2019年
4月号

甲南学園 100周年|平生先生の教えを思う

カテゴリ:教育・スポーツ, 神戸

平生先生の教えの実践

 私にとって平生先生は私の生涯を創ってくださった大恩人です。先生の教えの最大のものは個性尊重だと思い、生涯その実践に努めました。一例をあげれば昭和31年和歌山県の要望により、大阪の工場より県工業試験所へ転職して間もない時のことです。食品部から依頼があり、醤油工場で、蒸気不足のため残業時間が長くなっているので、ボイラーを大きいものに変えたいので、選定してほしいというものでした。
 訪問した処工場の中は真新しいホーロー引きの高温の大きなタンクがずらりと並び、輻射熱で長時間は居られない状況でした。案内の人に聞くと以前は木製の桶だったのでこんな事はなかったそうです。
 ボイラーは1トンのコルニッシュボイラーで、燃料は木屑でした。蒸気の用途は常温の醤油を80度まで上昇させ、その後徐冷する『火入れ』という作業のためでした。徐冷とは言いながら工場の中が暑くてたまらない事から、高温域では今までより急冷されているわけで、担当の人に尋ねた処、『50度迄なら急冷してもよい』という回答を得たので、ボイラーはそのままにし、プレート式熱交換機とポンプを新調することとし、醤油は最初に常温でプレート式熱交換機に入り、火入れを終った80度の醤油から熱をもらって30度上昇して50度になってから火入れ機に入り、火入れ機で80度になった後、熱交換器で放熱して50度になってタンクに入ります。火入れ機は今まで20度から80度まで60度上昇の加熱をしていたものが、30度上昇で済むことになり、その結果醤油の流速を2倍にすることが出来ました。
 勧告通りに実行された結果次のような利益が得られました。 1) ボイラーの新設が不要で、経費が僅かですんだ。2)作業時間が半分になったので、残業はなくなった。3) 工場内の酷熱環境は改善された。4)燃料は半分になった。この技術は忽ち醤油業界全体に広がりました。個性を磨いた結果でした。

旧制甲南高校17回理科卒業
泉名 榮一さん

甲南ラグビー部の思い出

 旧制甲南高等学校において、平生釟三郎先生は人格の修養とともに健康を重視されて、生徒はいずれかの運動部に所属することをすすめられた。そのために設立当初から運動部の活動は盛んで、全国でもっとも生徒数の少ない高等学校でありながら、多くの種目でインターハイの出場常連校であった。特にラグビーは甲南の校技のように扱われていた。
 私がラグビーを始めた動機は至って簡単。ある土曜日の午後、甲南のグラウンドでラグビーの試合を見て、こんな男らしくて面白いスポーツがあったのかと感激し、早速に入部させてもらった。素晴らしい先輩方から、手取り足取りラグビーの魅力を教え込まれた。昭和十五年のことであった。細くて体力のなかった私が、それから大学卒業までラグビーを続けられたのは、このときの先輩諸兄のご指導のお蔭だと感謝している。
 昭和18年頃から次第に戦火は激しくなり、工場動員や空襲などでまったく練習もできずに、グラウンドはイモ畑となってしまった。やがて8月15日の終戦の日を迎えた。我々は早速にグラウンドを復旧し、9月早々から練習をはじめた。栄養不良と空腹を抱えていたが、それでも長い間中断していたラグビーをやりたいという一心で、毎日グラウンドへ出て練習に励んだ。
 昭和22年の12月には戦後の復活第一回インターハイが開かれて、わが甲南は関西地区代表に選ばれて、東京で開かれる全国大会に出場した。四高と二高には勝ち進んだが、優勝戦では成城高校に対戦し、惜しくも三対十一で無念の涙を呑むことになった。
 甲南で出会ったラグビーと個性尊重の教育が、「世界に通用する紳士たれ」という平生先生のご遺訓とともに、私の一生の基礎をつくってくれたように思われる。

