るような白い肌でしなやかな細身だが、そのコシは驚くほど強い。一晩寝かせた生地、3本の麺紐を1本にする「三本合わせ」、伸ばす前の巻き掛け作業で加えるひねりなど、伝統の製法がその秘訣だ。蔵で寝かせることで味わいがより深くなる「ひね」は、関西で特に珍重されるとか。
今年の夏はオープンカーと淡路手延素麺で涼やかに過ごしたいものだ。
奇跡の土が醸す美
鳴門海峡越しに四国を望む、清々しいドライブウェイ。向こうに風車が回っている。と言うことはそこそこ風が強いはずだが、多層構造の屋根は冷気を遮断、しかも風の音などせず静かで、普通の車と変わらない快適性だ。しかも高い耐久性があるという。
強くて頼りになる屋根ならば、淡路瓦も同じ。日本三大瓦の一角をなし、津井を主産地に地場産業として淡路の経済を支えている。
淡路瓦は江戸幕府が開かれて間もない頃、築城のための瓦として産声を上げた。淡路の土は粒子が細かく、可塑性の高さや収縮率の低さという瓦の素材としてのポテンシャルが高い。淡路瓦の味わいは、何と言っても白銀をまとったような美しい輝きだが、これは窯の中でいぶす温度と最高の強度を生む焼成温度が一致するという、この奇跡の土ならではのものだという。
トラックなどない時代、重い瓦の運搬は船に頼ったが、四方を海に囲まれた淡路は地の利を生かし一大供給元となる。現在は伝統のいぶし瓦だけでなく、洋瓦や景観材、さらにコースターなどの小物まで時代のニーズに柔軟に応じ、可能性を拡大中だ。南あわじ市産業文化センターでは、そんな淡路瓦の実物に触れるだけでなく、17世紀から昭和30年頃まで主力だっただるま窯も復元され、伝統の一端を垣間見つつ歴史や技術を学べる。庭や小径も淡路瓦で、瓦粘土の細工体験も楽しい。
西淡三原インターチェンジの前には、瓦師、山田脩二さん作の「青海波ピラミッド」が約20m四方の壮大なスケールで存在感を示している。波打つ淡路瓦の重なりは瀬戸内海の漣のようで、ところどころに現れる龍の姿もユニーク。このモニュメントも、洗練されたデザインのメルセデスも、技術と芸術との幸せな出会いの賜物だ。
一筋の煙が放つ馨香
ボタンひとつでオープンカーへ、わずか20秒で変身するMercedes-AMG C 43 4MATIC Cabriolet。ここからは慶野松原~五色浜とウエストコーストを、屋根を収納し満点の開放感で駆け抜けよう。まだ肌寒い季節だが、ヘッドレストから温風が吹き出すエアスカーフ、フロントウインドウ上部のディフレクターで空気の流れを跳ね上げるエアキャップ、車室内への風の巻き込みを低減するドラフトストップなど多彩な先進機能で、全く寒さを感じないどころか、逆に気持ちが良い。エンジンも3千回転を超えると心地よい音を奏で、胸が躍る。
マリンブルーの彼方に小豆島を眺めながら北上するうちに、風がほのかに雅な香りを纏うようになってきた。オープンカーだからその薫香がダイレクトに伝わってくる。淡路線香の産地、江井に着いたようだ。
ここはもともと天然の良港で、統治していた阿波藩が17世紀半ばに御用邸を構えて港の整備を進め、港町として賑わった。一方で小型の廻船は冬場、海が荒れて商売にならないため出稼ぎに出る者も多く、その対策にと田中辰蔵という人物が堺で盛んだった線香製造を導入、泉州から職人を招聘するだけでなく自らも技術を学び広めたという。以前から堺の中継港だったため原料調達も販路確保も容易で、冬の航海を妨げていた西風が気温低下を防いで線香製造に適していたことも後押しし発展、昭和30年代の最盛期を過ぎた現在も約7割の実質的全国シェアを誇っている。
この地で最初に線香製造をはじめた7軒のうちのひとつで、現在も職人が手づくりの技術を継承している梅薫堂にお邪魔した。1850年創業の老舗だが、伝統にあぐらをかかず、社長の吉井康人さんの創意を源に時代の先を行く製品を続々と生み出している。中でも木炭を原料に木酢液をブレンドした「備長炭麗」は花粉症に良いと口コミで広がり大ヒット。昨年は宇宙を旅した3つの桜のイメージの「宇宙桜」を開発、華やかな香りが心を鎮める。
淡路島西海岸には線香の原料でもある香木が流れ着いたという伝説があり、その場所には香木をご神体とする枯木神社が佇んでいる。神が選びし淡路島は、神秘に満ちた不思議の島。古き佳きが彩る芳しき旅路を走り抜け、メルセデスもまた新たな伝説を轍に刻んでいく。
兵庫県の西の拠点となるショールーム メルセデス・ベンツ姫路
兵庫県内で第2の人口を誇る姫路市。そんな姫路エリアのメルセデス・ベンツファンのニーズに応えてきたのがメルセデス・ベンツ姫路。2018年4月には、移転リニューアルオープンを果たした。ショールームは最大8台がゆったりと展示できる広々としたスペースに。場所も姫路バイパス中地ランプ下車すぐの好立地。広い兵庫県の西の拠点として、注目車種をはじめ充実のラインナップが揃う。
メルセデス・ベンツ姫路
姫路市中地186番地1
TEL.079-294-1171
営業 9:30-18:00
休業 月曜日 年末年始