7月号
内向き志向から外向き志向へ
新しいことにチャレンジする体制を
和田興産株式会社 代表取締役社長
溝本 俊哉さん
内向き志向から外向き志向へ
新しいことにチャレンジする体制を
神戸を中心に数多くのマンションを手がけてきた和田興産の新社長に、この5月に就任したばかりの溝本さん。「ワコーレ」ブランドやご自身のこと、今後の展望など、さまざまなお話をうかがった。
信頼とクオリティを大切に
─創業は明治32年だそうですが。
兵庫区で創業しました。和田家は大地主でしたので、土地や住宅の賃貸事業を家業としていました。
─マンション事業を手がけるようになったのはいつですか。
戸建分譲には昭和40年代から取り組んできましたが、
「ワコーレ」ブランドで新築マンションの分譲をはじめたのはバブル崩壊がきっかけです。1982年からそれまでは土地を仕入れてマンションを建ててそのまま業者さんへ売り、その業者さんのブランドで分譲するマンション一棟卸が主でしたが、バブル崩壊で引き取り手がなくなり、1991年から自社で分譲販売することになったんです。
─阪神・淡路大震災の影響はいかがでしたか。
幸い、当社が分譲したマンションでは倒壊した建物はありませんでしたが、補修が必要な部分については当社の負担で修繕させていただきました。それが信用や信頼に繋がったと聞いております。
─一時期、首都圏にも進出していましたが。
2005年から首都圏でも分譲をしていましたが、当時は首都圏のマンション市場が好調だった時期でした。首都圏の年間供給戸数は現在3万戸台ですが、当時は約8万戸もあり、ビジネスチャンスを得るために首都圏で事業をおこないましたが、リーマン・ショック後に市場が縮小して撤退しています。
─「ワコーレ」は確立されたブランドですね。
「プレミアムユニーク」というブランドコンセプトで、上質かつ唯一無二のものを創り上げてきました。ただ住まいは高額となりますのでより一層信頼が重要になります。コンスタントに供給し続けていくことに加え、アフターケアにも力を入れて、安心してご入居いただき「ワコーレに住んで良かったな」とおっしゃっていただけるようにしていきたいですね。これまでご支持いただけたのは、立地が良くマンションのクオリティが高いという部分と、地元密着ですのでファンがいらっしゃるからではないかと思います。
ゴルフとロックでリフレッシュ
─溝本さんはこれまで、どのような業務を担ってきましたか。
銀行を辞めて2005年に入社して、最初は総務部で規程の制定や株主総会の対応を担当し、その後企画部長として経営企画を担い、リーマン・ショック後は銀行に勤めていた経験を生かして財務的な仕事も手がけつつ、広報やIR業務もおこなってきました。
─その中で、特に力を入れてきた仕事は何ですか。
目の前の仕事にはすべてに力を注いできましたが、敢えて申し上げるなら前職が金融機関です。銀行対応や資金調達、上場していますので株価対応、つまりIR活動ですかね。
─社長に就任しましたが、どのようなビジョンをお持ちですか。
社長業は初めてなので手探りですけれど、就任にあたり社内には3つのメッセージを伝えました。「新しいことにチャレンジしよう」、「内向き志向から外向き志向への転換」、それから、「時間を大切に」ですね。それは、社長になったからというよりも、私自身がこれまで仕事を進めていく上で大切にしてきたことです。新しいこととは、改善であったり、従来のスキームの転換であったりですね。内向きから外向きというのは、例えば当社はみなさんの努力で神戸・阪神間でナンバーワンのポジションになってきたのですが、それにあぐらをかかずに外に目を向けて活動することが大切だということです。「ワコーレ」の名が浸透しているエリアで事業をしているとそこに甘えが出てくることもあるでしょう。ブランドが通用しないところに出て鍛えることは、力を付けることになると思います。
─「時間を大切に」というのは、できそうで難しいですよね。
時間は1日24時間、すべての人に公平に与えられています。コントロールの仕方で有効に使うことができ、その積み重ねが5年先10年先に大きな差へと繋がってくるので、自戒も込めながらこのメッセージを伝えさせていただきました。
─お忙しいと思いますが、オフはどのようにお過ごしですか。
スポーツはするのも見るのも好きです。学生時代は剣道をしていましたが、最近は専らゴルフですね。オフィシャルハンディキャップは16です。見る方は、ヴィッセル神戸を20年近く応援しています。あとは音楽、ロック系が好きで、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルからはじまって、クイーン、U2、コールドプレイはライブにも行きましたよ。
街づくりで神戸に恩返しを
─神戸の街が変化してきています。街づくりとどう関わっていきたいですか。
街自体の力には、住民の絶対数が増えていくことが大事だと思うんですよね。ですから、みなさんが満足していただける住宅を継続的につくっていくことがまずは重要です。その上で行政と連携し、新しいことができれば良いと考えています。湊川市場の再開発に取り組みましたが、168戸の利便性の高いマンションで和田興産らしいプロジェクトになったかなと思います。今後もお声がかかれば、可能な限り対応し、神戸へ恩返ししたいですね。
─不動産業界は今後、どのように変化していくのでしょうか。
例えば不動産テックのようなITを活用した新しい芽は出てきていますけれど、不動産そのものは世界でそこ一つしかないものなので、そういう新しいところに乗せていくのは一定の限界があると思います。一方で、比較的スクラップ&ビルドが多い日本の住宅事情が、環境に対してどう対応していくか、社会的課題への関心が高い若い世代に向けてどういう住宅を提供していくかは中長期的なテーマです。昨今は「所有する喜び」から「使う喜び」に変化しています。時代に対応する住まいはどうあるべきか、特に若い世代に考えていただきたいですね。
─今後の数値目標など具体的な目標は。
現在検討している最中です。これまでは中長期の計画はあまり表に出していなかったのですが、外向き志向でオープンにしていきたいと思います。また、子どもたちのサッカー大会や、プロゴルファーの古江彩佳さんの支援など、地域・社会貢献活動も拡充していきたいと思います。
和田興産株式会社 代表取締役社長 溝本 俊哉さん
1983年甲南大学経済学部卒業。1983年株式会社大阪銀行(現株式会社関西みらい銀行)入行。2005年和田興産株式会社入社。2010年執行役員企画部長、2016年取締役総合企画部長、2021年常務取締役総合企画部長。2022年5月より代表取締役社長。
和田興産株式会社
神戸市中央区栄町通4-2-13
TEL.078-361-1100(代表)
https://www.wadakohsan.co.jp