旧制甲南高校23回理科卒業
大島 純義さん

平生校長は出陣学徒17名に
自著の入った絹のハンカチを贈られた

在学中の思い出 甲南尋常科を急遽受験する
 昭和18年1月、小学6年の私がM医師の診察を受けた時、同医師は母に私の甲南受験を熱心に勧められたことを覚えている。試験当日の早朝、近所のH先輩が迎えに来られ、父と共に初めて校門をくぐる、M医師の配慮の様。同医師の診察から始まって1ヵ月足らずでの慌しい受験先変更がその後70余年、私の人生を充たしてくれ、ペンを執る次第です。

平生校長
 18年4月、入学式での校長訓話は聞き難く、更に長年の歳月が私の記憶を消し、訓話の内容を忘れたのが正直なところ。後日、校長関連の書物、先生の指導、先輩友人との交流から校長の甲南教育精神の一端に触れる昨今である。

繰上卒業・学徒出陣・勤労動員
 入学後程なく高等科3年の繰上げ卒業式、続いてのパーティーで8年以上、中には二桁の在学年数を豪語して甲南を懐かしむ多士済々、戦時下穏やかな校風の余韻を楽しんだ。続けて高等科文科生の学徒出陣、壮行式後学校を去る先輩隊列を見送っていた後輩が突如正門へ走り続く者多数、後は何か虚しく淋しい気配が漂っていた。平生校長は出陣学徒17名に自著の入った絹のハンカチを贈り、武運長久を祈られたとのことである。忘れ得ぬ一齣(ひとこま)。
19年秋、私達尋常科2年の出番。勤労動員、尼崎住友プロペラ工場へ、お国の為と高揚した気持ちも早朝からの旋盤作業、雑穀混じりの臭い丼飯、恐怖の空襲等ですっかり萎縮した。

平生校長の教えが人生で生かされた事
28年、学業を終え就職する。当時企業は軍隊経験者、引揚者、転職者等多数が混在。上司に媚びる輩も散見する中、自己の業務に励み同僚を助け新入の私を熱心に指導されたT兄が私の転勤時に一言、「私は甲南尋常科の入試に滑ってね、ハッハッハー」と、校長の武士道精神の真髄を垣間見た。

旧制甲南高校25回文科卒業
赤浦 英男さん

「人生三分論」の教え

 私の父は、大正13年、当時の東京大学卒業時、平生先生からスカウトされ、旧制甲南高等学校で実験物理の教鞭をとっていました。私は直接、先生から教えを受けた立場ではありませんが、父はとてもお世話になり、また先生の考え方に共感する部分がたくさんあったのだと思います。昭和13年、阪神大水害が起き、建てたばかりの自宅が被害に遭って困惑していところ、平生先生は親身になって相談にのってくださり、現在の岡本9丁目の土地を紹介いただきました。感謝しております。
 平生先生ご自身が勉学費用に苦労された経験から作られた奨学金制度「拾芳会」会員として、父は昭和25年に大阪大学に移ってからも交友関係を続けておりました。昭和50年、父の死後、私は事務局のお世話をさせていただき、他の二世様と親睦を図り、平生先生のご命日の11月27日には毎年そろって、墓参りをしております。
 平生先生は「人生三分論」を仰っておられました。私は在学中、文武両道を教わり、野球や水泳で健康を維持し、勉強でも広い知識を得て第一期の「勉学」の時代を経たお蔭で、卒業して神戸製鋼に入社後は、開発部門の営業マンとして第二期の「仕事」の時代を頑張ることができました
 退職後は第三期の「奉仕」の時と考え、社会貢献・社会奉仕をモットーに地域ボランティアに専念しております。小学生の見守り活動や老人会での公園清掃、自治会の清掃活動、また甲南大学の学生さんと一緒に近隣の清掃活動も続けております。また体力増進のためにグラウンドゴルフ、スポーツクラブで水泳、老人会でコーラスを楽しみ、同窓会のお世話などもさせていただきながら、毎日過ごしております。
 生涯をもって平生先生の教えを守り、健康・友愛・奉仕を実践しながら、90歳まで頑張ろうと思っております。

