10月号
松林に抱かれたコートで 「一日を短く、人生を長く」|芦屋国際ローンテニスクラブ 理事長 田邊 哲さん
この地でプレーできる幸せ
─今年から理事長に就任されたそうですね。
田邊 はい。歴史と伝統のあるクラブ理事⾧の重責が私に務まるのか、と思いましたが、最終的にお受けさせて頂きました。
─こちらでプレーするようになったのはいつからですか。
田邊 クラブに入会したのは2013年の4月です。もともと出身は大阪ですが、大学卒業後に就職し大阪を離れてからは転勤が多く、30年ぶりに関西に帰ってきた時に、運よく当クラブに出会うことができました。テニスは高校の時に始めたのですが、これまで途切れることなく続けてきました。テニス人生の最後にこのようなクラブでプレーできることは幸せだなと思います。
─芦屋や阪神間は独自のテニス文化が根付いていますよね。
田邊 かつて芦屋をはじめ阪神間にはお庭にテニスコートがある邸宅も多く、テニスを受け入れる住まいの文化があったのではないでしょうか。
─設立されたのはいつですか。
田邊 1955年設立で、その翌年に兵庫県で国体が開催されてテニス競技の会場になり、天皇・皇后両陛下もお見えになりました。
─数多くの選手がここから羽ばたいていったのでしょうね。
田邊 日本のテニス界を牽引しした清水善造さんや熊谷一弥さん、松岡修造さんのお父様・松岡功さん、さらに日本人で唯一、ウィンブルドン名誉会員となった川廷栄一さんなど、日本のテニス文化を語る上で欠かせない方々も会員でした。さらに設立以来、選手の育成や強化に力を入れて、かつてはKSジュニア杯という大会を開催していました。伊達公子選手はそこで優勝し、その後全国、そして世界で活躍されたと聞いています。また、大学の全国大会もここで開催していました。
─阪神・淡路大震災の時は一時休止したそうですが。
田邊 震災後はテニスコートに仮設住宅が並んでいました。4年後に再開したのですが、レイアウトの変更やコートの改修、クラブハウスの建て替え等を経て、現在の姿となっています。
─現在の会員数は。
田邊 今年3月現在で約320名です。30代から90代まで、年齢層は幅広いですね。中には親子代々の会員や、設立当時からの会員もいるんですよ。芦屋川沿いの松林に囲まれた静かなロケーションということもあり、大阪など遠方から通われる会員もいます。この環境に憧れて入会される方もいらっしゃいます。
多彩な行事で深まる絆
─現在はどのような活動をおこなっていますか。
田邊 クラブ内の行事が年間にいくつかあります。1月は新年初打ちテニス、2月には土日に来られない方向けのウィークデー大会、4月にはお花見をしながらの春季団体戦、7月には芦屋サマーカニバルの日に開催される納涼大会、12月には忘年大会などで親睦を深めています。またテニススクールをいくつか開講していますが、中でも外国人のコーチが幼稚園から小学校低学年のキッズに英語でテニスを指導する「TENISH®」が非常に好評です。
─シニアの全国大会も開催していると聞きましたが。
田邊 毎年9月に芦屋グランドベテランテニス大会を開催していまして、今年で61回目になります。女性60歳以上、男性65歳以上のプレーヤーが全国から集まり、中には元プロの方もいらっしゃいます。今年の最高齢は94歳で、90歳の方とペアを組むんですよ。私達にとっても目標になるような大会ですね。
敷居は決して高くはない
─今後の展望は。
田邊 まず、この場所はコートもクラブハウスも芦屋市の施設で、私たちはその管理運営を担っている非営利団体となります。したがって、クラブの歴史と伝統を守るとともに、地域貢献を大切にしながら活動しています。
二つ目には、会員数の減少という課題があります。これは恐らく他のテニスクラブでも同様の傾向かと思いますが、私たちはその流れを何とか食い止めるべく、いろいろとPRしたりお友達を誘っていただけるような工夫に力を入れています。もちろん、会員の方にもより楽しんで頂くことも含めて、魅力あるクラブ作りに取り組んでいます。かつては敷居が高いというイメージがあったようですが、今はたくさんの皆様にご入会頂きたいと思っています。体験入会も随時受け付けていますので、ぜひお気軽にお越しください。
─最後に、テニスの魅力はどこにあると思いますか。
田邊 若い時にも年を取ってからも、老若男女が楽しめるスポーツというところですね。個人的にも、転勤の際に住む場所が決まったらすぐにテニスクラブを探す、という生活を送ってきました。(笑)また海外駐在していた際にも、テニスを通じて現地の人たちとのお付き合いの幅が広がりました。言葉が通じなくても、テニスがあればコミュニケーションに困らない、という点はテニスの大きな魅力ですね。あるアメリカのテニス愛好家の言葉で「テニスは1日を短くし人生を⾧くする」というものがありますが、まさしくその通りだなと思います。私自身も、できるだけ⾧くテニスを続けていければと願っています。
芦屋国際ローンテニスクラブ(芦屋公園テニスコート内)
芦屋市松浜町4-4
TEL.0797-22-3852
https://ashiyalawn.com/