5月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第153回
これまでの川西市医師会 市民医療フォーラムを振り返って
─毎年恒例の川西市医師会市民医療フォーラムですが、昨年は中止になったそうですね。
織田 「どうする認知症~知って得するつながりノート~」をテーマとして11月11日に開催する予定でしたが、10月に会場のみつなかホールでスプリンクラーの誤作動による水損事故が発生して施設全体が使用停止になってしまい、残念ながら中止せざるを得ませんでした。
─それは残念ですね。
織田 実は、基調講演をお願いしていた大阪大学大学院医科系研究科精神医学教室准教授の吉山顕次先生は、平成23年の第9回「だいじょうぶ?そのもの忘れ」で「知っておきたい認知症の知識と最近のトピック」をテーマに基調講演をしていただいた數井裕光先生のお弟子さんで、とても楽しみにしていたんですよ。川西市医師会では市民医療フォーラムを県内各市町の医師会の中でも早い段階の平成15年から開催してきまして、これまでもさまざまな課題について情報の発信をおこなってきましたが、認知症をもう一度、12年ぶりにテーマに採り上げて、市民のみなさまと一緒に考えようと思っていたのですが。
─中止になった第21回のサブタイトルにある「つながりノート」とは何ですか。
織田 これは、まさに第9回がきっかけとなってできたもので、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるため、必要な医療と介護サービスが切れ目なく提供されるよう、本人・介護者と医療・介護専門職などの間で情報共有と連携を促進するための「連絡帳」で、大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室の協力により実現しました。「つながりノート」の活用は平成28年度の厚生労働白書でも紹介されるなど、先進的な取り組みとして全国的に注目されています。
─市民フォーラムではこれまで、どのようなテーマをピックアップしてきましたか。
織田 第1回は「あっと驚く日米医療制度の真の姿」、第2回は「日本の医療制度について」、第5回は「気がつけば医療難民に」など、医療制度や医療政策に関するテーマが多い傾向だったのですが、来場者のみなさまにアンケートを取ったところ、身近な話題について聴きたいというニーズが浮かび上がりまして、以降はそれを反映し、前述の認知症や介護、在宅医療など高齢者に関する話題、救急医療や災害医療ほか、市民のみなさまの関心に沿ってテーマを設定しています。
─川西市と猪名川町は阪神間でも高齢化率が高いですし、高齢者医療への関心が高そうですね。
織田 そうですね。第6回はメディアでもおなじみの諏訪中央病院名誉院長、鎌田實先生をお招きして「変貌する医療と介護」をテーマに開催しました。第8回は「今日から始める寝たきり予防」と題して、ロコモティブシンドロームについて学びました。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)が注目されはじめてきた平成25年の第11回は「考えよう最期の迎え方」で、終末期医療について採り上げました。第13回は「これからの介護は地域の絆で」と題して、地域包括システムにスポットを当てています。ほかにも第14回「目指せ!いきいき健康家族」、第16回「伝えてますか?あなたの思い」、第17回「目指せ!健康長寿のまち」など、高齢者のみなさまの関心が高そうな話題をテーマにしています。
─長寿社会を見据えた令和3年の未来の医療に関するお話も印象深かったですね。
織田 「目指せ!人生120年」がテーマの第19回ですね。「治さず共存する~みらいの医療と病気」を演題に基調講演をしていただいた奥真也先生は、実は私の高校の同級生なんですよ(笑)。
─高齢者に関する話題の次に希望が多いテーマは何でしたか。
織田 救急に関する話題が多かったですね。それで、平成21年の第7回は「守ろう地域の救急医療」がテーマに決まったのですが、新型インフルエンザの影響で中止になってしまいました。この第7回のほか、令和2年の第18回が新型コロナウイルス感染症の影響、そして昨年の第21回と、これまで3度開催を断念しています。
─災害に関する話題も採り上げていますね。
織田 東日本大震災の翌年の平成24年の第10回は「そのときどうする?災害と医療」をテーマに開催しています。この年は西播磨で豪雨災害があり、甚大な被害があった佐用から佐用郡医師会の森光樹会長(当時)に来ていただいてお話しいただきました。川西や猪名川は津波の心配はありませんが、水害や土砂災害の懸念がありますので、実際に災害時にどんなことがあってどう動いたかという森先生のお話は非常に興味深いものでした。また、熊本地震の翌年、平成29年の第15回には、被災地の熊本県上益城郡医師会の永田壮一会長(当時)を招いて「いつ考えるの?今でしょ!災害準備」をテーマに開催しています。いずれも行政の危機管理担当者にも来ていただいて、ハザードマップへの理解を深めました。
─その時々の社会課題にコミットしてテーマを決めているのですね。
織田 来場者のみなさまにアンケートをとりどのようなことに関心を持っているかアンテナを張って、テーマに沿ったスペシャリストを招くようにしています。ほかにも検診制度や医師会についてなどもテーマに採用し、幅広い内容をお届けできているのではないかと思います。市民のみなさまと交流しながら、医療に関する問題点を一緒に考える市民医療フォーラムは、医師会の活動を知っていただく機会であるとともに、会員相互の団結力を高めるという意図もありますので、今後も継続していきたいですね。
─第22回となる今年はいつ開催の予定ですか。
織田 11月30日(土)にみつなかホールで開催予定です。テーマについてはもう一度、認知症を考えているところです。秋までには会場の工事も終わっていると思いますが、現時点ではまだわからないので、最新の情報を川西市医師会のホームページなどでご確認いただき、ぜひご来場ください。