昭和33年甲南大学経済学部卒業
正田 日出夫さん

「教育が日本を作る」という信念を励みに

 私が甲南大学に在学していました1978年〜1982年当時は日本が高度成長期のピークにさしかかったところでした。アメリカの社会学者が書いたベストセラー本「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版され、皆が将来に期待し、ますます加速するであろう繁栄を疑うことなく日本中が浮かれているような時代です。
 そんな時代の中、甲南大学のキャンパスに建つ平生釟三郎先生の寿像は静かに私たちを見守ってくださっていました。当時よりもさらに激動の時代に活躍され、ビジネスの最前線で海外経験も豊富な平生先生は、まだ浮かれる時ではないと学生に知らせてあげたいと思っていらしたのではないかと拝察しています。それから40年近く経ち甲南学園が創立100周年を迎えるにあたり、平生先生は卒業生に対してどのような思いでいらっしゃるのでしょうか?
 人望厚く、いくつもの企業や団体の危機を救い、ご多忙を極めていらっしゃる中で学園設立の夢を叶えられた平生先生が「100周年に少しは浮かれても良いよ」と思ってくださると嬉しいのですが、やはり「まだまだこれからが肝心、常に備へよ」でしょうか。
 私の同期は今年還暦ですが、甲南の同窓会のおかげで「世界に通用する紳士・淑女たれ」を実現しているOB・OGに少なからず出会うことができ、良い刺激を受けまして卒業生であることに感謝しております。
 現在私は公益財団法人樫山奨学財団という財団で奨学金支援とアジア関係の書物への褒賞事業に携わっています。日々雑務に追われ、残念ながら「世界に通用する淑女」には全くなれておりませんが、平生先生の「教育が日本を作る」という信念を励みに今後も頑張って行きたいと思います。
 100年経ってますます輝きを増す平生先生を改めて深く尊敬いたします。

益財団法人 樫山奨学財団理事
(昭和57年甲南大学文学部卒業)
波多野 優子さん

『誇り高し我々の絆』を未来へ

 甲南大学でテニスをする夢がかなった1970年の入学式は今でも忘れられません。甲南硬式庭球部は、旧制高校が誕生した1923年に創部され、「テニスだけ強ければ良い」のではなく、平生釟三郎先生のお言葉の『徳、体、知』に優れた人材の育成を目標としています。私は大学4年間のほとんどをテニスコートで過ごしましたが、諸先生諸先輩のお蔭で「自ら考える、意欲を持って学ぶ、品格とマナーを身につける」ということが出来たと感謝しています。就職した繊維メーカーでは繊維業界の衰退で、難しい状況もありましたが、前向きに取り組む姿勢を忘れず終える事ができました。これもひとえに学生時代に人としての生き方を学ぶことができたお陰です。
 甲南大学同窓会は会員が現在10万人、一人でも多くの卒業生に同窓会活動に参加して頂く為に積極的な活動をしており、昨年10月に開催された「オール甲南の集い」には千名以上の同窓生、ご家族、ご友人にお集まり頂き、また各地甲南会での催しへの参加人数も年々増え絆を深めています。また2019年度は「学園創立100周年を迎えるにあたり、この記念すべき年を同窓生皆で祝い、『誇り高し我々の絆』を再確認して、未来へ繋げていく」をスローガンにしています。時代の変化のスピードが激しく凄まじいこれからも、平生イズムを受け継いでいける学校、同窓会であってほしい欲しいと願っています。

甲南学園同窓会 甲南大学同窓会事務局長
(昭和49年甲南大学経営学部卒業)
瀧川 俊治さん
〈2019年4月号〉
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